ノルウェーの高校生が総プロデュース! 皮肉のお笑い劇レヴィー2014

公開日 : 2014年04月25日
最終更新 :
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 現在、赤いズボン(オーバーオール)を履いた「ルス」というノルウェーの高校生達が国内の至るところでウロウロしています。卒業目前の彼らは、どんなにふざけたことをしても許される、社会の不思議な存在です。詳しくは、「ノルウェーの大騒ぎ高校生ルス(RUSS)は子どもたちに大人気」にて。

 さて、高校生ルスが大騒ぎをしはじめる時期の前に、高校生たちにはもうひとつの特別なイベントがあります。「レヴィー」(Revy)と呼ばれる、首都オスロの高校生限定の「笑いの学際」です。過去にも「オスロの高校生による笑いの学祭・レヴィー」」で紹介したことがありますが、今回は2014年度の数ある高校の中でチャンピオンに輝いた高校の特別上映会レポートです。

Text & Photo: Asaki Abumi

レヴィーのポイントは、

■各高校が秋頃から準備しはじめ、翌年の2~3月に上演するお笑い演劇

■国内全ての高校というわけではなく、オスロ限定の高校イベント

■上演の準備や演出内容には、先生や大人は一切関与しない

■まさに高校生プロデュースのイベント

■目的は観客を笑わせること

■笑いのネタは、政治家を小ばかにするなど、皮肉&ブラックユーモア

■ノルウェー社会と文化を熟知していないと、何が面白いかわからない

■大手Aftenposten紙の批評家が演劇を見にきており、サイコロ1~6点で評価(6点が最高)

■この新聞社から優勝の栄光を勝ち取った高校は、オスロで老舗&有名なナショナルシアター劇場で、プロの手助けの元、特別上演ができる

■才能ある卵が多いので、メディア・演劇関係者が優秀な若手を見つける場でもある

 そして、2014年度に優勝したのは、フォス(Foss)高校。音楽科があることで有名な高校で、フォス高校のレヴィーも、歌と踊りが満載の作品となっていました。テーマは、「山はあるよ」。ノルウェー人といえば、自然が大好きな国民として知られており、多くの人が小さい頃から登山やキャンプに慣れ親しんで育ちます。大人になっても週末は「散歩」といいながら、山登りをする人が多いノルウェーですが、今回の上演内容では「登山」を、「人生の登り道」に例えていました。

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 「高い目標=山の頂上」として、キャリアアップやお金持ちになることを目指す人々。でも、一生懸命に登った山の頂上で、ふと気づきます。「あれ、これからどうしよう? 一緒にいた友達はみんなどこにいったんだろう? 高すぎて、なにも見えなくなちゃった」。

 この上演で伝えたいことは、ストレス社会である現代において、「幸福は常に高い山の頂上にあるとは限らないよ。低い山でもいいじゃないか、目標は高すぎなくてもいいんだよ」ということがメッセージなのだと、皮肉な上演内容がいまいち分からなかった私に、ナショナルシアターの広報シシュティ・エッレブセンさんが教えてくれました。あえてトップを目指さなくてもいいよという考え方は、平等を重んじるノルウェー人らしい考え方かもしれません。

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 今回、レヴィーに参加した3人の高校生からもお話を聞くことができました。フォス高校のレヴィーの作製に関わった学生は、なんと全部で130人! 全員が17~19歳で、そのうち俳優として演じたのは8人、13人の音楽バンドに加え、監督も音響も、全て高校生が担当したそうです。「フォス高校がほかの高校と違った大きな点は、17人で構成されたコーラス班がいたことだ」と、監督のエーリック・フログネルさん(19)が教えてくれました。ちなみに監督も全部で4人いたそうです。

舞台は全てDIY!

 「テーブルとかの舞台装置も衣装も私達が作ったの。レヴィーっていうのは、ぜんぶ手作りするものなのよ。私達は9月に練習を始めて、俳優8人はオーディションで選ばれたの」(イーダ・エフシンさん・18歳・レヴィーでは8人の俳優のひとりである女優)

 「授業は参加しないといけないから、放課後に集まって、クリスマス休暇も返上して練習。大変だけど、半年間だけのプロジェクトだから、途中で辞める人はいないよ。たまに意見があわなくて喧嘩することもあったけど、今はいい思い出」(エーギル・アンドレアス・スクールダールさん・18歳・男優)

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将来はプロとして劇場に戻ってくる?

 「レヴィーで活躍した高校生が、プロになって、この劇場に戻ってくる日がくるかもしれないわ」と、若手の活躍を期待するナショナルシアター広報のエッレブセンさん。高校生俳優のエフシンさんとスクールダールさんに尋ねてみたところ、「いまのところは俳優になるつもりはないかな」と、「目標はそこまで高くなくてもいい」という上演内容を選んだ人々らしい答えが返ってきてしまいました。

 ノルウェーでは、「レヴィーに参加した」ということ自体が、なにかに精力的に打ち込んだという努力の証明でもあるそうです。ノルウェーの高校には、日本のような部活がないので、レヴィーは部活のような役割を果たしているのかもしれません。来年のレヴィー高校生たちが、どんな皮肉なネタをもって挑んでくるのか楽しみです。

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