「1」のつく年は、イギリスの国勢調査

公開日 : 2011年03月25日
最終更新 :

先日、大判で重量感のあるこんな封筒がわが家の所有者宛てに送られてきました。

P1160962x.jpg

「Census(センサス)」とは、国勢調査のこと。イギリスでは、10年ごとに西暦に「1」のつく年に国勢調査が行われています。というわけで、今年2011年は、イギリスの国勢調査の年にあたるのです。国勢調査は、イギリス国民のみならず、わたしのような外国籍の英国在住者も、留学生も、旅行や出張などでイギリスに短期滞在する訪問者も、国勢調査の期間中にイギリス国内にいる人全員を対象にして行われ、その記録は、調査後100年間に渡って保管されます。また、国勢調査の回答は法律で定められていて、回答を怠ったり、虚偽の回答を行ったりすると罰金を科せられます(ということになっています)。

さて、先の封筒を開封すると、32ページに渡る質問用紙と切手不要の返信用封筒、国勢調査の説明書が出てきました。

P1160963x.jpg

説明書きによると、今回の国勢調査は質問用紙の回答欄に記入して返信するほか、個人のアクセスコードでアクセスし、インターネットで回答するのも可能とのこと。さらに、回答は、記述が必要な場合は、英語かウェールズ語で行わねばならないのですが、質問は57の言語で準備されているとのこと。そのコピーは郵送してもらうか、あるは、インターネットからダウンロードすることも可能です。ちなみに、この57の言語の中には、日本語も含まれています。

国勢調査の具体的な質問は、まず世帯についての質問。住宅の種類、大きさ、部屋数、賃貸か持ち家か、所有する車の台数などなど。ちょっと、面白いのは、セントラルヒーティングの燃料について問うもの。回答の選択肢は、セントラルヒーティングはなし、ガス、電気、石油、石炭や薪、その他。さすがセントラルヒーティングが普及している北国イギリスですよね。蛇足ですが、冷房の有無を問う質問はありません。所帯については、合計14項目の質問があります。

世帯についての質問のあと、世帯の構成員個人を対象にした質問が続きます。氏名、性別、生年月日に続いて、これまたイギリスならではだと思うのが、未婚か既婚かについての質問です。その選択肢のバラエティーに富んでいること。未婚、既婚、別居中、離婚、配偶者との死別、同性の配偶者との結婚、同性の配偶者との別居、同性の配偶者との離婚、同性の配偶者との死別。なるほど、これでは、質問用紙が32ページにも及ぶわけですね。

P1160965x.jpg

さらに、別の居住地のある場合の住所、学生か就労しているか、出生地や居住地に関して、健康状態、家族の扶養や被扶養状況。その次に、また面白いのが、「あなたのナショナル・アイデンティティーは?」言い換えると、「あなたは自分を何人だと思っていますか?」。選択肢は、イングランド人、ウェールズ人、スコットランド人、北アイルランド人、イギリス人、その他。その他以外の選択肢は、実際、みんなイギリス人なんですけど、イギリスの人々、人によっては、イギリス人というより民族別のアイデンティティーを持っているってわけなのです。

ちなみに、わたしの夫のナショナル・アイデンティティーも、イギリス人ではなくスコットランド人です。でも、血統的には、四分の三はスコットランド人であるものの、四分の一はアイルランド人なのです。というわけで、血統的にさらに複雑な息子に聞いてみたところ、「ぼくのアイデンティティーは、イングランド人だよ」とのこと。あれれ、でも、息子はイングランド生まれながら、血統的には二分の一が日本人、八分の三がスコットランド人で、八分の一がアイルランド人なわけで、どこをとってもイングランド人であるはずがないのです。どうやら、イギリスのナショナル・アイデンティティーって、本人がどう思っているかによるようです。

P1160969x.jpg

続いての質問は、イギリスでは外国籍でも市民権(国籍)取得が可能なこともあり、自分の人種や民族について、母国語について、英語がどのくらいしゃべれるかについて、宗教について、過去の住所、どの国のパスポートを所持しているか。さらに、取得している学位、その他の学業成績などを含む各種資格、最近の就労の状況や職種、勤務先や通勤についてなどなど。個人に関しては、合計42項目の質問に答えなければなりません。

こうして、ようやく辿り着いた最後のページには、その所帯への宿泊客があった場合の質問が用意されています。その宿泊客の氏名、性別、生年月日、普段の住所を記入します。ですから、たまたまこの国勢調査中にイギリス在住の友人宅に滞在した場合、今後100年間に渡ってイギリスのお役所にイギリス訪問の足跡が残るということになります。

P1160983x.jpg

ところで、この国勢調査に協力しない場合、罰金が科されるとされてはいるのですが、前回、2001年の国勢調査の質問の回収率はわずか60%だったのだそうです。もちろん、わが家はきっちりと回答して提出しました。なもので、回答しないと、実際に罰金が科されるのかどうか知るよしもないわけなのですが、果たして回答しなかった40%もの所帯に罰金が科されたのかどうかはかなりの疑問です。かといって、じゃあ、この機会に、ちょっと試してみようじゃないかという勇気もありません。いささか面倒ではありますが、わが家は、今回の国勢調査も、調査期日の2011年3月27日の状況をきっちりと記入して提出しようと思っています。

今回の記事は、ギブソンみやこがお届けしました。

執筆者別に記事をご覧になりたい場合は、以下のリンクより執筆者別目次のページをご利用ください。

ギブソンみやこによる記事の目次はこちら。ローランズ真弓による記事の目次はこちら

【記載内容について】

「地球の歩き方」ホームページに掲載されている情報は、ご利用の際の状況に適しているか、すべて利用者ご自身の責任で判断していただいたうえでご活用ください。

掲載情報は、できるだけ最新で正確なものを掲載するように努めています。しかし、取材後・掲載後に現地の規則や手続きなど各種情報が変更されることがあります。また解釈に見解の相違が生じることもあります。

本ホームページを利用して生じた損失や不都合などについて、弊社は一切責任を負わないものとします。

※情報修正・更新依頼はこちら

【リンク先の情報について】

「地球の歩き方」ホームページから他のウェブサイトなどへリンクをしている場合があります。

リンク先のコンテンツ情報は弊社が運営管理しているものではありません。

ご利用の際は、すべて利用者ご自身の責任で判断したうえでご活用ください。

弊社では情報の信頼性、その利用によって生じた損失や不都合などについて、一切責任を負わないものとします。