四季折々の田舎・冬
午後4時。ヒースロー空港に着陸した飛行機の窓の外には、霧にかすむ遠い灯りがぼんやりとうかびあがっているだけで、あたりの風景はすっかり夜の闇にとざされていたのでした。それが、イギリスの冬とのはじめての出会いでした。こんなはずでは……。春から夏までの驚くほど日の長いイギリスしか経験したことのなかったわたしは、ペテンにでもかけられたような思いで飛行機からイギリスの冬へと降りたったのでした。
ですが、よくよく考えてみると、イギリスは北海道よりはるかに北、樺太の北半分くらいの緯度に位置しているわけで、冬の日が極端に短いのは道理なのでした。夏の日が長い分、冬の1日が短いのも道理なのでした。冬のあいだは、夜が明けないうちに日が暮れるような暗くて鬱陶しい日々が多いのですが、島国のうえ、大西洋岸には暖流のメキシコ湾流が北上してきているために、イギリスの冬は、ヨーロッパ大陸の同じ緯度の国々にくらべると気候はずっと温暖です。
そして、田舎の野原に足を踏みいれてみると……。
それでも、夜間は氷点下に冷え込んで、霜のおりることもしばしばです。
雪の降る年もありますが、降ってもさほど積もりません。1年に1度、雪だるまが作れるくらいでしょうか。高い山もないので、スキー場はスコットランドにあるだけです。
霧込む日はかなりあります。
南よりの東の空から顔を見せた冬の日の太陽は中天に駆けのぼることなく、ゆっくりと低い空を西へと移動していきます。
けれども、その同じ太陽が、いったんフリージングフォッグ(Freezing Fog)と呼ばれる凍りついた霧におおわれると……。
たとえ気温は冷え込んでいても、冬の日がさすと、田舎の景色はおだやかな横顔を見せることがあります。
冬の木陰に彩(いろど)りをそえるのは、
楽しくうかれ騒いでクリスマスをすごしたあとは、ひたすら春の訪れが待たれます。日本の冬にくらべると、イギリスの冬はずっと暗くていささか長めではありますが、2月の声を聞くとじょじょに日が長くなっているのが感じられるようになります。
そのころ、野原や道ばた、家々の庭先でも、もう春がそう遠くないことを知らせる使者スノードロップが小さな釣鐘型の可憐な花をもたげはじめるのです。
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