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ギリシア/アテネ特派員ブログ 旧特派員 有馬 めぐむ

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2009年12月15日

登山鉄道と歴史の舞台を巡る旅 ディアコフト〜カラヴリタ PART1


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登山鉄道と歴史の舞台を巡る旅 ディアコフト〜カラヴリタ PART1

Kalavrita 002.jpg ギリシャの旅といえば、夏、そしてエーゲ海の島々というのが定番のイメージだと思いますが、秋冬の旅にも奥深い魅力があります。夏はとても暑い国ですが四季もあり、紅葉や雪も楽しめ、もちろんスキーなどのウィンタースポーツもできます。
 
 日本のガイドブックにはほとんど紹介されませんが、ペロポネソス地方のカラヴリタ周辺は、ギリシャの雄大な自然や奥深い歴史の舞台など見所がたくさんあり、興味の尽きないエリアです。
 
 特にディアコフト(ディアコプト)〜カラヴリタ(約22km)を結ぶ登山鉄道はとても人気があります。今回はカラヴリタを拠点に、渓谷美を堪能できるこの鉄道に乗るのをメインの目的として、週末の1泊旅行で周辺の見所を巡りました。写真は絶壁に建設されたメガロ・スピレオ修道院です。


 
 アテネを朝9時ごろ出発。カラヴリタまでは約200km、渋滞がなければクルマで約2時間半ほどで到着します。コリントスを通過しパトラへ向かう進路をとり、ディアコフトで左に折れると、まずは最初の見所、メガロ・スピレオ修道院。
 362年に建てられたギリシャ国内でもかなり古いものですが、なんと924mの高さの場所に建てられています。メテオラの修道院も奇観ですが、ここも切り立った岩肌の絶壁の途中に突然埋め込まれたように修道院の佇まいが現れるので、かなりびっくりする風景です。
 そしてなんとここには新約聖書の「ルカによる福音書」の著者として知られる医師ルカが描いた聖母マリアのイコンがあるのです。ルカが作成したとされるイコンは世界に4つしかないもののうちのひとつだそう…。
 世界中、宗教施設というのは険しい絶壁や山頂などに建てられていますが、ここも然りで2人の聖人が夢のお告げによりこの地へやって来て、羊飼いの少女に導かれて岩の中からルカのイコンを見つけたという伝説があります。
 その後、この修道院は840年、1400年、1640年、1934年と度重なる火事に見舞われましたが、いつもこのイコンだけは焼けなかったとか。補修工事で再建された部分は8階建ての現代建築になっているものの、ホントにすごい立地です。ルカのイコンはとても見たかったのですが、現在、内部には入れたものの、かなり大規模な改修工事中。近代の展示物しか見ることができなかったのは残念…。でも迫力の光景を堪能しました。


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 その後、翌日に乗車する予定の登山鉄道の途中下車駅「ザフロルー」駅(写真左上)に立ち寄りました。この駅からメガロ・スピレオ修道院には徒歩で行くことができます。ザフロルーは村と言うよりは駅周辺に集落があるという雰囲気。駅のタヴェルナ(写真右上)で食事をしていると登山電車がやってきました。スイス製の新しい車両で、最近この新型車両に変わったそうです。この日は雨がぱらついていましたが、車内は満席で、みな楽しそうに景色を楽しんでいました。
 
 
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 食事をとったタヴェルナの内部には登山電車の旧型のモデルの写真やポスター、建設の歴史を垣間見ることのできる古い写真などが飾られていました。この地方の名産、ファソラーダ(白インゲン豆のスープ・写真左上)は冷え切った体にとても美味しく感じました。ヴラストと呼ばれる羊の塊肉を長時間煮込んだスープ(写真右上)も肉の滋味に溢れていて美味しかったです。


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 この鉄道は山岳地帯を走るので、軌間(2本のレールの内側の間の長さ)はなんとたったの750mm(写真左上)!私はコアな鉄道ファンではないので確かなデータかはわかりませんが、世界一狭いと書いてある資料もあります。標準軌間が1435mmとのことですから、いかに狭いものかわかると思います。そして鉄橋から見下ろすヴライコス渓流(写真右上)はかなりの急流。これを電車から見たらすごいだろうな〜と想像しました。
 この登山鉄道は49もの橋があり、まさに絶壁、渓谷の中を走り抜けていくわけで、景色は素晴らしいし、迫力満点なのでギリシャ人にも外国人の鉄道ファンにも大人気だそうです。翌日への期待を胸にカラヴリタのホテルへ向かいました。
 カラヴリタは標高750mに位置する町。特に冬場、スキーを楽しむ観光客で賑わいます。ホテルにチェックインをしてから町を歩き回りましたが、日が落ちた後は気温2度!アテネに比べてかなり寒いので、防寒の服装はしっかりとしてきたほうがいいです。ここ近年ですっかり土産物屋やレストラン、カフェが立ち並びました。目抜き通りだけでなく、町全体も徒歩で回れるので散歩には楽しい町です。


