映画界の巨匠 テオ・アンゲロプロス氏、急逝
1月24日、世界的巨匠として知られる映画監督テオ・アンゲロプロス氏が交通事故に遭い、76歳で亡くなりました。「永遠と一日」でカンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞など、数々の世界的な映画賞に輝いたアンゲロプロス監督、高齢ではありましたが、ギリシャと欧州の債務危機をテーマにした新作「Η άλλη θάλασσα」(The Other Sea)を撮影している最中でした。
昨日19時ごろ、アテネより約12Kmほどのピレウス郊外、短いトンネルがある路上でバイクにはねられ、頭部や内臓を強打。救急車で公立病院に搬送され、その後私立病院に移送、懸命の救命治療が行われましたが、脳や脾臓に大きなダメージがあり、帰らぬ人となってしまいました。今朝の現地新聞の大半がこのニュースをトップ記事として報道しました。
監督はアテネ生まれ、アテネ大学卒業後、フランスの国立高等映画学院などで学んだので、昨夜、事故死が報道されると、彼が学んだフランスをはじめイタリアなど他の欧州国でも、瞬く間に多くの関連記事がアップされました。ギリシャ政府も公式に彼の死を悼む声明を発表しました。
いわゆる長回しやどんよりと曇った天気の中での撮影が特徴的で、難解さを指摘されることもありますが、「旅芸人の記録」、「アレクサンダー大王」、「ユリシーズの瞳」等、どれも世界的な映画賞を受賞しています。生涯において15の長編作品を撮り、撮影中の映画は16本目となる予定でした。
近年、製作された3部作の第1部「エレニの旅」のプロモーションで来日したこともあり、09年にベルリン映画祭で公開された第2部「第三の翼」は、日本公開が決まっているそうです。この3部にあたる映画が未完となったわけです。
昨夜、ツイッターでこの悲しい知らせを書いたところ、数え切れないほどのレスがきて、日本にも多くのファンの方々がいらっしゃるのだなと改めて残念に思いました。彼の突然の死を驚き悼むとともに、「撮影中の映画は誰かが引き継ぐのでしょうか」という質問が多かったのですが、まだ詳しいことはわかっていません。続報があればお知らせしていきます。
新作のストーリーは、欧州危機がテーマと前述しましたが、時代背景は現代ではないものの、ある父と娘の姿を通して、ギリシャの倫理的な危機を描こうとしていたそうです。父は旧態依然としたシステムの中で、経済危機の原因をつくった側、娘はそれによって苦境に陥っている若い世代の側のシンボルとして...。いまも世界の注目を浴び続けているギリシャ危機を、ギリシャ人の世界的な映画監督がギリシャの内から発信することを待ち望んでいました。交通事故死というのが、本当に残念でなりません。
上の画像は義理の両親が夏を過ごすサマーハウスの前の海とビーチに続く小道です。アンゲロプロス監督のサマーハウスは近所で、義母はよくビーチで監督と世間話をしたりしていました。巨匠なのに気さくな方で、私も挨拶や短い会話を交わしたことがあります。黒澤明監督とも親交があったようです。
監督の家から、うちのサマーハウスの庭を通ってビーチに行くと近道だったようで、勝手に敷地に入って庭を歩いていくので、下の階のおばあちゃんが文句を言うため彼の名前を叫ぶと、お茶目な笑顔を浮かべながら、急ぎ足で海に抜けていったものです(笑)。しかしもうその後姿を見ることはないのだなと思うと、悲しさがこみあげてきます。心からご冥福をお祈りいたします。
【追記①】テッサロニキ国際映画祭は次回より、テオ・アンゲロプロスの名を冠した賞を設けることを決定しました。
【追記②】2月2日のザ・プライムショー のニュースコーナーで、アンゲロプロス監督のことをとりあげるそうで、亡くなった後のギリシャ国内の反応や、遺作の行方などについてリサーチを担当、数年前、短い会話を交わした時の様子などについて少しだけお話もする予定です。
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お知らせ
2012年1月25日
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コメント(8)
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アンゲロプロス監督は この十数年間、ずっと1番好きな映画監督でした。
新作も 観たかった。。
寂しくなります。
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まま : 2012年1月25日 22:33
ままさん、コメントありがとうございました。
