人種差別について考える〜白人の移民国家アルゼンチンの場合〜

公開日 : 2010年02月11日
最終更新 :
筆者 : bonita

日本外務省の「各国・地域情勢/アルゼンチン」によれば、

アルゼンチンでは、欧州系(スペイン・イタリア)の人々が

人口の97%を占めています。

首都ブエノスアイレスでは、褐色の肌より白い肌の人が圧倒的に多いのですが、

それは、1870年頃に実施された国家計画「La Conquista del Desierto(砂漠の開拓作戦)」

によって、文明と発展の大義名分のもと

パンパ大草原とパタゴニア地域にいた先住民の部族が

完全に姿を消したからだと言われています。

南米大陸といえば、メスティソが多いというイメージがありますが、

アルゼンチン・チリ・ウルグアイは例外です。

さて、そんなアルゼンチンなので、

「日本人を含むアジア系が

 人種差別を受けることはあるのでは・・・」

と心配される旅行者もいるのではないでしょうか。

実際、アルゼンチンで人種差別と思われる扱いを受けた、

という話も耳にします。

でも、これはあくまで私の印象ですが、

アルゼンチンはヨーロッパの国々と比較して

人種による差別はとても少ないです。

それは、アルゼンチンという国自体が移民国家であること、

戦前・戦後を通して、たくさんのアジア系民族が移民してきたこと、

その中で日系人がアルゼンチン人の信頼を得ていったこと、

今、アルゼンチンで日本や中国などのアジア文化が注目されていること、

などなど、理由はいくつかあげられます。

フランシスコの講演会.jpg

▲友だちの誕生パーティーで。やっぱり白人が多い。

誕生パーティー.jpg

▲私と夫は、彼にとって唯一のアジア系の友だちです。

 いつも、とても親切にしてもらっています。

各国の旗.jpg

▲私たちのために、日本の国旗も用意してくれていました。

武術を習うアルゼンチンの人たち.jpg

▲日本の文化に興味を持っている人もとても多いのです。

 (武術を習っているアルゼンチン人グループ)

寿司パーティー.jpg

▲日本食にも興味あり。我が家での寿司パーティーの様子。

アルゼンチンは人種差別の少ない国です。

けれど、

      階級差別

があります。

それは、ハイクラスの人々がそれより下の人々を差別するというより、

レストランやカフェ、ショップ、ホテルなどで働く人たちが

ハイクラス・ミドルクラスの人々と

それ以下の人々を差別しているように見受けられます。

つまり、よりクラスの高いお客さんには素晴らしいアテンドをするけれど、

そうではないお客さんに対してはぞんざいな態度を取る、というように。

私自身、こんなことがありました。

かなりカジュアルな服装で、あるバルに入った時、

なかなか注文を取りに来てもらえず困りました。

彼らは、私よりずっといい服を着ているお客さんには

アテンドがとても良かったのです。

そこで、数日後

思い切りいい服を着て同じバルに出かけました。

すると、店長らしき人が出てきて

これまたいい服を着ていた夫に握手を求めたのです。

相手のクラスを見分ける方法のひとつ、それは服装です。

アルゼンチンの階級差別は、言い換えれば

      服装差別

なのです。

「南米のパリ」と呼ばれるほどにヨーロッパの雰囲気が漂い

お洒落に敏感なポルテーニャたちが街を闊歩するブエノスアイレスで、

差別的な扱いを受けないてっとり早い方法は、服装に気を配ること。

日本人を含むアジア系の観光客の場合、

旅行の際の服装があまりにカジュアル過ぎることがあります。

しかも、ヨーロッパの人々のカジュアルと違ってどこかあか抜けない・・・

多くのアルゼンチン人にとって、

街中のカフェやレストランはお洒落をして出かける場所。

それなのに、まるで登山にでも行くような服装で入ってくるような観光客は、

いくらお金を持っていてもそれなりに扱ってもらえません。

「ボロは着ても心は錦」ということわざがあるくらいの日本では、

服装ひとつで差別を受けるなんて信じられないことかもしれません。

しかしそれは、日本がオール中流と呼ばれるほどに貧富の差が激しくない国だから。

経済格差の大きいアルゼンチンでは、人種よりも見かけひとつで

相手の立場や持っているお金を推し量ろうとします。

チップをはずんでくれそうなお客さんに一生懸命にアテンドするのは、

店員のほうからすると当たり前のこと。

それを人種差別と勘違いしている旅行者も、もしかしたらいるのかもしれません。

アルゼンチンで階級差別を受けないコツは、

入りたい店に合わせた服装をすることです。

ブランドショップに入るのにパッカーのなりで出かけて行くのも、

下町の安いコンフィテリアに入るのにドレッシーな服装で出かけて行くのも、

どちらもすごくナンセンス。

カフェ.jpg

▲カフェやレストランにもランクがあるので、

 その時の自分の予算と服装に合う店を選ぶようにしています。

それでも、明らかに人種による差別を受けたという場合は、

店の人に抗議をするか、店内のお客さんにそれをアピールしましょう。

アルゼンチンでは、人権に対する国民の意識が高く

もし人種による差別を受けた場合、行政機関に訴え出ることが出来ます。

※とはいえ、ブエノスアイレスでは、アルゼンチン北部出身の人、

 ボリビアやパラグアイなど周辺の国々からやって来た人々の

 「国籍」「人種」「肌の色」などの要素に対する差別があるのも事実です。

 アジア系への人種差別も、もちろん皆無というわけではありません。

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