鞍馬から貴船へ 神秘の森を散策 ‐京都の歩き方‐

公開日 : 2009年04月21日
最終更新 :
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12月に鞍馬寺に行き、鞍馬山を散策したものの貴船を目前にして引き返したため、何か遣り残した感じがしていました。地球の歩き方ムック『京都の歩き方』にも取り上げられているので(P32 貴船・鞍馬 神秘の森を散策)、今回は貴船行きも計画に含め、18日(土)に再度、鞍馬に向かいました。

(画像は京都一周トレイルの地図「北山東部」から。中央の緑色の線が鞍馬山の散策コース)

鞍馬は大分遠いというイメージがあってなかなか足が向かなかったのですが、出町から叡山電鉄鞍馬線で30分(410円)、市の中心部からは1時間という速さで行くことができます。鞍馬山には鞍馬寺の仁王門と貴船側にある西門とを結んで史跡を巡る散策コースがあります。山頂(570メートル)は通りませんが、南北に連なる尾根を越える全長約2.5キロ、高低差200数十メートルのハイキングコースです。

コース未消化という理由と、また西門から上ったという人から、上りばかりで大変エラかった!と聞いていたので、『京都の歩き方』では貴船から鞍馬に向かうコースを紹介していますが、私は仁王門から西門へ向かう逆のルートを取りました。西門は言うなれば裏口。裏から入って表から出るというのもどんなものかと思ったのもこの道順を取った理由の一つです。

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坐れたらうれしい叡山電車の展望車で鞍馬駅に着くと、巨大な天狗の面が待ち構えています。鞍馬寺に入るには拝観料ならぬ「愛山料」200円が必要です。ここには宗教法人が運営するものとしては唯一の、そして恐らく軌道長が日本で最短(207メートル)のケーブルカー(鞍馬山鋼索鉄道)がありますが、営利目的ではないということで、こちらも運賃ではなく100円の「寄進」で乗ることができます。

何と言っても牛若丸(源義経)と天狗で名高い鞍馬寺は8世紀後半の奈良時代に開創され、平安遷都後は王城の北方守護を担うことになりました。当初は律宗でしたが、百数十年後に真言宗となり、平安中期以降は昭和に至るまで天台宗の仏教寺院でした。しかし現在の鞍馬寺は仏教寺院ではありません。歴史の流れの中で落剥してきた寺の復興を図るため、昭和22年に新たに「鞍馬弘教(こうきょう)」を立教開宗し、同24年に天台宗を離脱。名称も鞍馬弘教総本山鞍馬寺となりました。本尊は「尊天」。尊天とは「宇宙生命、宇宙エネルギー」のことであり、毘沙門天王、千手観世音菩薩、護法魔王尊の三身(さんじん)が一体となったもの。あらゆる相(すがた)を取って顕現するとされます。鞍馬弘教は世界中のあらゆる差異を乗り越えた「統一的世界観実体集教」だそうです。

同寺の歴史解説に、鞍馬山には650万年前(現生人類の誕生前!)に金星から人類救済の使命を帯びた護法魔王尊が天降ってきた、などとありますが、このように教えられるとスペースファンタジーの始まりかと、ちょっとワクワクしませんか?

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仁王門から山上の本殿金堂までは歩くのがお薦めです。ケーブルカーなどなかった時代には貴人たちも歩いたという参道で、九十九折(つづらおり)とよばれる坂道はそれほどきつくはありません。広い坂道を見上げると、さほど高くない所に「鞍馬の火祭」で有名な由岐神社が見えます。現在は鞍馬町の氏神ですが、もとは鞍馬寺の鎮守社で豊臣秀頼が再建したという拝殿は重要文化財です。参道の石段で左右に二分された造りは「割り拝殿」、または「荷(にない)拝殿」といわれます。ここから少し上ると牛若丸が住んでいたという坊跡に建てられた義経公供養塔があり、その先にも見所が多くあります。

