客引き戦争

公開日 : 1999年09月29日
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仕事でスルタンアフメットのあるホテルを訪れた。トルコのホテルには1から5の星による評価のほかに、Sというクラスがある。スペシャルライセンスクラス、つまり歴史的な価値のある建物を利用していたり、そういう雰囲気を出すように新に作ってあったり...ちょっと凝ったプチホテルといったイメージの所が多い。有名なぺラパレスやイエシルエヴ、カッパドキアのアタマンホテルなどがその代表格。値段は独特の価値基準によってピンキリで、1室ニ、三百ドルを超えるホテルからバックパッカーにも手の届くホテルまである。今日、訪れたのもそんなSクラスのホテルの一つだ。星で言うなら3、5星くらいか。歩いてまわる観光のための立地としては最高。シーズンによるが2人で朝食付き50―70$くらいのホテルである。さて、仕事が終わりレセプションにトルコ語で別れを告げると、レセプションの隣でずっとガイドブックを呼んでいた日本人に話しかけられた。「ガイドさんですか?」エフェソスへのバスの時間を待っているらしい。「こちらに住んでらっしゃるんですか?トルコって嫌な所ですね、イスタンブール以外もそうなのかしら...」私は好きで住んでいるから、彼女たちのこの言葉にちょっとビックリした。そしてすぐに何があったか見当が付いた。彼女たちは、毎日まとわり着くスルタンアフメットの絨毯屋に辟易してしまったのだ。そしてこの地区をトルコの全てと勘違いしている。スルタンアフメットは観光地区の中心。数多くの土産物屋がお客さんを呼び込もうと必死だ。田舎から出てきたばかりの青年たちの就職先はそうそうないから、こういった土産物屋で売れたらコミッションをもらうという方式で働いてる人はたくさんいる。売れなきゃ給料はゼロなのだ。彼らは外国語を覚えるのも必死。イスラム教的文化から言えば、買い物は友達付き合いから...みたいな所がある。友達になる為にはまず会話、会話には共通の言語。加えて国民性として、おせっかいだから、外国人と見れば興味本意と仕事を兼ねて軒並み話しかけてくる。まあ、話してみればそんなに悪い奴等ではないと私は実感するのだけど、「どうせお金が目当てなんでしょっ」みたいに肩怒らせて通り抜けられると彼らだっていい気はしない。お互いに気まずいだろう。こんなことで、トルコを嫌いになってほしくはない。例えば一回新市街に行ってみて。あなたに見向きもしない、外国語で話しかけもしない、恋人とデートして、友達と映画見て、夕食を家族と取る為にスーツ姿で道を急ぐ...普通の生活を送るトルコ人がたくさんいる。スルタンアフメットが異常だとはいわない。でも彼女たちが見たのは、トルコ人のほんの一部の人々の一面でしかない。ちょっと裏技で、批判はあるかもしれないけど、私は1つ行き付けの絨毯屋を作る方が賢いのではと思う。彼らには最初に捕まえた人のものみたいな暗黙の了解があるから、1つに出入りするようになるととたんに他の客引きに声をかけられることは少なくなる。その方が安心して、落ち着いて本当の街を楽しめるではないか。心配なら、地元在住の日本人が使う絨毯屋を紹介してもらうっていう手もある。一回限りの観光客ではない在住者が使う所は、ある程度決まっている。「絨毯を買う気なんかないから」という人は多いだろう。別に絨毯屋に出入りしたからって買うとは限らない。でも絨毯や絵皿は確かに、トルコの文化の美しい結晶の一つではあるから、見ることは悪いことではないと思う。彼女たちはその後トルコを少しは好きになってくれただろうか?絨毯の美しさにもトルコ人のホスピタリティにも、「騙されないぞ」と目をつぶって駆け抜けてはしまわなかったことを願う。

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