ごちそうのための、ごちそう
画像の光景を目にした瞬間、ムラムラと嫉妬心が...。「どうせまた、どこぞのご令嬢のご成婚パーティーか何かの会場に違いないわ。しかも、公道を堂々と私物化しちゃって、ホントに迷惑な話っ」
画像の写真を撮影してからおよそ2時間後、再び同じ場所を(ほとんど興味本位で)通りがかったところ、案の定、テーブル席はすでに半分ほど埋まっていて、純白のユニフォーム姿の給仕がテキパキと動き回っている....が....。
着席しているゲストを見渡してみると、様子がちとチグハグだ。ご令嬢のご一家に招待されたにしては、かなりくたびれたスニーカーを履いた招待客もいるし、すでに食事を終えた人がいると思えば、今ようやく食前酒を口につけたばかりという人もいて、足並みがまるでバラバラなのだ。そして何より、新郎新婦の姿が、無い。
よほど怪訝な顔をしてつっ立っていたのだろう、給仕をしていた若い女性からいきなり声をかけられて狼狽してしまった。....「ご一緒にいかがですか?」
『ごちそうのための、ごちそう』。これが、このイベントのタイトルだった。
低所得者、失業保険受給者らの食生活を支援する目的で開催された、カリタス主催の慈善事業だったのである。紅葉に映える真っ白なテーブルクロスにサービスされたのは、地元の最高級レストランで活躍する有名コックさんたちの名物料理。1枚10ユーロの食券を購入し、ごひいきのコックさんのところで好みの料理を選んだら、あとは席についてごゆっくりご堪能くださいという、なかなか味わえない贅沢企画だ。
また、スポンサーとなったレストランの料理教室で調理の腕を磨いている地元の少年少女たちが、給仕役として大いに奮闘していた姿も光っていた。
後日新聞で読んだのだが、かなり多めに見積もって用意したという料理は、瞬く間に見事完売。この日、紅葉のもとで、数百人にものぼるゲストが舌鼓を打ったごちそうの売り上げ金が、生活困窮者向けに新設される食料品店(食堂)に寄附されるというところから、「みんながごちそうを楽しめるように、ごちそうを食べましょう」という意味で、『ごちそうのための、ごちそう』という洒落たタイトルがついたこともわかった。
せっかく「ご一緒にいかがですか?」と誘ってもらいながら、写真撮影に専心している間に、「料理完売御礼」の札が。あ〜あ、一歩遅かった....
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