オリンピック開催中に放映されたマフィアのドラマ

公開日 : 2014年02月19日
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 イタリアでは、ソチ冬期オリンピックはSky衛星放送にて放映されています。残念ながら庶民的なナポリではサッカーチャンネル以外で衛星放送を観る人はあまりいないようで、オリンピックの話題はほとんど耳にしません。日本のように選手の紹介を交えながら、試合の見所などの説明をして、興味を引くような報道をしてくれれば変わると思うのですが...。国営放送で放映されないことも残念。

 そんな中、先日オリンピックの柔道で金メダルを取った選手の話を元にしたドラマが放映されました。2000年のシドニー五輪の男子73kg級の金メダリストジュゼッペ・マッダローニ選手。実は、日本では知られざる背景があるのです。

 ナポリのスカンピアという地区はもはや知る人ぞ知る、ナポリマフィア(カモッラと呼ばれる)によって統制され、麻薬売買・売春などが行われる界隈です。日本でも公開された映画ゴモラ)は大袈裟でもなんでもないスカンピアの日常を描いた力作です。

 そこに住む子供たちの多くは、親が収容所に入れられているか、カモッラに殺されたか、カモッラの下で働いているかという状況下に置かれ、お金が必要なのでカモッラに手を貸して麻薬運搬などをしています。そんな現状を救おうと、子供たちのために無料のサッカー教室を開いたりしているのも毎日のニュース番組で耳にします。

 この金メダリストの柔道家ジュゼッペはスカンピア出身で、看護師の父親がボランティアで開いた柔道教室の生徒だったのです。カモッラたちはこの柔道教室からももちろんピッツォ(みかじめ料)を取り立てていて、父親がある日それを拒否すると柔道場は燃やされてしまいます。友達が殺されたり、売春に行ったりするのを目の当たりにしながらも、ジュゼッペはヨーロッパチャンピオンとなりオリンピックへの切符を手にします。(ドラマではトニーという役になっています。)

 そんなスカンピアの希望の星であったジュゼッペがシドニーで金を取った瞬間、ナポリ中が泣いたそうです。

 実話に基づいたこのドラマは高視聴率をたたき出しました。涙なしでは見られない、素晴らしい作品でした。映画化されて日本でも放映されることを強く望みます。タイトルは「L'oro di Scampia スカンピアの金

 オリンピックが感動を与えてくれるのは、それぞれが背負ってきたストーリーがあるから。

 スカンピアに住む子供たちが闇の手に染まらず、ジュゼッペのように夢を追って羽ばたいてくれることを願います。

 ちなみにスカンピアに興味を持ち、観光したいと思う方もいるようですが、絶対におすすめしません。よっぽど用事がない限り立ち寄らないこと。どうしても行かなければならない場合は必ず土地を知る人を同行して、写真撮影を行わないこと。夕暮れ以降は避けること。

(二月のお題「オリンピック」)

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