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ドイツ/ハノーファー特派員ブログ 旧特派員 田口 理穂

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2012年2月29日

ヴルフ大統領辞任について


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ヴルフ大統領辞任について

クリスチアン・ヴルフ連邦大統領(52歳)が2月17日、辞任しました。ドイツでは大統領は実務を担うというより、国民の良心を代表する役割を背負っています。王族のいないドイツで大統領は、いわば日本の天皇と近いかもしれません。第二次世界大戦から40年たった1985年、ワイツゼッカー大統領がナチスの罪と国民の責任について言及して国民に指針を見せましたが、そのような役割が求められています。ですから、国民の手本でなくなれば、大統領を務めることはできません。


ヴルフは弁護士から政治家となり、2003年より2010年までハノーファーで知事をしていました。その知事時代に企業家からの便宜を受けたとの容疑が高まり、今回辞任を余儀なくされました。容疑について報道をしようとした新聞社に、阻止の電話をしたことも批判の対象となりました。


しかしながら、ヴルフは国民には人気があったようです。辞任前のアンケートでは多くの人が「ヴルフは不正をしたと思う」「正直なことをいっていない」と考えていたにもかかわらず、「ヴルフに親近感を覚える」「大統領に留まるべき」という意見が優勢でした。「人間なんだから間違いはある。自分だって、もし低利子で金を貸してくれる友人がいたら借りただろう」と擁護の声もありました。メルケル首相をはじめ世論が見方してくれていると思っていたのでしょうか。最後まで「間違いはおかしたが、不正はしていない」との立場を崩しませんでした。


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ブルフとガウクについて報道した新聞記事


ヴルフは2010年6月、アンゲラ・メルケル首相(キリスト教民主同盟CDU)の支持により大統領に選出されました。社会民主党(SPD)と緑の党は、牧師で公民運動信望者のヨアヒム・ガウク(72歳)を推薦しましたが、ヴルフに敗れました。ガウクは旧東ドイツの出身で、同じく東出身のメルケル首相と旧知の仲。2010年に大統領選に担ぎ出されたとき「メルケル首相からの依頼かと思った」と話したほど。今回はSPDと緑の党はもちろん、CDUや自由民主党(FDP)もガウクを推薦しており、次期大統領間違いなしといわれています。


ガウクが11歳だった1951年、父親がスパイ容疑でシベリアへ送られ、4年後に帰ってきたら人が変わっていたといいます。1980年代、まだ東西の壁がそびえていたころ4人の子のうち3人が西ドイツに渡り、今生の別れを覚悟するという体験もしました。東西ドイツの壁崩壊にも寄与するなど、民主主義を求めて妥協なしの活動を展開。壁崩壊後は旧東ドイツ政府公安省解体の責任者となりました。


そもそもヴルフが大統領になったこと自体に無理があったのかもしれません。弁護士や経済界出身の政治家はどうしてもつながりを断ち切れない。同じく弁護士でハノーファーで知事をしていた前首相のゲーハルト・シュレーダーは、首相をやめてからロシア系企業で役員をし、家を新築したとききます。大統領は最初から、学問や宗教など別の分野から登用した方が意図にかなうのかもしれません。


ちなみにヴルフは知事時代、当時シングルマザーだった現在の妻と知り合いました。前妻と離婚する以前から堂々と公の場に恋人を同伴していましたが、知事に再選。2008 年に結婚し、男の子をもうけました。ガウクは妻と21年前から別居していますが、離婚はしていません。12年前から20歳年下のジャーナリストの恋人がおり、大統領になったら恋人と大統領官邸に入居の予定です。ガウクは「急いで結婚することはありえない。将来もするとは限らない」との弁。シュレーダーも4回結婚しましたが、首相になりました。ドイツではプライベートと仕事を分けるので、不倫しても離婚しても選挙に影響しません。しかし大統領は国民にモラルや規律を伝える役割があるため、ガウクに対して離婚を迫る圧力が高まりつつあるようです。

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カテゴリー 生活・習慣・マナー
2012年2月29日
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    • 特派員プロフィール
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      ハノーファー特派員
      田口 理穂
      ジャーナリスト、裁判所公認ドイツ語通訳・翻訳士。1996年よりハノーファー在住。州立ハノーファー大学社会学部卒業。ドイツの環境政策や生活事情についての執筆のほか、視察やテレビ局のコーディネートや通訳も。著書に「市民がつくった電力会社 ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命」(大月書店)、共著に「『お手本の国』のウソ」「ニッポンの評判」(ともに新潮新書)。質実剛健、けれど愛すべきドイツの魅力についてご紹介します。

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