東北関東大震災 ギリシャより祈りをこめて

公開日 : 2011年03月14日
最終更新 :

 3月11日に起きた東北関東大震災。この未曾有の大惨事で亡くなられた多くの方々に哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 発生時刻はギリシャ時間で、朝の8時少し前でした。テレビをつけていなかったので、直後はそんな恐ろしい地震がおこったことを知りませんでした。友人から「テレビつけて!日本で大変なことがおこっている」と電話があり、津波のショッキングな映像に呆然としました。東北地方が震源ということはわかりましたが、関東地方もかなりのダメージを負っているとのことで、家族や親戚、友人などに連絡をとろうとしましたが、電話はなかなかつながりませんでした。

 動揺する中、Twitterにログインすると、凄まじい情報量で地震に関するツイートが溢れていました。日本の様子を尋ねると、関西や中部の人たちから「こちらの方は被害はありません。東北、関東の被害が甚大です」というリプライが素早く返ってきました。そして首都圏の多くの方々からは、「外出先で地震に見舞われ、近くの丈夫なビルで一時避難をしているが、余震が激しい」、「ATMでお金をおろしている最中に大きな地震を感じた。今までの人生の中では一番長く激しく揺れた地震だった」、「オフィスにいるけれど、天井が落ちてきそうで怖い」という生々しく切迫したリプライが...。呆然としてしまい、仕事が手につきませんでした。

 スカイプ同士はつながるものの、被害に遭った地域でスカイプを開いている人は当然少なく、スカイプから電話にはやはり繋がりません。3時間後くらいに、実家や大半の友人とメールやツイッターで連絡がとれ、無事を知ることができました。また海外にいても、USTREAMのNHKやTBSの映像を見ることができ、次々と映し出される衝撃的な惨状に、大きなショックを受けました。

 首都圏では11日の夜、交通網が麻痺し、数十万人にのぼる帰宅難民が出ましたが、阪神大震災の時と違うと思ったのは、ソーシャル・メディアがあり、FacebookやTwitterなどで安否確認ができたり、素早く有益な情報がたくさん流れたことです。中にはデマの流布もありましたが、公共機関の発する情報が素早く伝播したり、個人と個人をつなぐシステムが少なからず役立ったと思います。

 Twitterで「オフィスに泊まるか迷っている」とか「歩いて自宅に帰る」という方々が多くいました。そのうちに多くの大学やホテル、レストラン施設などが、帰宅困難者のために、休む場所やトイレ、温かい飲み物などを提供し始めました。私も遠いギリシャから、少しでも役に立てばと思い、有益そうな情報をリツイートしたり、約15キロ、中には20キロほどを歩いて帰った方などを励まし続けました。携帯がつながらない中、本当に役にたったという声が多く聞かれました。

 妊婦さん、薬の服用を要する人々、ハンディキャップの人々、日本語がわからない外国人などのマイノリティの人々を助けようとするツイートも多くありました。

 ギリシャは日本と同じ火山、地震国です。1999年9月に起こったアテネ地震(マグニチュード5.9)では120数名が亡くなりました。地震のニュースには常に関心が高く、今回の日本の地震について、観測史上最大規模の地震として発生直後からトップニュースとして報道を開始しました。テレビではほぼ全てのチャンネルで、地震で倒壊した家屋、コンビナート火災、津波で船や民家が根こそぎ流されていく衝撃的な映像を流し続けました。

 在東京のギリシャ人に電話インタビューした映像も何度か流れました。大手新聞のサイトには在アテネの日本人の声を拾った記事もアップされていました。福島原発の爆発等も日本のメディアとほとんど時間差なく、報道し続けています。一方、これはギリシャだけでなく、他の欧州国でも多いようですが、日本の地理に詳しい人は少ないので、あまりにもショッキングな映像により、日本全土がすごく危険な状態だと思っている人も少なくありません。

 こういう混乱は、逆に日本でも07年のギリシャの山火事や、昨年のギリシャ危機の暴動の際、ギリシャ全土がどこもかしこも炎上、暴動のような印象を与える報道もあり、観光業界のダメージも大きかったです。私のもとにも日本から安否を問い合わせる連絡が殺到しました。テレビなどの公共性のある報道はもちろん必要ですが、ショッキングな映像を繰り返し流すことは、遠く離れていればいるほど、不安感を煽ってしまう部分もあります。その点でも、ソーシャル・メディアで、個人から生の情報が得られることは、大きなメリットがあります。家族と連絡がとれなくても、同じ地域の人とコンタクトをとり、状況を聞きたりもできるからです。

 ギリシャのパパンドレウ首相は、菅直人首相に、同じ地震国として、哀悼のメッセージを送りました。現時点では被災地の救助の様子なども中継されていて、多くのギリシャ人が日本の状況に心を痛めています。ギリシャ政府、企業、市民からレスキューチーム派遣等様々な形での支援申し出と義援金の協力もあり、日本大使館には支援申し出の電話が殺到しているとか。

 ギリシャ人のデザイナーが、日本のための祈りや応援メッセージを込めたアイコンパーツをデザインし、私の周囲でも多くのギリシャ人がFacebookなどで使っています。

 ギリシャ人の友人から知人の類にいたる人まで、電話やメールなどを通しての励ましのメッセージが続々と寄せられました。遠いギリシャからも多くの人々が日本のために祈りを捧げています。ギリシャはいま深刻な景気後退で、私の周りでも職を失った人や何ヶ月も給料が払われていない人も多いのですが、ぜひ募金などできることをしたいという声が多く聞かれます。

 地震発生から今に至るまで、迅速で組織的な救助活動や、自宅に帰りたい気持ちを抑えて仕事に取り組み続けたり、混乱を起こさずに助け合う人々といった、パニックをおこさない日本人の冷静さ、真面目さを賞賛する報道も多かったです。

 これからまだまだ予断を許さない状況が続きます。多くの方々が長期間に渡り、苦しい時間を過ごすことになると思います。未曾有の大地震で、壊滅的な打撃を受けた日本。遠いギリシャから、現時点では募金くらいしかできることがありませんが、被災地の方々のために祈るとともに、少しでも役に立つことを探していきたいと思います。日本赤十字社でも、今日14日から募金の受付が始まりました。

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