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ギリシア/アテネ特派員ブログ 旧特派員 有馬 めぐむ

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2009年8月 4日

エピダヴロス古代劇場へ


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エピダヴロス古代劇場へ

 ギリシャはすっかりバカンスの季節です。ここ数年はずっと知人が経営するサントリーニ島のホテルで滞在型のバカンスを過ごしていましたが、ことしは1ヵ所に2,3泊の短い滞在で移動型の旅をすることに。まずは古代劇場や医学神アスクレピオスに捧げられた神殿で有名なエピダヴロスへ行った際の観劇の様子をご紹介します。


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 他の有名な名所旧跡にはほぼ足を運びましたが、なぜかいつも機会を逃していたエピダヴロスの古代劇場。紀元前4世紀、ポリュクレイトスという建築家によって建てられました。ギリシャに残る古代劇場としては最も保存状態がよく、毎夏、ギリシャ悲劇を中心とした演劇の祭典・エピダヴロスフェスティバルが行われるのは有名です。アテネからバスツアーも出ているので、観光客はもちろん、演劇通のギリシャ人も出かけていきます。ウチの近所のおばあさんはギリシャ悲劇が大好きで、孫娘と一緒に夏の週末は何度も古代悲劇を観に行っています。
 
 エピダヴロスの遺跡には古代劇場の他に、以前ご紹介した医学神アスクレピオスの神殿などの遺跡があります。紀元前6世紀にはアスクレピオス信仰が各地に広まり、病を患う多くの人がここを訪れたといいます。紀元前4世紀にはその人々のための医療施設、宿泊施設や浴場など様々な建築物が建てられました。博物館には当時の医療器具など興味深い展示物があります。
 エピダヴロス劇場から12Kmくらいの場所にたくさんのホテルやビーチがあり、昼間はもっぱら海水浴をしていました。この辺りのホテルには古代劇が大好きなドイツ人がたくさん宿泊していて、ビーチでもよくドイツ語が聞こえてきます。


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 約1万4千人を収容する劇場は、丘の斜面を利用して造られたのですが、優れた音響効果があり、舞台上のどんなに小さなささやき声でも最上階席にしっかりと聞こえます。古代の人々がここで観劇を楽しんだように、現代の人々が同じ演目で、毎夏の演劇を楽しんでいるというのは、その遥かな歴史に思いをはせると悠久のロマンを感じます。
 観劇は大好きなので、ことしこそエピダヴロスに!と演目をチェックしていましたが、日程的に合い、興味があったのはアイスキュロス作「ペルシャ人」。ギリシャ悲劇にしては珍しくギリシャ神話からではなく、史実の「ペルシャ戦争」を描いた作品です。ギリシャ国立歌劇団(劇場)、ブルガリア出身、長くドイツを拠点に活躍している有名な演出家Dimiter Gotscheffの公演です 。
 アイスキュロス(紀元前525年 - 紀元前456年)といえば、ギリシャ悲劇の確立者。世界史の教科書などにも登場するので、誰もが名前くらいは知っていると思います。ソフォクレス、エウリピデスと並ぶ古代三大悲劇詩人のひとり。それまで俳優ひとりとコロス(古代ギリシャ劇の合唱隊。劇の要約や背景を伝え、劇のテーマについて注釈したりします)のかけあいのみだった舞台で、複数の俳優を使い出したのもアイスキュロスです。
 アテナイ郊外で、貴族階級の子として生まれ、マラトンの戦い、サラミスの海戦に従軍しました。このサラミスの海戦の様子を描いたのが「ペルシャ人」。アイスキュロスは戦いから帰還してから8年後にこの作品を書き上げたと言われています。

 
 ペルシャ戦争のことはテルモピュライとスパルタのレオニダス王を紹介した際にも少し書きましたが、クセルクセス1世率いるペルシャの大軍勢にギリシャは大ピンチを迎えていました。サラミスの海戦も有利な戦いではありませんでしたが、紆余曲折を経て大逆転、ギリシャ側が勝利を収めたのです。
 しかしアイスキュロスはなんとこれをギリシャ人の側から描かず、クセルクセス側の悲劇として書いたのです。ありあまる冨と栄誉、権力、兵力を持っていたクセルクセス王が苦悩しながら敗退していく様はまさに「栄枯盛衰」。おごれるものもひさしからず...平家物語のような無常さを描き出しています。