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 一方、第二次世界大戦下の1943年の12月13日に、町中の男性がドイツ軍に虐殺された悲惨な近代史の舞台でもあります。訪ねた週末はちょうど日曜日が13日だったので、前日の土曜日から多くの人が集まり、慰霊の式典などが行われていました。
 この悲劇の経緯を詳しく伝える博物館が町の中心にあります(写真左上)。数日前から村を包囲していたドイツ軍は当初、「この辺りに潜む反乱分子を見つけるだけで市民は殺さない」と言っていました。しかし13日になって突然、全住民を学校に集め、別の棟に女性と男性を分けました。男性といっても13歳以上の少年からお年寄りまでも含まれていました。女性と幼い子供は学校に閉じ込められ、男性は丘に連れて行かれました。そこでドイツ軍は無抵抗の男性たちに突然、大量の銃弾を浴びせ虐殺したのです。さらにドイツ軍は町に火を放ち、全てを焼き払っていきました。女性と子供が閉じ込められた学校(この建物が現在、博物館になっています)にも放火しましたが、なんとか脱出したそうです。しかしそこで女性たちが目の当たりにしたのは、炎上する町と丘の上の無数の遺体だったのです。他の人の遺体の下で、奇跡的に弾を免れた生存者が数人いて全てが明らかにされました。
 虐殺された人数はドイツ軍の発表では696人、後の連合軍による調査では約750人〜1000人が殺されたのではないかということです。館内には犠牲者のうち、はっきりわかっている461人の写真や名前が展示されていました。まだあどけない少年の姿もたくさんあり、どんなに怖ろしい思いをして亡くなったかと思うと本当に痛ましかったです。犠牲者の遺品の財布や帽子、衣服などもあり、何発もの生々しい弾痕が残されていたのもショッキングでした。そして父や夫、息子をいっぺんに殺され、家は焼かれ幼い子供に与える食べ物もなかった女性たちの悲嘆、苦難はいかばかりだったでしょう。
 虐殺が行われた丘には大きな十字架のモニュメント、1943年12月13日の日付が刻まれています(写真右上)。一昨日の12月13日で66年の月日が流れましたが、決して忘れることのできない日としてギリシャ人の心に刻まれています。


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 ドイツ軍がカラヴリタを襲撃したのは、この町がトルコからの独立戦争の発端となった反乱(1821年3月25日)を起こした町だったこともあり、ギリシャ人の戦意を喪失させようとするねらいもあったと言われています。今でも3月25日は独立記念日 で、国民の祝日です。
 カラヴリタ郊外には独立戦争の火蓋が切られたアギア・ラヴラ修道院(上の写真)があり、午前(季節により変動)と午後(3時から4時)の各1時間のみ、内部も無料公開されています。


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 左上の写真はパレオン・パトロン・ゲルマノス司祭の像。独立のために入念な計画を練った功労者の司祭です。戦士たちが修道院入口にある見事な大木(写真右上)の下に集まり、独立のための戦いを決起。この場所からまさに独立戦争が始まったのです。
 修道院の内部は普通に修道士たちが生活をしている場所なので、とても静謐です。もちろん撮影禁止で厳かな雰囲気が漂っていますが、展示物に見入っていた私の傍を通りかかった司祭が「これはロシアの女帝エカテリーナ2世の所有していたエヴァンゲリオン(ギリシャ語で福音書の意)だ」と教えてくれました。ものすごく歴史的なものがさらっと展示されているところが驚きです。
 この修道院も何度か火事や戦火に巻き込まれましたが、ところどころ焼けながらも数々の貴重な書物などが残されています。独立戦争の際、ゲルマノス司祭が掲げた旗や着用していた僧衣なども現存しています。
 

 またカラヴリタ周辺には美しい湖や鍾乳洞などもあるのですが、翌日は旅のハイライト、登山電車に乗車!朝が早いのでまたの楽しみにしました。登山鉄道の様子は次回に詳しくご紹介します。

 


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      有馬 めぐむ
      アテネ在住ライター。ギリシャ政治経済、社会事情、観光情報などを日本の新聞、雑誌、ウェブサイトに執筆。たまにラジオ出演も。共著に『お手本の国のウソ』(新潮社)、『世界が感嘆する日本人』、『世界で広がる脱原発』(共に宝島社・原稿提供)。こちらのサイトでは、主にギリシャ国内の旅行や、アテネのイベント、レストラン情報などをお伝えしています。

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