市民生活に根付いているノルウェーデザイン10選

公開日 : 2014年03月03日
最終更新 :
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 1月24日~2月8日、首都オスロにあるノルウェーデザイン建築センター「ドガ/DogA」で、ノルウェーとイギリスのデザインを紹介する「デザイン・ザット・メイクス・ア・ディッフェレンス」展が開催されました。今回この展示会で取り上げられた、市民生活に役立っているノルウェーのデザイン10選をご紹介します。

Photo&Text: Asaki Abumi

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 イギリスからノルウェーへと引き継がれて開催されている巡回展で、主催者はノルウェー・デザイン・カウンシルと、イギリスのロイヤル・カレッジ・オブ・アートでした。

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 この展示会で紹介されるデザインは、おしゃれな北欧インテリアデザインではなく、「もっと身近な場所でひっそりと市民生活に浸透し」、「多くの人々の生活がさらに便利になるように手助けとなっているデザイン」に焦点を当てたものです。

 写真のポスターは、「健康的な若い白人男性」のためだけのデザインではない、身体障害者、お年寄り、ベビーカーを押す親、重くて大きなスーツケースを持って移動する旅行者、出張する働く社会人、金銭的に余裕がない学生など、「みんなのための」ユニバーサルなデザインを目指すことを示しています。

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 選挙活動、交通機関、病院、幼稚園などの現場で、派手な自己アピールはしてこないけれど、みんなの生活の手助けをしているデザイン。「あ、こんなものがデザイン賞をとったのか!」と、その意外性に驚かされる作品ばかりが集合していました。それでは、市民生活で役立っているノルウェーの10通りのデザインを簡単にご紹介します。

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①幼稚園/子ども達の夢の遊び場

 オスロのサーゲネ地区にある、約500人の子ども達を受け入れているマルガリン・ファブリッケン幼稚園(Margarinfabrikken barnehage)。NAV AS Arkitekter建築事務所が手がけた結果、老朽化した建物はカラフルでわくわくする、子ども達の夢の遊び場へと大変身を遂げました。

 古びた建物をいかに革新的な建物に甦らせることができるか、この幼稚園と建築事務所はノルウェー・デザイン・カウンシルにより、2011年に建築部門のイノベーション賞を受賞しました。

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 この窓はノルウェーに住んでいる人なら、誰もがどこかで見たことがあるものです。ノルウェー最大級の窓の製造会社であるノルダン(NorDan)社は、「みんなのための窓」(Vinduer for alle)を作りました。

 金銭的に余裕がなく、狭い寮に暮らしている学生でも利用できる小さくてコンパクトな窓、車椅子に座ったまま取っ手に手が届く窓、日照時間が少ないノルウェーで光を十分に取り入れる窓。

 ノルウェー・デザイン・カウンシルとの2011年の共同プロジェクトによってできあがった「みんなのための窓」は、現在、医療機関、教育施設などの幅広い場所で活躍しています。

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 食器会社ハルダンゲル・べスティック(Hardanger Bestikk)社が2009年に発表して以来、今でもベストセラー商品としての座をキープしているのはTuvaシリーズと呼ばれるカトラリー。中空構造が採用されたナイフ、フォーク、スプーンは軽量で、握力の弱いお年寄りでも使用することができます。

 サイズも小さいので、これはノルウェー旅行のお土産としてもよさそうですね。

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④物寂しげな駐車場を、みんなが集まる便利な広場に!

