映画界の巨匠 テオ・アンゲロプロス氏、急逝

公開日 : 2012年01月25日
最終更新 :

 1月24日、世界的巨匠として知られる映画監督テオ・アンゲロプロス氏が交通事故に遭い、76歳で亡くなりました。「永遠と一日」でカンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞など、数々の世界的な映画賞に輝いたアンゲロプロス監督、高齢ではありましたが、ギリシャと欧州の債務危機をテーマにした新作「Η άλλη θάλασσα」(The Other Sea)を撮影している最中でした。

 昨日19時ごろ、アテネより約12Kmほどのピレウス郊外、短いトンネルがある路上でバイクにはねられ、頭部や内臓を強打。救急車で公立病院に搬送され、その後私立病院に移送、懸命の救命治療が行われましたが、脳や脾臓に大きなダメージがあり、帰らぬ人となってしまいました。今朝の現地新聞の大半がこのニュースをトップ記事として報道しました。

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 監督はアテネ生まれ、アテネ大学卒業後、フランスの国立高等映画学院などで学んだので、昨夜、事故死が報道されると、彼が学んだフランスをはじめイタリアなど他の欧州国でも、瞬く間に多くの関連記事がアップされました。ギリシャ政府も公式に彼の死を悼む声明を発表しました。

 いわゆる長回しやどんよりと曇った天気の中での撮影が特徴的で、難解さを指摘されることもありますが、「旅芸人の記録」、「アレクサンダー大王」、「ユリシーズの瞳」等、どれも世界的な映画賞を受賞しています。生涯において15の長編作品を撮り、撮影中の映画は16本目となる予定でした。

 近年、製作された3部作の第1部「エレニの旅」のプロモーションで来日したこともあり、09年にベルリン映画祭で公開された第2部「第三の翼」は、日本公開が決まっているそうです。この3部にあたる映画が未完となったわけです。

 昨夜、ツイッターでこの悲しい知らせを書いたところ、数え切れないほどのレスがきて、日本にも多くのファンの方々がいらっしゃるのだなと改めて残念に思いました。彼の突然の死を驚き悼むとともに、「撮影中の映画は誰かが引き継ぐのでしょうか」という質問が多かったのですが、まだ詳しいことはわかっていません。続報があればお知らせしていきます。

 新作のストーリーは、欧州危機がテーマと前述しましたが、時代背景は現代ではないものの、ある父と娘の姿を通して、ギリシャの倫理的な危機を描こうとしていたそうです。父は旧態依然としたシステムの中で、経済危機の原因をつくった側、娘はそれによって苦境に陥っている若い世代の側のシンボルとして...。いまも世界の注目を浴び続けているギリシャ危機を、ギリシャ人の世界的な映画監督がギリシャの内から発信することを待ち望んでいました。交通事故死というのが、本当に残念でなりません。

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 上の画像は義理の両親が夏を過ごすサマーハウスの前の海とビーチに続く小道です。アンゲロプロス監督のサマーハウスは近所で、義母はよくビーチで監督と世間話をしたりしていました。巨匠なのに気さくな方で、私も挨拶や短い会話を交わしたことがあります。黒澤明監督とも親交があったようです。

 監督の家から、うちのサマーハウスの庭を通ってビーチに行くと近道だったようで、勝手に敷地に入って庭を歩いていくので、下の階のおばあちゃんが文句を言うため彼の名前を叫ぶと、お茶目な笑顔を浮かべながら、急ぎ足で海に抜けていったものです(笑)。しかしもうその後姿を見ることはないのだなと思うと、悲しさがこみあげてきます。心からご冥福をお祈りいたします。

【追記①】テッサロニキ国際映画祭は次回より、テオ・アンゲロプロスの名を冠した賞を設けることを決定しました。

【追記②】2月2日のザ・プライムショーのニュースコーナーで、アンゲロプロス監督のことをとりあげるそうで、亡くなった後のギリシャ国内の反応や、遺作の行方などについてリサーチを担当、数年前、短い会話を交わした時の様子などについて少しだけお話もする予定です。

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