ギリシャのお葬式で食べるものは?

公開日 : 2010年06月13日
最終更新 :

 先週の月曜日、身内の葬儀がありました。アテネはこの季節にしては珍しく曇り空や雨の日が続いていましたが、この日は爽やかな晴天。ギリシャで葬儀に出席したのは2度目ですが、悲しみに包まれながらも、長い間会っていなかった親戚縁者が集まり、食事をしながら賑やかに語らうのは万国共通の雰囲気。 

 またギリシャで葬儀の日に食べるのが以前も紹介したフィッシュスープ(プサロスパ)。寒くなりかけたころ、フィッシュタヴェルナ(プサロタヴェルナ)で食べる料理の定番ですが、葬儀の際は真夏でもフィッシュスープをいただきます。にんじん、じゃがいも、玉ねぎ、セロリなどの野菜と魚を煮て、塩、オリーブオイル、レモンなどで調味するやさしい味のスープです。

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 ギリシャはキリスト教、ギリシャ正教の国。宗教行事は国民の祝日にもなっており、人々の生活は様々な面でギリシャ正教と密接に関わりあっています。

 葬儀の開始はそんなに早い時刻ではなく、12時ごろ教会に行き、棺を前にして1時間くらい家族だけが集まります。13時くらいから人々が徐々に教会にやってきて、家族席に来てお悔やみの言葉「タ・シリピティリア・ム」を述べて、握手をしたり、キスやハグを交わしたりするのが延々と続きます。とにかく大勢の人々がやってきます。親戚や友人だけでなく、近所の人や、仕事関係の人はもちろん、知人の域に達するような人まで教会に来ます。葬儀の日程などは家族が新聞に載せたりするので、その情報を見てやってくる人もいます。

 服装に関しては家族は黒の喪服、アクセサリーなどもパールや結婚指輪だけですが、バッグや靴などは日本ほど厳しくなく、黒であればけっこう自由な感じです。教会の葬儀の雰囲気はとても厳かなのですが、大半の人が喪服というわけでもなく、親戚の人々の中にも普通の格好の人も多いのが意外な印象を受けます。故人は軍隊の高官だったため、陸軍のかつての所属部隊から4人も軍隊の正装をして出席していて、葬儀をとりおこなう司祭たちと並んで立っていました。祈りの儀式が終わると、一番高位の人が、故人の軍での実績を長い時間をかけて語りました。

 それが終わるといよいよ棺が教会から墓地へと運ばれます。故人は大往生だったのであまり泣いている人は少なかったのですが、さすがに出棺の際は、皆がまた棺の周りに来て故人の写真にキスをしたりして泣き始める人が多くなりました。

 教会の出口付近には再び家族席が用意され、また全ての出席者と挨拶を交わします。私にとっては知らない人が大半だったため、、非常に疲れる行程でしたが、直接の家族にとってもこの人は誰だっけというのは多いそうで^^;今更、聞くに聞けないし…というのもなんだか世界共通の葬儀でのひとコマのような気がしました。また葬儀屋さんが慎み深く、感じが良くて、控えめながら如才なく…というかんじでこれまた日本と同じような雰囲気を感じました。この職業にはやはり独特の才能が必要とされる気がします。

 教会に来たほぼ全ての人が棺の後に続き、墓地に歩いていきます。予め穴がけっこう深く掘ってあるところに棺をおさめますが、火葬になれている身としては、なんとなく抵抗がある土葬です。最近、ギリシャでも科学的には火葬の方が衛生上よいため、議論もあるらしいですが、キリスト教の教義上の理由からギリシャ正教会は火葬に反対する立場をとっており、いまのところ許されていません。

 葬儀会社の人が棺を丁寧に担ぎ、軍からの人々が丁重に大きな国旗で棺をくるんでいました。穴の中に設置されると、その国旗を取り除き、丁寧にたたんで遺族に渡しました。ギリシャ人でもこの軍の方式を初めて見たといって感心している人がけっこういました。ギリシャはトルコに400年間、占領されていた過酷な歴史があるので、兵役もあるし国防に関わる人にはとても敬意を払っています。棺の上に皆、花を投げて最期のお別れです。

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 その後は、墓地に併設されている場所で、グリークコーヒーやコニャック、レモネード、ビスケット(クルラキャ)などがふるまわれます。家族席以外は皆、自由に座り、賑やかな雰囲気でおしゃべりが展開されました。そしてまた去るときには、またまた皆が家族席にやってきて、握手、キス、挨拶が交わされるので、本当に飲み物を口にしたり、悲しんでいる間もないほど、忙しい!疲れました^^;でも次々と別の団体さんが来るため、時間がきっかり決まっていて、けっこう慌しく、「はい、終了!じゃあ移動してくださいね〜」という感じで、ギリシャにしてはこればかりはオンタイムなのねと妙なところで感心しました。

 上の画像は参列した人々に配られるお菓子でコリヴァといいます。アーモンドや砂糖、小麦、干しブドウなどがミックスされたもの。マドレーヌのようなお菓子もついています。これを受け取り、大半の人が帰っていきます。

 そしてお次は…家族や近い親戚のみでレストランに。通常、夏には食べないフィッシュスープですが、心身ともに疲れている身にとっては、魚と野菜の滋味溢れる口当たりが美味しく感じます。食欲のない人でも食べやすいし、滋養のあるレシピなので、葬儀の際にこの料理が選ばれるのがわかる気がしました。人々は故人の思い出を語りつつ、ワインを飲み、だんだん賑やかになってきます。これも日本と同じような雰囲気を感じました。

 話がはずみつつも、遠方から飛行機で来た人などもいるので、2時間くらいでお開きになるのですが、お別れを言った後、また話が続いたり、さっきお別れを言った人が隣にきてしゃべり始めたりといつまでたっても終わらないのがギリシャらしかったです。

 亡くなった日から3日までは魂はまだ家族の近くにいるとされます。9日目には日本の初七日のように、また家族だけが集まって墓前で司祭とともに祈りを捧げます。今はあまり守られていないようですが、亡くなった日から40日間は家族は肉を食べないようにする習慣もあるそうです。40日の儀式で教会にてワインとパンをいただき、その後、肉食が解禁となります。日本のように一周忌や三回忌もあります。

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