イロド・アティコス音楽堂でオペラ『トスカ』鑑賞

公開日 : 2012年07月31日
最終更新 :

 日曜日の夜、アクロポリスにある遺跡の劇場、イロド・アティコス音楽堂(通称・イロディオ)でオペラ『トスカ』を鑑賞してきました。ギリシャ国立オペラ座の公演で、7月26~29日の4日間、開催されました。

 イロディオは見事な遺跡でありながら、現代でもコンサートが開催される素晴らしい野外劇場です。161年建立、当時の大富豪イロド・アティコスが亡き妻の思い出にと、アテネにまるごと寄贈したという逸話があります。約 5000人以上収容の巨大な施設で、幾度か修復を重ねていますが、立派に機能し、いまを生きる私たちが観劇を楽しむことができます。

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 25、45、55、60、85、100ユーロの席がありましたが、直前にチケットをとったこともあり、4日間のうち、チケットが完売でとれなかった日もありました。バカンスでアテネから次第に人が少なくなっている時期にも関わらず、最終日の日曜日も大入り。開演30分前に到着した時点で、かなりの人が劇場前に詰めかけていました。

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 この劇場には毎夏、足を運びたくなりますが、昨年は行けなかったので、2年前に日本の能舞台を観に行って以来。何度訪れても特別な感慨をおぼえる劇場です。ギリシャの夏、雨はほとんど降らないので、舞台の上の宵闇に浮かぶ月も綺麗です。

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 この週末は40度ちかくまで気温が上がり、昼間に強い太陽光線を浴びた大理石の観客席はかなり熱くなっているだろうと予想はしていましたが、薄いクッションが置いてあるにも関わらず、座った瞬間に熱が伝わってくるくらい^^;イロディオにはドレスアップして来る人が多いですが、皆、本当に暑そうにしていました。21時開演でしたが、開演前後にはかなり上の方の観客席までびっしりと埋め尽くされていました。

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 連日、大入り満員だったのはアルゼンチン出身で、世界的に有名なオペラの演出家ウーゴ・デ・アナが手がけたギリシャ初の公演(美術、衣装も担当)ということも大きかったでしょう。遺跡の劇場は、それ自体がまるで舞台装置であるような錯覚を覚えます。加えて第1幕の舞台、聖アンドレア・デッラ・ヴァッレ教会、第2幕のファルネーゼ宮殿、第3幕のサン・タンジェロ城など、それぞれのシーンの舞台美術、セットが素晴らしく、荘厳な雰囲気、臨場感に溢れていました。各場所をイメージさせるビデオ映像が、遺跡をスクリーンにして映し出される効果も斬新でした。幕間には大道具のスタッフの人々が忙しく立ち働いていました(上の画像)。

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 金、日曜日のトスカ役はギリシャ人のツェリア・コステア(上の画像)。この夏のギリシャ国立オペラ座の2大公演のうち、6月に上演された『イル・トロヴァトーレ』でレオノーラ役を好演。高い評価を受けました。カヴァラドッシ役はチリ出身のジャンカルロ・モンサルヴェ。木、土曜日に演じたアメリカ人歌手カール・タネルとともに、カヴァラドッシがはまり役と名声を得ているそうです。木、土曜日のトスカ役はイタリア人のダニエラ・デッシーでした。彼女は世界的にもトップクラスのオペラ歌手で、ヴェルディやプッチーニの作品で主役を務めることが多いですが、CDも70枚ほどリリースされています。数年前の東京公演では拍手が45分間、鳴り止まなかったとか。07年、イタリアのフィレンツェ公演では観客の熱烈な声援によりアンコールで歌うことになりましたが、世界的なオペラ公演で、高名な歌手がアンコールに応えて歌ったのは52年ぶりだったそうです。

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 ちなみにギリシャ国立オペラ座で『トスカ』の初公演が行われたのは第2次世界大戦中の1942年。ギリシャのディーバ、20世紀最高のソプラノ歌手と言われたマリア・カラスがトスカを演じました。この時、彼女は無名の歌手で、19歳だったということです。

 本当に暑い夜でしたが、遺跡の劇場を舞台に、素晴らしい歌声と演奏、豪華な衣装、セット...舞台芸術に魅せられた一夜でした。

※毎年、夏に開催される芸術祭、アテネ・エピダヴロスフェスティバルではイロディオ(6,7月がメイン)やエピダヴロスの遺跡の野外劇場をはじめ、数箇所の劇場などでの公演が紹介されています(英語頁あり)。

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