リトル・プリンス

公開日 : 2001年06月28日
最終更新 :

夜11時になるというのに、表から子供の嬌声が聞こえてくる。学校が休みになり、朝早起きする必要のなくなった子供たちが、夕涼みする大人たちに見守られながらサッカーに興じているのだ。なんたって日が暮れるのが9時だから、夕食も必然的に遅くなる。11時なんて、食後の団欒といった時間のようだ。

さて、夏休みというともうひとつの風物詩がある。この暑いのに、ふわふわの羽飾りのついたマント、手には釈、帽子から洋服まできらびやかな白尽くめの衣装を着た小さな王子様たちだ。母親に手を引かれて、町を闊歩する。お金持ちの子供になるとクルーザーを借り切ったパーティになったり、花火が打ち上げられたりする。

夏は結婚式も多いシーズンなので、私はトルコにきた当初、この子供たちは結婚式で大事な役割を果たすのだろうと思っていた。ブライドメイドの男の子版かぁ、さすがイスラムの国、女はうちうちで事を進め、男が表を練り歩くのねなどど勝手な想像をしていたものである。だが、それは大きなまちがい。道路を横断する幕にクリニックの広告が出ている。「経済的で高度な技術のスンネット!」

スンネット。割礼式なのである。

イスラム教の男にとっては大変大事な手術を受ける、そのお祝いとご近所への報告のために王子様たちは着飾って闊歩なさっているのである。スンネットを施す時期は、特に何歳と決まっているわけではないが、だいたい小学校にあがる6歳までに済ませるようだ。ただ兄弟がいる場合、お兄ちゃんといっしょに赤ちゃんの間に済ませたり、弟にあわせてお兄ちゃんが少し大きくなるまで待ったりと各家庭いろいろである。スンネットを済ませてゆりかごの中で眠る赤ちゃんを見たことがあるが、股間に貼られた消毒綿とばってんのバンソウコウがなんともかわいくて、くすくす笑ってしまう。小さい年齢で受けるほど、痛みはないのだそうで、麻酔もしないことが多いらしい。

季節的にも特に夏と決まっているわけではないのだが、幼稚園も学校も休みでのんびりした気分なのか、クリニックがバカンスに出かけた患者たちの穴を埋めるべく、スンネットキャンペーンを張るからなのか、この時期に特に多い。おそらくは自分が今から何をされるかよくわかっていない、王子様たちのはにかんだ笑顔はかわいい。

しかしうちの旦那はじめ、イスラム教以外の男性陣は身につまされて(?)王子様たちを見かけると、なんだか眉間にしわが寄ってしまうようではある。

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兄弟そろってお披露目

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