初めて見る、あの日以降の日本。

公開日 : 2011年05月25日
最終更新 :

実は今、震災後、初めての一時帰国中です。海外放送やインターネットで、今や海外に居ても日本の様子をリアルタイムで知る事が出来るご時世です。それでも、海外で得られる日本の情報は限られており、今の日本がどのような状態であるのか、在外邦人は皆、多かれ少なかれ不安を抱えて最初の帰国を果たすのではないでしょうか。日本で会うことの出来る、懐かしい面々の中には私が経験せずに済んだ大きな恐怖と混乱の日々の記憶があるのかと思うと日本人でありながら、その事を共有できなかった罪悪感の様なものとそれでもいつもの顔に会える嬉しさで、少し複雑に、少し感情的になってしまいます。町の中を歩いてみた印象は、一見それほど変化はないのかな。。。と感じました。しかし、良く見てみると天井の明かりは間引きされていたり地下鉄ホームの広告のバックライトが消えていたり町中が節電モードである事がわかりました。

でもね。。。

よく見ないと気づきませんでした。それでも、モスクワより明るい、と感じたのです。東京の繁華街のネオンが消えた、とニュースで見た時もそれでも、モスクワより明るいし多分、他のどの欧州諸国より明るい、と感じました。おそらく、多くの人が感じているように日本でも元々その程度の明かりで十分だったのではないでしょうか。今が電力の危機であるから節電しているというのではなく現状に近い状態で、常体化させる事に、異論のある人は少ないのではないでしょうか。そしてこれは、私個人のブログでも書いた事なのですが日本には、自動販売機が多すぎます。ありとあらゆるものが自販機で購入できるというユニークさは外国人にとっては日本独特の文化として受けている部分もあるようですがそんなに電力資源のない国であるのなら、少なくともコンビニの前の自販機はいらないんじゃないでしょうか。ちなみに、モスクワでは飲料水の自販機を探す事は、非常に困難です。それからもう一つ。。。

これは、モスクワの一般的なスーパーの棚です。閉店直前とかじゃなくて、週末の午前中です。売られている商品は、例えばこんな感じ。

中にはカビが生えていたり、腐っていたりするも物もありますが全部立派に商品として並んでいます。日本のスーパーやコンビニの棚では、閉店間際の時間や仕入れ時間と仕入れ時間の間のわずかな時間以外は『品切れ』という状況は、非常に珍しいですよね。上の写真の様に、あまり見栄えの良くない野菜を見るのも日本では難しいはず。いつでもキレイな生鮮食品や作り立てのお弁当が潤沢に供給されているのは言わずもがなですが、無駄になっている部分が多いからという事に他なりません。しかし、日本の食料自給率は40%言われています。

一方、日本の食料廃棄量は平成17年では1134万トンWFPが2007年に行った食料援助は、330万トン、80カ国分、8,610万人分です。食料自給率の非常に低い日本が世界で援助されている食料の3倍以上の量の食品を廃棄している計算です。ちなみに、ロシアの食料自給率は調査されていないようですが日本よりはかなり高いみたいです。少なくとも、ロシアは穀物輸出国です。その、食料の自給が日本よりも多いはずのロシアのスーパーの棚が上記の写真の通りな訳です。無駄なく売り切ろうと思えば、品切れになる時間があってあたりまえ。無駄なく食べようと思えば、少々形が悪くても、気にせず食べるのがあたりまえ。そんな"あたりまえ"が受け入れられなければ、食料が足りなくなるのが"あたりまえ"。日本に帰ってくる度に思うのです。考え方だけ変えれば、日本の食料自給率は即座に上昇するのではないだろうか。。。そして、忘れてはならないのは、私たちが捨てている食品はエネルギーでもあるという事。食材もエネルギー調理もエネルギーパッケージもエネルギー運送もエネルギーそして、廃棄する時に又、エネルギーを消費するのです。電力資源の少ない国に住む私達が、湯水のごとく使ってきた電力食料自給率の少ない国に住む私達が、有り余っているかの様に捨ててきた食料どんなに便利にしても、まるで一生飽和しないかの様にとめどなく利便性と豊かさを追求してきた日本には、あきらかに欠けたきた物もあります。モスクワでの生活は何かと大変で不便ですがそれを補うかの様に、ロシア人たちのおせっかいなまでの親切に合う事がママあります。車内で年配の人に席を譲るのはあたりまえ(老人じゃなくても)バギーを抱えて階段を昇る人があれば、いくつかの手が差し伸べられてあたりまえ道に迷う人が居れば、沢山の他人を巻き込んで地図を囲んで場所を探してくれる事さえあります。(その末に、結局場所が見つからない事もありますが。。。^^;)不便だから、一人では誰も生きられないから、だから他人が困っている事が、自分が困っている事の様に感じる。。。そんなところじゃないかと思います。日本に帰ってくる度に、電車の中で腰を曲げて立っているお年寄りを見かけます。駅の階段で、必死にバギーを抱えている女性を見かけます。見て見ぬ振り。。。って人も居るかもしれないけどきっと、本当に見えていないのではないか、と思う様になりました。人の事を気にせずに、自分一人で何でも完結できる世界では他の人に目を配る必要がないですから。しかし、ひとたび世の中が不便極まりない世界に変貌したら。。。3.11。都心から必死に家路を行く人々は、皆互いに声を掛け合い、気遣い、励まし合ったとか。。。そんな人で溢れた道路脇に店やオフィスを構える方々の中には炊き出しをしたり、トイレを貸したり、寝る場所を提供した方々も居たとか。。。私達は、他人を思いやる気持ちを忘れたのではなく他人に目を向ける機会を失っていただけではないのか、と感じました。いろんな事が、複雑に繋がってます。一つを考える事によって、次に考えるべき一つに繋がっていく。あまりにも不幸な形で訪れてしまったキッカケだけど絶対に、絶対にこれを無駄にしては行けない、と皆思ってると思います。「日本は強い国だ。必ず戻ってくる。」ロシア人は、そう言います。もちろん、私達日本人も、それには全く異論はないはず。しかし、完全復活した日本、イコール元の通りの日本でもない。

私も新しい日本を作る一人として、考える事から逃げる事なく、忘れる事なく、世界のどこに居ても、その事に向き合って行きたいと思います。今回を持ちまして、私、りりの投稿は終了となります。1年ちょっとの短い間でしたが、貴重な機会を与えてくださった地球の歩き方の皆様、パートナーのシャーミンさんそして何より、今までお付き合い頂きました読者の皆様に、心よりお礼申し上げます。これからは、私も読者の一人に戻って「モスクワ特派員」の記事を楽しませて頂きます。本当に皆様、ありがとうございました。またどこかでお会いできる日を楽しみにしています。りり

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