テッサロニキで発見されたウエストナイルウイルス感染について

公開日 : 2010年08月12日
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 北部に位置するギリシャ第2の都市、テッサロニキの病院にて死亡した3名の患者さんがウエストナイルウイルス(ウエストナイル熱、West Nile fever、西ナイル熱)に感染していたことがわかりました。一般的に蚊が媒体になり、感染した蚊に刺されて感染します。人から人への感染はありません。

 現時点で報告された感染者は21名。ヴェリアやナウサなど、テッサロニキの西部に集中しているようです。アテネでの感染者はいまのところ報告されていません。

 ウエストナイルウイルスは感染するとインフルエンザのような症状が出ますが、感染した蚊に刺されても大半の人(約80%)は全く何の症状も出ないそうです。潜伏期間は2〜6日。感染した人のうち、約20%の人がウエストナイル熱になり、発熱、頭痛、咽頭痛、背部痛、筋肉痛、関節痛、発疹(胸背部に出て特徴的)などが主な症状です。リンパ節の腫れ、腹痛、嘔吐、結膜炎などの症状が出ることもありますが、症状は軽度で適切な治療を受ければ、ほぼ1週間程度で回復するとのことです。

 しかしそのうち約1%の人が(特に高齢者)は重症化しやすく、脳に感染しウエストウイルス脳炎になります。そうなると激しい頭痛、意識障害、痙攣、筋力低下、麻痺などを示します。テッサロニキの病院で亡くなった患者さん(男性2人、女性1人)はいずれも75歳以上の高齢の方で、他にもいろいろと持病があったようです。

 このウイルスは1937年にウガンダの西ナイル地方で発熱した女性から最初に分離されました。日本脳炎ウイルスに近く、フラビウイルス科フラビウイルス属に属するとのことです。今までアフリカ、西アジア、中東、ヨーロッパ、北米など世界中で感染者が出ました。都市部でも流行することがあり、1999年にはアメリカのニューヨーク市周辺でも流行し注目を浴びました。CDC(アメリカ疾病予防管理センター・アメリカ合衆国保健社会福祉省所管の感染症対策の総合研究所)の資料によると、02年以降急増し、04年から07年にはアメリカで毎年100人以上の死者が出ていました。効果的なワクチンは現時点ではないということ。

 厚生労働省の資料によると日本でも2005年にアメリカから帰国した30代の男性がウエストナイル熱に感染していたと発表されています。ヨーロッパでもフランスやイタリア、ルーマニアなどで過去に感染が確認されましたが、ギリシャでの感染は初めてです。

 ギリシャ保健省は現在までこのウイルスがギリシャにおいて流行する可能性は低いといっていますが、テッサロニキ周辺の発生地では蚊の幼虫の発生を防ぐため、殺虫剤の散布を行っています。

 また感染を防ぐため、防虫スプレーやローションなどの使用、長袖など露出の少ない服装での外出、住宅地ではプールなどの水抜きや網戸の設置などを呼びかけています。子ども用のビニールプールやバケツなどの水や小さな水たまりにも蚊はすぐに卵を産むらしいので、そういったものを放置しないように注意することも大切です。

 昨日は科学者や医師、政治家などの識者が集まり、対策を検討。今朝のニュースによると発生地では既に行われている地上での殺虫剤の散布に加え、航空機による殺虫剤の散布も決定された模様です。 

 日本に比べてギリシャは湿気が少なく、とても乾燥しているので、地域にもよりますが、一般的に蚊は少なく屋外にいても刺されることはめったにありません。夏を過ごすサマーハウスなど海の近くの家にいると、蚊が家の中に入ってくることもありますが、日本の蚊に比べるとかなり弱々しく簡単に殺せたりします。私のアテネの自宅付近は緑の多いところで、都心に比べると虫なども多いのですが、バルコニーで過ごしていても蚊に刺されたことはめったにありません。でも鳥と蚊の間で感染環が維持されるということで、ウイルスを持つ鳥を刺した蚊に刺されたら感染します。重篤に陥るのは1%、高齢者が中心とのことですが、自宅付近は鳥が多いので、やはり蚊に刺されないよう注意しようと思います。

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