スコットランドの古戦場カローデン

公開日 : 2008年09月13日
最終更新 :

今日は、スコットランドの山岳地帯ハイランド唯一の都市インバネスから東へ8キロの距離にある古戦場カローデン(Culloden)を訪ねて、前々回、ご紹介した美貌の王子ボニー・プリンス・チャーリーのその後をおとどけします。

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その後、ボニー・プリンス・チャーリーはジャコバイトの兵士たちを率いてスコットランドを南下し、首都エディンバラ、さらにイングランド内部へと破竹の勢いで攻めのぼっていったのでしたが、じょじょに形成は逆転し、イギリス政府軍が優勢にたつとスコットランドへの敗退を余儀なくされました。

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こちらが、戦場となったカローデンの原野の現在……。

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カローデンの古戦場は、スコットランドの自然史跡保護団体ナショナルトラストによって管理されています。そのビジターセンター内には、カローデンの戦いの資料が展示され、ガイドツアーやサテライトナビゲーションによる古戦場の案内も行われています。

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ボニー・プリンス・チャーリー率いるジャコバイト軍は武器や装備も十分ではなく、総勢5400人。それに対して、カンバーランド公爵(Duke of Cumberland)率いるイギリス政府軍は、強力な大砲を擁する総勢8800人。その中には、ジャコバイト軍の同胞ハイランドの氏族キャンベル一族の兵士たちもふくまれていたのでした。

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開始から30分で700人ものジャコバイト兵士が政府軍の刃に倒れ、戦いの趨勢(すうせい)は決し、わずか1時間で戦いは終結しました。政府軍の死者は52人でしたが、1200人のジャコバイト兵士が命を落としました。戦いに勝利したカンバーランド公爵は、ジャコバイト軍が降伏してもなお負傷兵の殺戮(さつりく)を続け、カローデンの野はジャコバイトの兵士たちの血で赤くそめられたのでした。

この残虐な殺戮により、その後、カンバーランド公爵は、「ブッチャー(Butcher屠殺屋、肉屋)」の異名をさずけられることになります。また、カローデンの野には、戦死したジャコバイト兵たちの氏族ごとの墓石が建てられました。以下は、その一部です。

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こちらは、ジャコバイト兵の慰霊碑。

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コローデンの戦いの当時からこの地にあって負傷兵が運ばれてきたと言われているコテージ。1912年までこの古戦場を訪れる人のガイドをしていた女性の住居となっていました。

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このように多くのジャコバイト兵たちが命を落としたカローデンの戦いでしたが、ジャコバイト軍を率いたボニー・プリンス・チャーリーは命からがら戦場を逃れ、その後、政府軍の追跡をかわしてハイランドを何か月にもわたって敗走することになるのでした。

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フローラ・マクドナルドは機転のきく女性であったにちがいありません。見目うるわしいボニー・プリンス・チャーリーに女装させ、自分の侍女をよそおわせて政府軍の追っ手の目をあざむいてスコットランド本島からスカイ島へわたるボートに乗せたのでした。このときのエピソードは、「スカイ・ボート・ソング(Skye Boat Song)」と題する歌に歌われています。

フローラ・マクドナルドのはからいによってスカイ島に逃れたボニー・プリンス・チャーリーはスカイ島からフランスへ救出され、2度とイギリスの地を踏むことはありませんでした。フローラ・マクドナルドはボニー・プリンス・チャーリーの逃亡に手を貸した罪を問われ、2年にわたってロンドン塔に幽閉されることになります。一方、ボニー・プリンス・チャーリーも幸福な後半生には恵まれず、アルコール依存症をわずらうなど不遇な晩年をすごし、ローマで67年の生涯を閉じたのでした。

ボニー・プリンス・チャーリーがイギリス王位につくことはなく、思えばイギリスの地ですごした期間もわずか1年ほどだったのでした。にもかかわらず、今でもスコットランドの地で慕われ続けているのは、高貴な血とたぐいまれな容貌をさずけられた王子のドラマチックなエピソードのゆえなのか。それとも、スコットランドの人々が自国のたどってきた歴史の悲哀を王子の生涯に重ねてみるからなのでしょうか。

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