ノルウェーで大気汚染「赤色警報」、旅行者と在住者への影響は?

公開日 : 2016年01月22日
最終更新 :
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 北欧・大自然の国ノルウェーというイメージで、「国内の空気はキレイ」と思われやすいノルウェーですが、実は大気汚染が深刻化しています。オスロやベルゲンなどの日本人観光客や在住者が集中する大都市は、その深刻度は最も高く、連日国内ニュースで取り上げられているほどです。

 国会・地方レベルで政治家が議論しており、大気汚染の悪化がひどい日にはディーゼル車の使用を禁止するなどの対策案が検討中。ただ、実行にはまだ時間もかかると見られ、特に健康被害を受けやすい子どもや、気管支ぜんそくなどの症状がある方は、外出を控えるように市町村や学校が緊急で知らせをだしています。

どれほど被害は深刻か?

 オスロやベルゲンでは子どもが外出できない日があるほどです。長期滞在者でお子様がいる家庭は、現地情報に敏感になっておく必要があります。ノルウェーでは大気汚染が原因で早期死亡している人は1500人に及ぶという調査結果もEEA Air quality in Europeのレポートよりでています。

 今回はノルウェー大気研究室(Norsk institutt for luftforskning)に問い合わせ、旅行者や長期滞在者へどれほどの影響があるのかを聞きました。回答者は広報のクリスティーネ・F・ソルバッケン(Christine F Solbakken)さんです。

大気汚染の代名詞、粒子状物質「PM2.5」

 オスロには12の観測地点があり、PM2.5は各地で25~75マイクログラム(μg/m3)を超えると赤色警報となります。これは日本よりも厳しい基準値です(日本では注意喚起のための暫定的な指数は70マイクログラム超、80~85マイクログラムは注意喚起のために用いる値としています 環境省)。

 今週(2016年1月4週目)は、オスロで18~21日が赤色警報となっており、冷気と風が吹いていない状態が原因で、大気汚染物質の停滞状態が続いています。一部の幼稚園などは保護者に注意喚起の連絡をしており、呼吸困難が原因で特殊なマスクをつける子ども(TV2の報道)も出ており、連日国内メディアが大きく報道しているのはこのためです。ベルゲンでも同様に赤色警報がでています。

 オスロでは今週、日中13時以降からPM2.5は40~80マイクログラム、夜間は80~90マイクログラムを記録。赤色警報はいずれ収まりますが、冬季はこのような状況がまたいつ起こっても不思議ではないため、ノルウェーでは世論から政治家に対する非難の声が高まっています。

 ノルウェー大気研究室が強調することは、ノルウェーでは「年中」大気汚染が深刻化しているわけではなく、欧州の中でも大気汚染対策は進んでいるということです。しかし、零下が続く「冬季」は、ノルウェーならではの事情で大気汚染が悪化します。環境問題に敏感な国のため、赤色警報が続く時期には地元メディアが大々的に報じる傾向に。

 この時期は子どもが最も被害にあいやすいため、特に長期滞在者は情報を気にかけておいたほうがよいでしょう。

 日本の環境省では人の健康の適切な保護を図るために維持されることが望ましい水準は1年平均値15マイクログラム以下、1日平均値35マイクログラム以下とされています。1年平均値15マイクログラム以下は、ノルウェーでも同様です。

赤色警報はどうやって知ることができるの?

 赤色警報が連日記録される恐れがある時は、地元の新聞紙が大きく報道しますが、ノルウェー大気研究室が運用する公式HP「Luftkvalitet.info」では常に最新情報をチェックできます。メールやSMSで知らせを受けることも可能。

ノルウェー語で分かりにくいのですが、

※オスロならOsloを見てみてください。紫、赤などの色がついています。自分のいる地域が赤色・紫色になっていれば、注意です。

大気汚染バロメーター

紫 Svart hoy 大気汚染度が「非常に高い」

赤  Hoy 「高い」

オレンジ  Moderat 「適度にやわらいでいる状態」

緑 Lite  「低い」

白 Ingen data 「データなし」

赤色警報とみなされるのは、紫色と赤色が連日続く時です。

 紫色は危険。健康状態が敏感な人には影響を及ぼし、健康的な人も呼吸に違和感を感じます。心臓や呼吸器官に問題がある人は、外での活動を避け、大気汚染がひどいエリア(交通量の多い場所)には近づかないように。

赤色は各地で最もよく見られる危険カラーです。呼吸器疾患のある子ども、そして大人でも重症な気管支ぜんそく、呼吸器疾患、心血管疾患がある人は、外出をできるだけ避けてください。大気汚染がひどいエリアには近づかないように。

ノルウェーならではの大気汚染の原因 冬の10~4月が最も危険

 大気汚染がノルウェーで深刻化する独特の理由が複数あります。なかでも、10~4月の冬には、大気汚染の原因物質が最も暴れだします。

 ノルウェーならではの冬の汚染物質については、Yahoo!JAPAN「車の排ガスだけではない!ノルウェーの大気汚染の原因は冬将軍?なぜ注意喚起が連日続くのか」で説明しています。

さて、短期滞在の旅行者にこれは何を意味するのでしょう?

旅行者は大丈夫?

「赤色警報がでている日でも、オスロや他の都市に2日ほど滞在するだけであれば、問題はありません。ですが、呼吸器疾患、心血管疾患の症状がある人は、体調が悪化する可能性はあります。そのようなリスクグループに入る人は、6~8月の夏季に旅行したほうが、冬季よりもよいでしょうね」 

ノルウェー大気研究室 広報クリスティーネ・F・ソルバッケン

赤色警報がでやすい時間帯は?

ノルウェーのラッシュアワー

・午前7~9時

・午後15~17時

そして、外出先から自宅に戻る時間帯18時以降

※ノルウェー人は日本人のように長時間労働をしないため、帰宅時間が早い

※日中は大気汚染レベルは低くなります

長期滞在者は、旅行者よりも注意する必要あり

 呼吸器疾患や心血管疾患のある患者、高齢者、妊婦、15歳未満の子どもは、最も大気汚染で被害にあいやすいグループです。

 「大気汚染がひどい日には、できるだけ外出は控え、暖炉で薪を燃やすのを控えるようにしてください。外出するとしても、交通量が少ない大気汚染度が低いエリアを選ぶとよいでしょう」

Photo&Text:Asaki Abumi

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