私も新作が観たかったです。どなたかが引き継いで制作を続けてくれないかとも思ってしまいます。長年、パートナーとして働いてきた撮影監督は訃報を滞在先のパリで聞き、ショックのあまり、現段階では何も考えられないとコメントしたそうです...。
投稿者
Megumu(アテネ特派員) : 2012年1月26日 07:49
もったいないですね〜、この死に方って。まだまだ撮れたでしょうに。「旅芸人」、「霧の中の・・・」「エレニ」など見ました。長まわしが特徴的な監督でしたね。詩情を感じさせる画面作りなど、この人ならではの作品が多かったように思いました。合掌
投稿者
ぐらっぱ亭 : 2012年1月26日 10:11
ぐらっぱ亭さん、こんにちは
以前、アンゲロプロス監督が「映画を撮りながら亡くなるのが幸せ」と話していたと、監督の友人が今日の新聞紙面で明かしていました。偉大な映画監督は撮影中に亡くなられるケースがけっこうありますものね。残念ではありますが、それが一番幸せなのかもという意見もありました。
追記として本文にも加えましたが、テッサロニキ国際映画祭は次回よりテオ・アンゲロプロスの名を冠した賞を設けることを決定。明日1月27日16時よりテオ・アンゲロプロス監督の国葬が営まれる予定です。
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Megumu(アテネ特派員) : 2012年1月26日 20:50
アンゲロプロスを失った身近なスタッフはどうするのか。
「アンゲロプロスならいつか、全人類を救う 奇跡の一本を作りあげるんじゃないか」という私の期待は どこに向かうかとあれから考えていました。
生まれ変わりがいつかあらわれるかなとか。それは何年後かなとか。
ファンからしたら残念無念だが、70代のおじいちゃんが撮影で充実した中で亡くなる事は、或る意味幸せだろうな。少なくとも 70代だし若者が突然亡くなるよりいい。と。
やはり撮影中に…という理想を御本人が持っていたと知り、アンゲロプロスはそうゆう人だ納得 と思いました。
「ユリシーズの瞳」を見て惚れてから、アンゲロプロス特集上演や映画祭で観てきました。
16年間 ありがとう。テオ・アンゲロプロス。
きっと「私のNO.1監督はアンゲロプロス」の座は そう簡単には替わらないと思います。
これからもファンです。
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まま : 2012年1月27日 16:00
ままさん
昨日は第一墓地での葬儀が国営放送でライブ中継されました。大勢の人が教会や墓地の入り口付近に集まり、溢れ出ていました。教会内での葬儀が終わり、人々の大きな拍手の渦の中、棺が墓地に運び出されていきました。彼にぴったりな小雨まじりの曇り空でした。
「もうひとつの海」は、娘さんが後を引き継ぐという話もちらほらあるようですが、現時点でまだ正式な発表はないと思います。期待が大きい分、重圧もあるでしょうね。昨夜は追悼番組として、「第三の翼」のメイキングや、監督へのロングインタビューなどが放映されていました。主演のウィレム・デフォーの演技を絶賛していたので、早く鑑賞せねばと思いました。
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Megumu(アテネ特派員) : 2012年1月28日 23:59
ツイッター経由で多くのアンゲロプロスファンの方々が送ってくださった日本での追悼上映の情報ですが、現時点では予定されていないということで、本文より削除いたしました。
アテネでは5月31日にメガロ・ムシキス(アテネコンサートホール)でアンゲロプロス監督の映画のシンポジウムが開かれることになっていましたが、こちらは監督亡き後も開催される予定です。「ユリシーズの瞳」が上映予定とのこと。アンゲロプロス監督とドイツの著名な映画監督ヴィム・ヴェンダース氏による対談が予定されていました。映画や芸術、経済危機などについてお話される予定だったそうです。この対談もヴェンダース監督とメガロ・ムシキスの代表とで行われるそうです。
投稿者
Megumu(アテネ特派員) : 2012年2月 2日 19:58
池袋の 新文芸坐
で3月12日から18日までテオ・アンゲロプロス監督の緊急追悼上映を行う予定だそうです。ラインナップは『旅芸人の記録』『アレクサンダー大王』『シテール島への船出』『霧の中の風景』『こうのとり、たちずさんで』『狩人』『ユリシーズの瞳』『蜂の旅人』『永遠と一日』『エレニの旅』、以上10作品が上映スケジュールに記載されています。
投稿者
Megumu(アテネ特派員) : 2012年2月 4日 02:11
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