黒い爪

公開日 : 2002年11月23日
最終更新 :

早期選挙が行われて、AKPという新しい政党が圧倒的な勝利を収めた。占めた議席数は1党で法律を変えられるという数値に限りなく近い。現在の党首は総理大臣にはなれないのだが、そのあたりの制限も数年のうちに変えられてしまうのではという友人も多い。

今回は早期選挙だと言うので個人名は一切書かれていない紙が配られた。政党のマークの下に丸が印刷されていて、そこにEVET(はい)という判子を押して、投票箱に入れるのだそうだ。投票率などと言う言葉は聞かれない。投票に行かなければ罰があるという。皆、投票するのが当然だからだ。投票をすると手にインクを落とされる。この人は投票しましたよと言う証拠だ。落ちにくいようにと爪の部分に落とすことが多いという。選挙から2週間以上が過ぎたと言うのに、友人の爪と皮膚の奥深くに入りこんだインクの染みはいまだ落ちきらない。木の簡単な作りの投票箱といい、なんだか原始的な感じもするが、開票を見守るトルコ人たちの真剣さには、選挙のたびに感心させられる。

地方色もはっきりしている。しかし、今回は牙城といわれた都市でも競り負けた政党が目だった。全国区の選挙なのだが、地方別の開票結果が速報でどんどん流される。偽票を投じた人が逮捕されたというニュースも伝わる。ブルサやイズミールの結果には愕いたとまわりのトルコ人たちが言う。そして、政党の多さにも。今回の選挙の特徴は、新結成された党の多さだ。それだけの多くの選択肢にもかかわらず、入れたい党なんてなかったという友人たちは何処に入れたのだろうか。「私はエジェビットよ。彼だけが戦争には反対だと明言したわ」...ふーむ。何人に聞いても私の周りにはAKPに票を投じた人がいないのだが...?

とにかく電球マークの新党AKPは、トルコの新聞によると国内海外ともに大きな期待と共に迎えられ、そのせいかドルが急激に落ち始めた。インフレの激しいトルコでは、外貨特にUSドルとユーロの動向は、一般市民の日々の一大ニュースの一つである。信用度の低いトルコリラを外貨に変える事によってリスクヘッジを計っている人が多いからである。ドルはトルコリラに対し、昨日よりは今日、今日よりは明日と上がっていくのが基本的な動きだと認識されている中、選挙後のドルは大きく落ちた。1ドル=1670000TL(トルコリラ)ラインまで行っていたのが1580000TLまで下がるという大幅な下げである。頭を掠めるのは、過去安定し始めたかと思ったころにいつも、ガタンとやってきた経済危機。自国通貨が安定し始めると不安を感じるという人も少なくなく、トルコ経済に対する国民の信頼はまだまだ薄い。さて、新党AKP、いったいどうなっていくのか。

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