衝撃!オランダ国内の負の遺産!!

公開日 : 2016年08月24日
最終更新 :

こんにちは!夏休みもいよいよ後半に入り、毎日子供と一日中何をしていいかアイデアが尽きてきた私でございます。

前回はオランダ最盛期の歴史保存区域のザーセスカンスをご紹介しましたが、今回は負の遺産であり、このノード・ブラバント州にある博物館の一つ、国立祈念博物館Kamp Vught(カンプ・フクト)をご紹介します。

この博物館、実は第二次世界大戦中、オランダにあったナチスドイツによる強制収容所の一つです。ポーランドにあるアウシュビッツ強制収容所ほど大規模ではなく、そのような絶滅収容所までユダヤ人を輸送する中継地点として利用されていたようです。しかし、オランダで唯一ナチス親衛隊(SS)の管理室なども整備され、中継地点として重要な役割があったようです。連行された人達は主にユダヤ人でしたが、オランダのレジスタンスの人達、政治犯、家族がユダヤ人を助けたため懲罰として連行されたオランダ人や、ドイツ軍の1兵士の遺体が見つかったため、適当に選ばれて連れてこられた無実の人達もいました。

館内に入るとまずこのようなカレンダーが目につきます。

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このカレンダーは来館日を表しているのと同時に、この収容所でこの日付に亡くなった人(囚人)の名前が記されています。囚人はすべて番号で管理されていましたが、ナチスドイツは記録作業は確実に行っていたため、人々の名前が番号となった後も記録の中にその人達の名前は残され、死亡した際も記録していたそうです。

そしてこの囚人服。

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これはヨーロッパ中に拡散していたナチスドイツによる強制収容の数、場所を表しています。

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またこれは、どの民族、人種が価値ある者か、どの人種が家畜、もしくは奴隷程度の価値なのかを示したナチスドイツによる規則です。

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Untermensch とはドイツ語で<人間以下の生き物>、Dood とは<死>、Jodenとは<ユダヤ人>。ユダヤ人は人間以下の生き物(犬以下)である上に死んでもいいものという位置づけになっています。他にもこのような位置づけの人種としてポーランド人、ロシア人もここに挙げられています。同性愛者は<人間であるが、社会的に問題があるもの。>という位置づけにあります。(右上のhomosexuelen)このような社会的位置づけを子供達は学校にて教育されていたようです。

次に、連れてこられた人達が寝起きしていたバラックをご紹介します。

これが彼らのベッド。ただの木の板でできたベッドに藁を詰めた麻袋を置いただけのベッドです。真冬でもこれだけ・・・。このようなベッドが一つの部屋に180台もぎっしりとありました。

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これは食堂。

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奥に見える小さな暖房がこの建物全体の唯一の暖房だったようです。真冬には暖房の取り合いで仲間同士のケンカもしばしば起こっていたと説明されていました。

これは浴室。

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実際はこの洗面台の上に水道があって、皆が体を拭けるようにしていたそうです。シャワーに入るのは10日に一回。その他はただ体を拭くだけ。舎内の衛生状況は最悪だったようです。皆が唯一落ち着いた場所、それはトイレでした。トイレといっても仕切りがあるわけではなく、一つの部屋に便器が並べられているだけ。尊厳など影も形もありません。それでも皆が落ち着いた理由は唯一監視がなかった場所だから・・・。

私がこのような場所に行ったら正常な精神状態が保てるだろうか、いや、むしろ正常じゃない方が楽かもしれないと考えているとこのような展示物がありました。

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これはここに収容されていた人達が誕生日を迎えた仲間に作ったプレゼント。もちろん材料などもらえるはずもないので作業の合間に見つけたゴミや材料を使って作ったもの。このような状況でもお互いに対する気遣いを忘れなかった人達もいるということを見せられ、胸が締め付けられました。

これはこの収容所で犠牲になった子供達の祈念碑。

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ここにはこの収容所で犠牲になった子供達の名前と年齢が1,269人分刻まれています。生後1か月から18歳までと幅がありました。祈念碑の下にはこのようにおもちゃが置かれていました。

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この子供達は、この収容所からポーランドにあるソビボル絶滅収容所へ輸送され、すぐに殺されたそうです。

ここにはナチスドイツの管理室兼事務室も保存されています。その建物の中心にあったこの大きなテーブル。

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実はこれ、人体を解剖するためのテーブルです。テーブルの四方から中心へ彫られているラインは解剖した際に血液がテーブルの中心に流れていき、中心の穴から下に落ちるように設計されているとか・・・・。

これは死体を始末する焼却炉と、焼却炉まで死体を運ぶリアカー・・・・。

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さすがの私も博物館を見学するうちに吐き気と頭痛がしてきました・・・。

これは映画などでよく見る、外に張り巡らされた鉄格子。このように鉄格子を二重にし、その二つの鉄格子の間に溝を作ることで容易に逃亡できないようにしていたようです。また鉄格子に近づきすぎたという理由での射殺も日常茶飯事に行われていたようです。

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現在の博物館の敷地は当時の敷地のほんの少しの部分でしかありません。実はこの博物館の横に散歩道がある森があるのですが、その中に当時の処刑場も保存されているとか。ちょっと私は今回は遠慮させてもらいました。これ以上の刺激は耐えられませんでした。

またこれは当時近くに住む一般市民向けに配布された手紙。

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この森の中にナチス親衛隊(SS)が管理している施設があり、彼らが厳重に警戒しているため、あまり近づかない方がいいと警告している手紙です。

ここには、この収容所で亡くなった人達の名前が掛けられています。

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また来館者がそれぞれの思いを記した場所も。

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私も何か記したかったのですが、衝撃が強すぎて、しかもその時は簡単な言葉で自分の思いを示すのは難しかったので何も残しては来ませんでした。

先ほどこの収容所には政治犯やレジスタンスの人達も連行され、当時の収容所の敷地は現在の敷地よりもかなり広かったと先述しました。この残りの敷地が現在どのように使われているか・・・実はこのようになっております。じゃじゃん!!

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これは現在の刑務所!!!しかも凶悪犯罪者が収容されています。ナチスドイツは政治犯やレジスタンスの人達がユダヤ人に希望を与えないよう、収容所の中心にあるバンカーに隔離していました。そのバンカーは今でも、凶悪犯罪者の中でも最凶悪犯罪者に使用されているそうです・・・・何か微妙・・・・。使えるものは何でも再利用というのはオランダ人精神を表しているけどね・・・

今回はとても重たいテーマでしたが、人類の負の遺産を目の当たりにすることによって未来のために学ぶこともあると思います。もしオランダ旅行中にご興味が沸けば、一度訪れてみてはいかがでしょうか?

国立祈念館 Kamp Vughtへの住所: Lunettenlaan 600, 5263NT Vught

電話番号:073-6566764

ホームページ : www.nmkampvught.nl

開館時間 : 火曜日~金曜日(2月~12月)10時~17時、月曜日(4月~9月)10時~17時、土日、祝日は12時~17時。

入館料:大人 6ユーロ、子供(10歳~17歳)3ユーロ

※子供の入館は10歳以上とお勧めされています。

急行電車(Intercity)で s-Hertogenbosch駅まで行き、そこからバス213番に乗り換えて、バス停<Lunettenlaan Vught>で下車。その後徒歩1分。(目の前に祈念館があります。)

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