難攻不落の要塞フォートジョージ
今日は、スコットランドのネス湖(Loch Ness)やインヴァネス(Inverness)(ネス湖とインヴァネスについては、こちらをどうぞ)観光の折には、合わせて訪れたいフォートジョージ(Fort George)をご紹介します。
フォートウィリアム(Fort William)やフォートオーガスタス(Fort Augustus)は、スコットランドの山岳地帯にある町や村の名前ですが、フォートジョージ(Fort George)は、1760年代に建てられた実際の要塞(fort)です。しかも、現在でも英国陸軍の兵舎として使用されているので、「現役の史跡」とも言えそうです。スコットランド政府の史跡保護団体ヒストリックスコットランド(Historic Scotland)によって管理され、一般に公開されています (さすがに、現在の兵舎として使用されている建物は見学は不可ですけれどもね) 。
フォートジョージ(Fort George)が建設されたのは、このブログでもご紹介したことのあるカローデンの戦い(Battle of Culloden)後のこと。カローデンの戦いには勝利したものの、スコットランド勢力の再蜂起を懸念したイギリス政府軍はカローデンからわずか12キロの海辺の岬に難攻不落の要塞を建設したのでした。
フォートジョージの命名は、カローデンの戦い当時の国王ジョージ2世(George II)にちなんだものです。また、カローデンの戦いで、ボニー・プリンス・チャーリー(うるわしのチャーリー王子 Bonnie Prince Charlie)率いるスコットランドのジャコバイト軍(Jacobite)を打ち破ったカンバーランド公爵(Duke of Cumberland)は、ジョージ2世の息子にあたります。
海に突き出した岬の広大な敷地の中に、軍事施設や家族用を含む兵舎、支給品や軍需品を売る店、パンやビールの製造所、教会などがあり、42エーカーに及ぶ要塞内部は、まるで小さな町であるかのような様相を呈していました。それぞれの建物の中には当時のもようが再現され、見学できるようになっています。
入場時に手渡されるオーディオガイドでも、詳しい説明を聞くことができます。嬉しいのは、日本語の説明もあること。スコットランドのナショナルトラストによって管理、運営されている古戦場カローデンの史跡の方は、資料館も新しく、古戦場を見て歩くのにサテナビの最新技術も導入されているのですが、わたしたち一家が訪れた時点では、日本語による説明はありませんでした。そのことをフォートジョージのスタッフに告げると、まんざらでもないようすでした。
このフォートジョージ、お天気にも恵まれなかったせいか、わたしたち一家が訪れた日も閑散としていて、観光客の数はカローデンには及ばないと思われます。ですが、お天気のいい日に訪れると、岬の突端からは、のどかなスコットランドの申し分のない海の風景が望めるにちがいありません。運がよければ、紺碧の洋上をイルカが跳ねる姿にもお目にかかれるのだそうです。
それから、そうそう、フォートジョージを訪れたら、一番奥にある教会にまで足を伸ばしてください。こじんまりとしていて、そんなに凝った造りでもないのですが、要塞内のほかの物騒な雰囲気の建物とはちがって、ステンドグラスを透かして差し込んでくるやわらかな日差しが心安らぐ空間を造り出しています。
そして、そのステンドグラスの一枚には、イギリスにあるステンドグラスの中で、唯一だと思われるバグパイプを演奏する天使の姿があるのです。
ところで、カローデンの戦いが、イギリス国内で戦われた最後の戦いとなったために、この広大で堅固な要塞フォートジョージは、建設後、ただの一度も実戦に使用されることなく、今に至っています。ですから、フォートジョージの名前がイギリス戦史に刻まれることはありませんでした。ですが、それは、やはり幸いなことだったと言えるのかもしれませんね。
フォートジョージの詳細やアクセスについては、下記のヒストリックスコットランドのサイトをご覧ください。
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