ドイツの美容室で10円玉ヘア

公開日 : 2011年02月02日
最終更新 :
筆者 : 柴山 香

先月まで個人経営だった美容室が、あれよあれよとチェーン店網に吸収され、予約不要のディスカウント美容室が大流行りなのは、ここドイツでも同じこと。

昨年11月のブログもじゃもじゃ頭でもご紹介したようなチェーン店は、「予約時間に拘束される」「会計の際、予想した料金より高くて、ギョッ!」という美容院二重苦を一気に解消してくれて、ドイツでも人気上々。

話は変わって、私がドレスデンに住んでいた頃のこと。

旧市街に建つ城館を改装した5ツ星クラスのケンピンスキーホテルが開業して話題になっていたのですが、そのホテル内の美容室に、フランスからカリスマ美容師がやってきたという噂。技術はあってもセンスはゼロのドイツ人美容師にうんざりしていた私は、興味半分で早速予約を取ってみました。

予約当日。

店に入いり、楕円形の大きな鏡の前の席に案内されるや否や、音も無くすーっと私の背後にやってきたのが、全身黒革ファッションのカリスマ美容師殿。グレーがかった長髪に、ボルドー色の極太縁眼鏡。年齢不詳。案外小柄でややメタボ。

ストライプの高級スーツを着せて葉巻を持たせれば、たちまちマフィアに変身しそうなタイプ。

その美容師殿は、挨拶の言葉さえも無く、いきなり私の後頭部をぐわっと両手で包み込み、「あなたの黒髪に、なぜ、色を与えてあげないのぉ〜〜〜〜っ?」と、絶叫(に近い叫び)。

「なぜ、色を...」って、色ならついてるわよ。自分でも今言ったじゃない、「黒」だって。

この第一声以降、カリスマ殿は、「自分の目の前にある、このつまらない黒髪に色を与える」使命に燃えてまっしぐら。一時間半後に美容室を後にした私の元・黒髪はというと、「鋳造したばっかりの、きんきらきんの10円玉」とすっかり同じ色に染め上げられていましたとさ。

かつて美容室で払ったことがないくらいの額の会計を済ませ、客よりはるかに満足気なカリスマ殿に見送られながら、ホテルの正面玄関に向かう10円玉ヘアの私。

正面玄関で優雅に回るガラスの回転ドアを出る際には、紺の制服に身を包んだポーターさんに、「あなたの新しい髪型に乾杯!」なんて、白黒映画に出てきそうな褒め言葉をかけられながら、新10円玉の色が、反射してさらにキンキラ光りそうな太陽の下へと出て行きました。

後日談:

その後しばらくして、カリスマ美容師殿は、「ドイツにゃ飽きた!今度はアフリカ人の髪を変えたい!」と、海越えアフリカ大陸へ渡ってしまったそうな。

「あなたの黒髪に、なぜ、色を与えてあげないのぉ〜〜〜っ?」って、絶叫しているかもしれない、彼の地でも。

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