「支配からの卒業」記念の日々 フィリピンの祝祭日

公開日 : 2014年01月31日
最終更新 :
筆者 : Okada M.A.

もう、ちょっと昔になりますが、若くして亡くなった尾崎豊さんの初期の名曲に

「卒業」という歌があります。その歌詞の中に「~支配からの卒業~」という有名な

フレーズがありますが、このフレーズこそがフィリピンの祝日を表現するのに、

実はピッタリなのです。

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写真1: ホセ・リサール、旧1ペソ札

毎年12月30日はホセ・リサールの記念日。抵抗運動の父として、

今だにカリスマ的な人気を誇る。アイドル的な人気もあって、

Tシャツなどのグッズや、リサール・ブランドのブティックまで存在する。

キューバのチェ・ゲバラや日本の坂本龍馬に似た様な状況。

日本に滞在していたこともあり、日本人女性の"おせいさん"とのロマンスは有名。

フィリピンの、南国のトロピカルなイメージや、フィリピノ・ホスピタリティに代表される

母性的な側面、国民のノンビリした印象からは、海の記念日や敬老の日や平和記念日の

ような祝日を持っているような印象なのですが、全くそれとはうらはらに、

実は抵抗や戦いの記念日ばかりなのです。

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写真2: KKK(カティプナン)モニュメント

ホセ・リサールを記念したリサール公園のそばにある抵抗運動結社「カティプナン」のモニュメント。

ホセ・リサールの意思を次いだアンドレス・ボニファシオがモチーフになっている。

フィリピン国旗の真ん中の黄色い太陽のオリジナルはこのカティプナンの旗に由来する。

写真にも見れるように今もデモ隊のメッカ。

今年、2014年の国民のフィリピンの祝日は以下のように発表されました。

1月: 1日(水) 元旦、31日(金)旧正月

2月: 25日(火) ピープル・パワー記念日

4月: 9日(水) 勇者の日、17日(木) 聖木曜日、18日(金) 聖金曜日、19日(土) 聖土曜日

5月: 1日(木) メーデー

6月: 12日(木) 独立記念日

7月: 28日(月) イスラム断食明け祭

8月: 21日(木) ニノイ・アキノ・デー、25日(月) 英雄の日

10月: 5日(日) メッカ巡礼祭

11月: 1日(土) 万聖節、2日(日) 死者の記念日、30日(日) ボニファシオ・デー

12月: 24日(水)クリスマス・イブ、25日(木)クリスマス、26日(金)特別休日、30日(火)リサール記念日、31日(水) 大晦日

この中から、世界の他の国と同様の慣例や宗教的な祝休日を別にして、

フィリピン独自の祝日だけ抜き出すと以下の様になります。

2月25日(火)ピープル・パワー記念日(エドサ革命記念日)/ 1986 EDSA Revolution

4月9日(水) 勇者の日 / Bataan and Corregidor Day

6月12日(木) 独立記念日 / Independence Day

8月21日(木) ニノイ・アキノ・デー /Ninoy Aquino Day

8月25日(月) 英雄の日 / National Heroe's Day

11月30日(日) ボニファシオ・デー(ボニファシオ生誕記念日) / Bonifacio Day

12月30日(火) リサール記念日 / Rizal Day

さて、ズラリと並んだこれらの祝日の全てが、なんと「支配からの卒業」記念日

=外国による支配、または独裁による支配への抵抗と革命の歴史そのものとなっているのです。

その歴史と祝日とは、

1543年: ビリャロボス率いるスペイン船団が サマール島・レイテ島に上陸、この島々を当時のフェリペ皇太子

(後のフェリペ2世)にちなんでフェリペナス諸島と命名し、スペインの支配が始まる。

1892年: 抵抗運動の父ホセ・リサールが「フィリピン民族同盟」を結成するが、スペインに対する

反逆罪で結成間もなく逮捕され、弾圧も強化されていった。

1896年: ホセ・リサール逮捕を機に、 アンドレス・ボニファシオ らによって秘密結社の

「カティプナン」が結成された。

急進的な組織のカティプナンは武力蜂起を決行。それに対してスペイン政府はホセ・リサールを処刑し、

本国から 軍隊を派遣して革命鎮圧に出た。

この史実の記念日:

12月30日(火)リサール記念日 / Rizal Day

11月30日(日)ボニファシオ・デー(ボニファシオ生誕記念日)/Bonifacio day

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写真3: 1ペソ硬貨

プライマルの「1」は始まりを意味するのでしょう。

写真1の紙幣と同様、常に1ペソ貨幣にはホセ・リサールが

デザインされています

1898年: 米西戦争勃発。リサールの処刑によって激しくなった抵抗運動はスペインに対して再び武装蜂起し、

米国の支援も伴って、革命政府を目指していたエミリオ・アギナルド将軍が亡命先から帰国し、 6月12日に

カビテ州にてフィリピンの独立を宣言し、自らフィリピン共和国初代大統領に就任。

この史実の記念日:

2014年6月12日(木) 独立記念日 / Independence Day

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写真4 アギナルド 旧5ペソ札

写真5 アギナルド5ペソ硬貨

1901年: アギナルドが米軍に逮捕されて第一共和国は崩壊。米国の植民地支配開始。

1941年: 太平洋戦争勃発。日本軍が米軍を放逐しマニラに上陸。日本はフィリピンの独立を承認したが、

傀儡(かいらい)政権を作って支配を開始。

この史実の記念日:

4月9日(水) 勇者の日 / Bataan and Corregidor Day

日本軍による「バターン死の行進」が日本軍支配の象徴となっています。

1945年: 日本敗戦に伴って独立の権利を失い米国の植民地に戻る。

1946年: 米国とのマニラ条約の締結によって、フィリピン第三共和国が再独立。

1965年: フェルディナンド・マルコス大統領が自身の独裁国家体制を築く。アメリカからの支持を得て

20年に亘る長期政権となる。

1983年: 8月21日 亡命先の米国で反マルコス活動を続けていたニノイ・アキノが、大統領選出馬のため、

飛行機で米国からマニラ国際空港に到着し、機内から警察官に連行された直後に 暗殺された。

この史実の記念日:

8月21日(木) ニノイ・アキノ・デー /Ninoy Aquino Day

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写真6 旧500ペソ札 ニノイ・アキノ

1986年: ニノイ・アキノの暗殺によって民衆の不満が高まり、ついに「エドゥサ革命」

(ピープル・パワー革命)となって、マルコス政権は崩壊。

現在のフィリピン第四共和国体制成立。コラソン・アキノ大統領誕生(ニノイ・アキノの配偶者)

に繋がった。

この史実の記念日:

2月25日(火)ピープル・パワー記念日(エドサ革命記念日)/ 1986 EDSA Revolution

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写真7 新500ペソ札 ニノイ&コラソン・アキノが

デザインされている。

上記全ての為の記念日:

8月25日(月) 英雄の日 / National Heroe's Day

フィリピン解放の為に戦った全ての人を記念する日。

上記の尾崎豊さんの「卒業」の最後の歌詞は、「闘いからの卒業」ですか、

次にフィリピン政府が新設する国民の祝日は、是非とも闘いとは関係ない

平和な祝日となって欲しいと切に願います。

(1月お題"2014年 祝祭日")

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