虹色階段イスタンブール新名所

公開日 : 2013年09月29日
最終更新 :

フンドゥックルの虹色階段には、今日もたくさんの人が記念撮影に訪れます。

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事の起こりはこの地域に住む一人のおじいさんでした。なぜか市政にもほおっておかれて、ひび割れて古く、外に飛び出た配水管やごみや尿のにおいばかりが充満していたと言う何の変哲もない、坂の町イスタンブル名物ともいえる階段。自分で何とかできないかと考えた彼は、足が触れない階段一段一段のの地面に対し垂直になった部分を、自分で買ったペンキを使って虹色に塗ったのです。カラフルな階段はグレーの景色を一変させ、周囲の人にも大変好評だったのですが・・・

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ある夜、これがまた再びこっそりグレーに塗り替えられてしまったのです。

夜に塗り替えられたことから、当初誰がいつやったのかわからないという報道もありました。が、一般市民は市当局がやったのだとわかっていました。いわゆる「公共物を汚した」ことになるから、再び元に戻されてしまったのです。でもここには何の政治的主張もなく、自分の周りの環境を自分でよくしようとする事由さえ迫害するのかという意見や、美しい階段をわざわざまた灰色に塗りつぶすなんてあまりにも無粋すぎるという意見が殺到。今度は市民がお互いに声を掛け合って、みんなであちこちの階段を虹色に塗り始めたのです。この動きはイスタンブールだけではなく、全国に飛び火。トルコのあちこちに虹色階段が出現しました。

ただし、9月1日が世界平和の日だったこともあるのですが、虹色階段はただの美しい階段を超えて、いろいろな主張の象徴ともなりはじめました。平和のために手に手を!といったメッセージやマークが書き込まれるような例もたくさん見つけられるようになりました。記念撮影にやってきたウェディングドレス姿の花嫁は、「塗り残されているところがあったら塗ろうと思ってペンキもはけも持ってきたけど、すべてきれいに塗られているわね。なぜここで撮影するのかって?ここはもはや政府に対する反抗運動の象徴となったからよ。この国には自由が全くないわけじゃないけど、足りない。自由が迫害されているからこそ、人々は自分たちの階段をきれいに塗っただけで、警察に拘束されたりしてしまうのよ」ゲジ公園での反政府運動のシンボルであったペンギンを抱えて写真を撮る新婚夫婦の主張は明白です。

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花嫁が言うように、虹色階段の発端となったフンドゥックルなどがあるベイオウル区長などは、再度灰色に塗られたことへのこの市民の反発に軟化の姿勢。もう一回灰色に塗るということはされていないのですが、県外ではインターネットで仲間を募り、階段を塗ろうとしたグループが警察に拘束されるような事件にも発展。環境美化の市民活動と反政府活動との境目はあいまいで、ただきれいな階段の前で写真を撮りたい人もいれば、このカップルのように明確な主張をもってやってくる人もいます。

ゲジ公園の問題は海外から見るとまるで解決したかのように言われたりもするのだけれど、あまりにも大きい武力の差に沈静化したように見えているだけで、何も解決したようには思えません。ただ市民は弾圧されてもされてもエスプリで返したりしていて、週刊誌にゲジアートといった別冊がついたり、風刺漫画雑誌がゲジ特集号を出したり、元美大生の私には大変興味深いものがいろいろありますねー。

イスタンブール新名所虹色階段。市民の心意気の前で記念撮影はいかが。

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