昨年は歩いて上ったので、今回はケーブルカーで上りました。

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土産物店でいい時に来たと言われたように、多宝塔や本堂金堂前は桜が満開でした。本堂金堂から見えるものは比叡山など山ばかりですが、眺めは良く、何より広々としていて気持がいいです。鐘楼で鐘を一つ撞いたあと霊宝殿(入館料200円)へ。重文の毘沙門天立像や聖(しょう)観音菩薩立像はもとより、歳月を経て角が丸まってしまった平安時代末期の石塔(国宝)や埋経(まいきょう)の遺物(同)には目を奪われました。正に平安時代から届いたタイムカプセルの中身のようです。この施設は別名を鞍馬山博物館といい、鞍馬山の地質に関するものや植物・昆虫・きのこの標本など数多くの展示物があり、改めてゆっくり見に行きたい所です。

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霊宝殿を過ぎると奥の院へ向かう山道が始まります。ここから5〜6分歩けば義経の背比べ石に達します。そしてそこがコースの最高点(490メートルほど?)です。背比べ石とは牛若丸が奥州藤原氏のもとへ下る時に名残を惜しんで背を比べたといわれる石で、高さは120〜130センチ位。コースを左に外れ、地上に木の根が露出しているためそう呼ばれる木の根道を100メートルあまり進むと大杉権現社があり、付近一帯は大杉苑瞑想道場です。

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背比べ石のある場所から先にもう上りはありません。5分ほど行くと不動堂と義経堂がある僧正が谷です。不動堂には伝教大師(最澄)が彫ったとされる不動明王が奉安され、義経堂は不動堂の向かい、杉の大木の根元に建っています。

この辺りに来るといつも思うのは、山中で一夜を明かしてみたいということ。天狗や魔王が出るか出ないかはともかくとして、闇の中に潜んでいれば非日常的な何かを体験できそうな気がするからです。

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ここから木の根道を7〜8分歩くと金星から来た魔王を祀ったとされる奥の院魔王殿に着きます。木の根が露出するのは地下に岩盤があるためだそうで、歩きにくいのは言うまでもないことですが、木からすれば踏まないでくれ!と言いたいところでしょう。一帯は極相林(植物群落の遷移が長期間安定した状態の森林)で鞍馬山自然博物苑とされ、太古は海の底だったようで、地質学的、古生物学的にも興味溢れる所のようです。魔王殿の中の掲示よると、寺から許可を取れば参籠ができるらしいです。

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西門が近くなると、眼下に道路と行き交う人たち、そして走り抜ける車が見え始めます。門を出て貴船川に架かる橋を渡ると突然、別世界に飛び出たような感覚。さっきまでとは異質な光景。貴船神社の朱塗りの鳥居、店先の真赤な毛氈、そして行楽客の一団。なんという場面転換! カフカか安部公房の作品の登場人物にでもなったようで、 戸惑いを覚えました。

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貴船は貴船川に沿った狭い谷あいの町ですが、行楽地特有の雰囲気があります。貴船川の清流の上には床が敷かれ始め、料理店の川床の準備が始まっていました。貴船神社は水の神様です。神が乗って来た船を石を積んで覆ったという船形石のある奥宮にも、縁結びの神を祀る結社(ゆいのやしろ)にも行ってみましたが、道路が一本しかないので初めてでも迷いようがありませんでした。

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貴船では食事をするつもりでしたが夕方の半端な時間帯になってしまい、歩いている内にバスが来たのが目に入り、見ると終バスだったので飛び乗って、空きっ腹のまま帰ってきてしまいました。残念!

比較的楽に歩けて食事も買い物も温泉も楽しみたいなら、鞍馬から貴船に回って食事をし、貴船口から叡電に乗って鞍馬に戻り(1駅2分、200円)、買い物と温泉、というのはいかがでしょうか?

※ 写真の一部に昨年撮影のものがあります。

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