 オスロの中心地にあるシャンドルフスプラス広場(Schandorffs plass)は、かつてはどんよりとした空気が漂う、悲しい雰囲気の駐車場でした。2009年のプロジェクト完成後は広場はオスロ市に寄贈。ノルウェー・デザイン・カウンシルより2011年にランドスケープ建築部門でイノベーション賞を受賞しました。

 広場にはアレルギー症状がでにくいとされる緑を植林。ウィング状の坂道の歩道は、ベンチとして座ることもできれば、車椅子、自転車、ベビーカー使用者も利用することができる、まさにみんなのための空間となっています。

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⑤オスロ国際空港にある、北欧モダンなホテル

 オスロ国際空港(別名:ガーデモエン空港)に新しいホテル建設のプロジェクトが立ち上がったとき、ホテルチェーンのスカンディック(Scandic)はこれまでとは異なる新しいホテル像に挑戦しました。

 シンプルながらも機能的な北欧デザイン、アレルギー症状が出にくいとされる材質を使用し、海外からの訪問者にとっても分かりやすいデザイン表示、電気車椅子の充電設備を整えるなど、様々なニーズに対応した環境を提供します。

 ノルウェー・デザイン・カウンシルより2011年に家具・インテリア部門でイノベーション賞を受賞しました。

 オスロ観光中に、飛行機の出発時間が早い朝は空港近くのホテルが便利ですね。日本人旅行者のかたにもおすすめのホテルです。ホームページ、トリップアドバイザーでの評価はこちら

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⑥民主主義のデザイン、選挙の投票箱を美しく、使いやすく

 デザイン団体「ブランケ・アルク/Blanke Ark」が様々な試行錯誤を重ねて完成させたのは、誰もが簡単に理解できて利用できる選挙の投票用備品。車椅子の使用者にとっても使いやすい投票スペース、折りやすい投票用紙、支持する政党の名簿を見た瞬間に探し出せる投票記載所の棚、紙を入れやすい投票箱。「誰もが簡単に投票できるように」デザインされた投票用備品は現在全国で使用されています。

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⑦雪国ノルウェーで走るデザイン鉄道

 ノルウェー国鉄NSBは「FLIRT」と呼ばれる新しい鉄道車両シリーズを導入した際に、耐雪性に優れていながら、鉄道員にも乗客にも利用しやすい車両を作り上げることに成功しました。車内で立つ乗客を減らすためにイスの数を増設、誰もが使用方法を見ただけで理解する分かりやすいトイレなどのボタンのデザイン、車椅子利用者もストレスなく乗り降りできるドア設備など、誰もが快適に鉄道を利用できるような仕組みとなっています。

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⑧乗客に優しい、船デザイン

 交通手段として市民に利用されているノルウェー南西部ローガラン県を走るフェリー。Rogaland Kollektivtrafikk FKF社が2007年に導入した新しいフェリーのデザインは乗客に優しい構造となっています。乗り降りの時間を節約できるようなシンプルなデッキへの乗り降り場、難聴者もアナウンスが聞こえるようなスピーカーの導入、アレルギー対策がされた船の素材、車椅子やベビーカーも置くことができる余裕のあるスペースなど、乗客が安心してフェリーを利用できるような幅広いニーズに応えたデザインを実現することができました。

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⑨天気予報をみんなに届ける、わかりやすく、的確な気象情報サイト

 ノルウェーに住んでいる人なら誰もが利用している気象情報サイトYr.noは、ノルウェーの気象庁と国営放送局が共同運営しているウェブサイトです。的確な天気予報が定評があり、それに加えて市民も分かりやすい天気予報をインターネットで公開しています。プロの天気予報士たちの視点でサイトを構成してしまうと、一般市民には難解な内容になってしまうことから、サイトの色から専門用語まで、一般の人々でも分かるように構築されました。

 Yr.noは大変便利なので(英語あり)、ノルウェー観光をする旅行者の方にもおすすめのサイトです(携帯電話用のアプリなどもあり/Google PlayApple Store)。

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⑩環境に優しい電気自動車デザイン

 電気自動車メーカーThink社は「電気自動車について考えよう」というプロジェクトの下で、地球環境と将来的には空気を吸う人間にも優しい電気自動車(EV)の開発と、乗り手のための車内デザインの向上に取り組みました。Think社は2011年に破産してしまいましたが、カービジネス産業に大きなデザインインスピレーションを与えたことは今でも大きく評価されています。

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