因幡堂 - 実在する狂言の舞台

公開日 : 2008年04月30日
最終更新 :
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因幡堂は名前がそのまま町名になった下京区因幡堂町(烏丸高辻と烏丸松原の間の東側)にある真言宗の寺院です。薬師如来(因幡薬師 *)を本尊とし、近くにあった五条院の御所に住んでいた高倉天皇により「平等寺」と命名されましたが、因幡堂と呼ぶ方が一般的です。

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古くは京都の人々に大変親しまれた寺のようで、狂言の「因幡堂」「鬼瓦」「仏師」「六地蔵」「金津(かなづ。金津地蔵とも)」などの舞台となっており、因幡堂と狂言は、特に作品の数などからして、大蔵流 ** とは浅からぬ縁があったようです。当日の演目は「因幡堂」と「貰婿(もらいむこ)」の2曲で、人間国宝の茂山千作氏を始めとする大蔵流・茂山家一門が演じました。

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江戸時代の頃、因幡堂には広大な境内があったようですが、時代を経た現在の境内はとても狭く、舞台は参拝口を塞いで本堂前に造られ、観客席は本堂の軒下から本堂の中にまで200席ほどしか設けることができません。とは言え、舞台が本堂を向いているため、登場人物が薬師如来を礼拝する場面などは、まさにその通りに演じられることになります。

現在、狂言は一般に能楽堂などの屋内の能舞台で演じられますが、今のような舞台の形式が確立する以前は神社の舞殿や屋外の仮設の舞台などで演じられていました。そんな当時の雰囲気を想像しながら見物してきましたが、解説や演者へのインタビューなども含めての楽しい2時間でした。

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* 因幡薬師 : 神事で因幡国(今の鳥取県)に赴いた橘行平(たちばなのゆきひら。平安時代の貴族)が夢のお告げで海中から引き上げて供養したという薬師如来の像。この像は行平の帰京後、後を追って飛来したという。因幡国の薬師なのでこう呼ぶ。長野・善光寺の阿弥陀如来、京都嵯峨・清涼寺の釈迦如来とともに「日本三如来」の一。

** 大蔵流 : 狂言の流派には大蔵、鷺、和泉の三流があったが、鷺流は明治時代に廃絶した。現在は大蔵、和泉の二流のみ。

■各曲の超あらすじ

因幡堂 : 大酒呑みの女房を持った男が里帰りした女房に離縁状を送りつけ、新たな妻乞い祈願のため因幡堂に籠る。立腹して帰ってきた女房が薬師になりすまし、男にお告げを下す。男が告げられた場所に行くと衣を被った女がいる。男は女を連れ帰り祝言の盃を交わすが、無理やり取った衣の下から現れた顔を見てびっくり仰天。

鬼瓦 : 都に長期滞在した大名が訴訟が叶ったお礼に因幡堂に詣でる。御堂の鬼瓦が妻に似ているので懐かしがって泣いてしまうが、従者(太郎冠者)にもうすぐ会えると言って慰められる。

因みに現在の因幡堂の棟の瓦は鬼の面ではありません。

仏師 : 男が仏像を買いに都に来るが、仏師になりすました「すっぱ」(詐欺師)にだまされる。仏像の受け取り場所が因幡堂。次の曲ともすっぱやその仲間が仏像になりすますが、男から細工にクレームを付けられ嘘がばれる。

六地蔵 : 仏師と同工。六体の地蔵の受け取り場所がやはり因幡堂。

金津 : 地蔵を買いに都に来た男が、仏師を名乗るすっぱにだまされてその子供を郷里の金津に連れ帰る。地蔵は酒や饅頭を要求したり居眠りしたり。人々は生き地蔵だと大喜びする。

この曲でも因幡堂が地蔵の受け取り場所に指定される。金津は旧福井県坂井郡金津町。現あわら市。

貰婿 : 酒癖の悪い男が酔った勢いで女房を家から追い出してしまう。女房は子供を置いたまま実家に帰る。翌日、男が子供を出しにして女房を連れ戻しに来るが、舅と喧嘩になる。結局、女房は男の味方をし、一緒に帰って行く。

因幡堂とは無関係だが、昨日の上演では舅(茂山千作)による曲の最後の台詞「来年から祭には呼ばぬぞよ」を「来年から因幡薬師の祭には呼ばぬぞよ」として大いに受けた。

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