名誉殺人~結婚をめぐるインドの社会問題~

公開日 : 2015年07月05日
最終更新 :
筆者 : nok

結婚式直後、花嫁が実の親によって「自分たちの望まない相手と結婚をした」という理由で殺された――。去年11月、デリーで起こった残酷な事件に衝撃を受けました。

Yadavという上位カーストの女子大学生(21歳)が違うカーストの男性(24歳)と結婚し、その直後、女子学生が両親に殺害されたという事件。両親は、同じカーストの男性と結婚させようとしていましたが、娘が言うことを聞かなかったことが事件のきっかけとなったようです。

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こういった親の認めない交際や結婚によって「家族の名誉を汚した」として起こる殺人事件は「名誉殺人(honour killing)」と呼ばれます。保守的な考えの根強い農村部で発生しがちな事件とのことですが、このときの現場はデリー。インド人の友人も「首都で起こるなんて・・・」とショックを受けていました。

新聞によると、逮捕直後、両親は反省の色は見せず、「違うカーストの男性と結婚しても、娘はその男性を尊敬できないと思った。何度言っても反抗して別れようとはしない娘の態度に、我慢ならなくなった」と供述しているとのことでした。

この事件の後にも、ことし4月、ウッタル・プラデーシュ州で20歳の娘が42歳の母親に殺害されたり、ビハール州では、5月、男女が集団暴行された末に焼き殺されたりするなど、いくつか「名誉殺人と疑われる」事件を耳にしました。

2011年、インドの最高裁は、名誉殺人を犯した者は、死刑に処せられるべきだ、という考えを示したようですが、そう簡単に「家柄」に関する怒りが静められるわけではないのだなあと考えさせられます。

私の周りのインド人は、「娘には自由恋愛の末、結婚してほしい」という女性もいれば、「自分は親の選んだ女性と結婚するのだ」と力説し、事前に相手に一度も会わないまま見合い結婚した若い男性もいます。どちらがいい、悪い、というものではないでしょうが、結婚の形式へのこだわりが強すぎると、危険をはらんでいるのだろうなあと思います。

関係者の誰もが100%納得できる結婚というのは、インドに限らず世界中どこでもなかなか難しいものだと思いますが、「時間をかけて折り合いをつけていく」考え方が浸透し、残忍な事件がこれ以上起きないことを願ってやみません。

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