古代ローマ帝国のお風呂チェスターズ
今日は、前々回ご紹介したハドリアヌスの長城(Hadrian's Wall)沿いに点在するローマ時代の遺跡の中から、当時のお風呂ローマン・バスの跡が残っていることで有名なチェスターズ(Chesters)の遺跡をご紹介します。チェスターズは、ハドリアヌスの長城の完成直後、西暦123年に建設された要塞であり、ローマ兵の駐屯地でもあります。
このような田舎のどかな景色の中に横たわるチェスターズ。画像左手の斜面と対岸の間に見えているノースタイン川(River North Tyne)にかかっていた軍用路上の橋の警備のために建設され、イギリスに現存する古代ローマ時代の騎兵隊遺跡の中では、もっとも保存状態のよい遺跡となっています。きっと、こんな田舎にあったことが幸いしたのにちがいありません。
ハドリアヌスの城壁沿いに残っている他のローマ遺跡同様、チェスターズの遺跡も残っているのは石積みのファンデーションのみです。6エーカーの敷地に500名の騎馬兵たちが駐屯していたとのこと。3世紀には、スペインからの傭兵も駐屯していたらしいのですが、北イングランドの冬の寒さと長さ、それに平原や丘を吹き渡る寒風は身にしみたことと思います。
チェスターズは司令部、ホール、中庭、お風呂、寺院、司令官の邸宅などからなり、
古代ローマのお風呂ローマン・バスは、ノースタイン川沿いのこちら。
青いプレートに「バスハウス(BATH – HOUSE)」と書かれているのがご覧いただけるでしょうか。ローマン・バスの建物内には、更衣室、サウナのようなスティームルーム(steam room)、それに、もちろん、浴槽と、水洗トイレも完備していたのでした。古代ローマの人々はきれい好きだったんですね。
それに、信仰心にも篤(あつ)かったようです。皇帝ハドリアヌスも信奉していたディシプリナ(Disciplina)という古代ローマの女神がローマ兵たちによって崇拝されていました。チェスターズに併設されている博物館内には、発掘された遺物の数々が展示されています。
頭部がなくて残念ですが、女神ディシプリナって、こんな感じだったのでは……。
2千年前の時がひっそりと息づいている空間。ガラスケースに入っていないものは、そっと手で触れてみることもできます。
このチェスターズの野原で、ちょっとした事件に遭遇しました。牧草地の金網のフェンスのどこかに子羊がくぐれるくらいのほころびができていたらしく牧草地から双子の子羊が脱走し、フェンスとフェンスの間の袋小路へ迷い込んでしまったのでした。
2匹が声をふり絞って、メェ〜、メェ〜、メェ〜!と大騒動。そこへ、現われたのは、チェスターズの見物に来ていた心優しいイギリス紳士。双子の子羊を落ち着かせるように言葉をかけながら1匹ずつ抱きかかえ、母親の待つフェンス内の牧草地へと返してやったのでした。すると、子羊たちは喜びいさんで母親のもとへまっしぐら。
レスキューは完了し、チェスターズの野原に再びのどかな静寂がもどってきたのでした。めでたしめでたし。とは言え、このあと、くだんのイギリス紳士が子羊の土のついた足にけられて汚れたセーターをハンカチでぬぐっている姿が見受けられたのでしたが……。
ときには、田舎ならではの事件にも遭遇するチェスターズ。お天気のよい日には、ぜひ、ピクニック持参で足をお運びください。アクセス等、詳細については以下のサイトをご参照くださいね。
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