スコットランド、グレンコーの冬山登山

公開日 : 2013年02月15日
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今日は、スコットランドはハイランド地方にあるグレンコーの冬山登山をご紹介します。と言っても、わが家、夏には、毎年、スコットランドの山歩きに出かけるものの、本格的な冬山登山をしたことがありません。そこで、今回の案内役はアウトドアスポーツ愛好家のアンディさんにお願いしました。

アンディさん、先週末も、地元の大学生を引き連れてスコットランドはグレンコーの山登りをしてきたばかりです。グレンコーとは、悲劇の歴史を秘めているために「嘆きの谷」とも呼ばれるスコットランドのハイランド地方にある峡谷であり、映画「ハリー・ポッター」のロケ地ともなっています。グレンコーの詳細や夏の景色については、「悲しくも美しいスコットランドの山と谷」でご紹介しています。

ではでは、アンディさんのガイドにによるグレンコーの冬山登山をお楽しみください。

アンディさんの説明の下に日本語訳をつけました。カッコ内は、わたしの補足説明です。

On the north side of the valley runs a ridge called Aonach Eagach which means "knotched ridge"

グレンコーの北側にあるAonach Eagach(スコットランドの古語ゲール語)。意味は、「V字型に刻まれた尾根」。

From Am Bodach looking west the ridge reaches two Munros of Meall Dearg (red hill) and Sgorr nam Fiannaidh (peak of the Fean warriors). Munroes are the 283 distinct Scotish mountains above 3000 feet. Although this ridge is only 7 km it can take 8-10 hours to cross and is a serious consideration in any season. In winter conditions, perhaps one or two days in the year the weather is suitable. On this day fresh snow has fallen after a long dry period.

スコットランドの山々のうち3000フィートを超える283に及ぶ山の峰々はムンローと呼ばれるが、西側の尾根Am Bodachからムンローの2峰Meall DeargとSgorr nam Fiannaidhに至る。この尾根はほんの7 kmほどだが、踏破は困難で8から10時間を要する。冬の間の天候は悪く踏破可能な天候に恵まれるのは1日か2日しかない。この日は長い乾燥期のあとに新雪が崩れているのが認められた。(アンディさんの夢は、ムンロー283峰を制覇すること)

Sometimes a short rope is useful, here we used the "classic abseil" which means using only the rope and looping it around the body for control to descend a slippery section. Along the ridge the climbing is easy but there is considerable "exposure" as the drop on either side is quite severe.

時として短いロープが役に立つ。この写真は、足もとが滑りやすい場所を体にロープを巻きつけるのみで降りていく「古典的な懸垂下降」。尾根へ登るのは難しくないが、尾根の両脇は切り立っていて要注意。

In the middle of the ridge the minor peak of Stob Corie Leith.

尾根の中間地点。ムンローStob Corie Leithの頂。(冬季、このような青空に恵まれるのはごく稀)

Along the ridge and high above the Glencoe road and the lake at Achnambeithach.

尾根沿い。グレンコーの道路とAchnambeithach湖を見おろす。

At the end of the ridge with clouds gathering the spectacular view is the reward at the end of a hard day. Looking west from Sgorr nam Fiannaidh towads the bridge at Ballachulish where Loch Leven opens into Loch Linnhe. It appears in Harry potter movies as they filmed the scenes at Hagrid's cottage just below here.

尾根の終わり。雲の集まる絶景が困難な1日の報奨となる。Sgorr nam Fiannaidhから西の方向には、湖Loch LevenがLoch Linnheの入り江に注ぎ込むBallachulishの村の橋が望める。映画「ハリー・ポッター」のハグリッドの小屋のロケ地は、このすぐ足もと。

On the South side of the Glencoe valley I took a group of 15 students from Northumbria University for a winter ascent of Bidean nam Bian (pinnacle of the hides)

グレンコーの南側からノーサンブリア大学の学生15人のグループを率いて冬登山を行う。(アンディさんは、スコットランドの山々のほか、湖水地方、ヨークシャーのヒルウォークやケービングなど、アウトドアアクティビティの楽しみを若年層に紹介するために大学生たちを引率することも多い。学生たちと登山者用の宿泊施設に泊まり、パブで地元の音楽や飲み物、郷土料理を楽しむ)

Setting off from the "three sisters" carpark behind is Coire nan Lochan.

「スリーシスターズ(グレンコーの景勝地)」の駐車場から登山開始。背後の山は、Coire nan Lochan。

The rout follows the Coire Gabhail known locally as lost valley and a tricky river crossing,

ルートは、地元では「ロストバリー(失われた谷間)」として知られるCoire Gabhailへ。渡河が困難な川を渡る。

Opens into the lost valley which is hidden from all sides.

「ロストバリー(失われた谷間)」へ視界が開ける。この谷間は四方から完全に隠されている。

(ロストバリーの終わりから雪道へ。ピッケルを雪に突き立てて登る。この場所はまだ雪がやわらかいが、凍てつく岩山が待ち受けている)

At the head of the valley is a steep ascent to the ridge line then following the ridge north west to Bidean. Ice axes at the ready in case of a slip but there the snow is soft and firm.

細長い谷間の終わりから尾根に向けて急な登りが始まり、北西方向Bideanへ向かう。滑らないための用心にアイスアックスを準備するも、雪はや比較的わらかくしっかりとしていて滑りにくい。

On the top the wind has coated the rock in ice

頂上では、風が岩に氷のコートを着せている。

Along the side of Stob Coire nam Beith. It is a difficult course to navigate because the ridge line curves.

Stob Coire nam Beithの側面。尾根がカーブし、歩くコースを見極めるのが困難。

The decent sliding down from Stob coire nam Beith was so much fun many of the students climbed up so they could come down again.

すべり台をすべり降りるかのようなStob coire nam Beithからの下山。あんまり楽しいので、もう一度登って滑り降りる学生たち。

An icy path down to the road

凍りついている小道を下り、道路へ。

グレンコーをはじめとするスコットランドのムンローの峰々、標高はわずか千メートルあまりです。ただし、スコットランドのハイランド地方は古代の氷河で削られて形成された地形のため山肌はU字の様相をていして見あげるばかりの急勾配。夏でも、気候が急変し、遭難者や事故死者を出すことがあります。とくに冬の気候は厳しく、この冬もグレンコーで雪崩に巻き込まれ、4人の登山者が命を落としました。アンディさんも、雪崩にあったことがあるとのこと。標高だけを考えると、そう高くないスコットランドの山々ですが、あなどるなかれ。冬山登山のさいには、スコットランドの冬山をよく知る人のガイドやアドバイスが不可欠のようです。冬山登山どころか本格的な登山の経験もないわたし、スコットランドの冬山に挑むなどというだいそれたことは考えないのですが、「ハリー・ポッター」の映画に登場する神秘的な美しさをまとったグレンコーの雪景色をながめにいつか冬のグレンコーを訪れてみたいなあと思っています。

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