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 21時の開演で20時すぎには席についていたので、続々と入ってくる観客ウォッチングをしていたのですが、盛装している人々もたくさんいて、華やかでした。有名人も多く来ていて、ゾゾ・サプンジャキという有名な女優さんが入ってきた時はすごい女優オーラでした。他にもいろいろ有名な俳優さんなどが来ていました。
 あまり開演時間が遅れず21時15分くらいにスタート。前から6列目の席がとれたので、舞台や役者の表情などすみずみまで見ることができました。大半の公演は合唱隊などの歌や一部のセリフを別として、ほぼ現代ギリシャ語です。難しい部分も多いですが、事前にあらすじを勉強しておけばけっこう楽しむことができると思います。
 

 舞台はクセルクセスの母后アトッサがペルシャの都の宮廷で不安にかられている場面から始まります。この古代劇場の音響効果を最大限に利用して、靴が舞台の砂を踏む音からため息まで計算し尽された演出は見事でした。コロスたちの声のハーモニーも迫力がありました。
 Tシャツを重ね着したコロスたち、クセルクセス、その母の女王アトッサ、亡き父王ダレイオス1世の亡霊も皆、現代の服装をしていたりとかなり斬新で現代的な演出、新解釈の箇所も多かったみたいです。約2時間の劇が終わると伝統的なギリシャ悲劇を好むファンからは「ドゥロピ!」(恥ずべき舞台だ!)という怒りの叫び声がこだましました!しかし感動した人々は反対に「ブラヴォ!」と叫びまくり、これこそまさにギリシャの劇場空間!といわんばかりの状態に...。劇場全体、強烈な興奮のるつぼと化していました。古代からこの慣習が続いているというのもすごいことです。昔は批判を叫ぶどころではおさまらず。熟れすぎのトマトを投げつけたといいます...^^;


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 余談ですが...以前、アイスキュロスの生涯を深く掘り下げて紹介したTV番組をみていろいろ勉強になったのですが、一番びっくりしたのは彼の死因です。彼は69歳で亡くなったのですが、なんと執筆中に上空から亀が降ってきてその甲羅が彼の頭部に激突して亡くなったというのです。この時代はアテネ周辺にも野生の鷲がよく飛んでいて、大好物の亀を捕獲すると甲羅を割るために亀を持って再び上空に飛び立ち、岩などに向かって放り投げ、割って食べていたらしいです。鷲がアイスキュロスの(たぶん光っていた?)頭部を岩と間違えたらしいのですが、すごい亡くなり方だと思って妙に印象に残ってしまいました。

 
 話が脱線しましたが...古代劇場の観劇はやはり特別で、とてもいい経験になりました。ぜひ来年も機会があれば行きたいと思います。この時期、ギリシャを訪れる方々にも美しい月夜、古代遺跡の劇場でギリシャ悲劇を鑑賞するのは素敵な思い出になると思います。
 

 ★ギリシャでは夏の月夜が美しいので、8月の満月の夜はアクロポリスをはじめとした全国の遺跡が夜間無料公開されます!毎年変動しますが、ことしは8月6日の予定。スニオン岬のポセイドン神殿、コリントスやミストラの遺跡、ナフプリオのパラミディなどギリシャ全土でなんと81箇所!たいてい19時ごろから夜中の1時(ところによっては3時まで!)オープンの予定。ロマンティックな夜の遺跡と美しい月を楽しむには絶好の機会です。ぜひお出かけください。


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      アテネ特派員
      有馬 めぐむ
      アテネ在住ライター。ギリシャ政治経済、社会事情、観光情報などを日本の新聞、雑誌、ウェブサイトに執筆。たまにラジオ出演も。共著に『お手本の国のウソ』(新潮社)、『世界が感嘆する日本人』、『世界で広がる脱原発』(共に宝島社・原稿提供)。こちらのサイトでは、主にギリシャ国内の旅行や、アテネのイベント、レストラン情報などをお伝えしています。

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