滋賀特派員 新着記事
この「びわ湖疏水」。その名の通り、琵琶湖の水を京都まで運ぶ水の路です。
明治維新の後、東京遷都によって京都は首都機能を失い、急速に衰退しました。
その京都に活気を取り戻した、国の歴史上とっても重要な土木プロジェクトが「びわ湖疏水」の建設です。
ただしそのためには滋賀県と京都の間の山を越える必要があります。なんとこれをトンネルを掘って繋ぐという、当時としてはトンデモナイ大事業だったのです。
その水は京都に水と電力を供給し続ける大切なライフラインとして、完成から120年以上経った今でも現役。
100年先を見据えたこの大事業、偉人達のトンデモナイ発想と行動力に頭が下がります。
そんな「びわ湖疏水」、当初は水利用や水力発電の他にも、大津と京都を繋ぐ【水運】としても大いに利用されていました。
しかし車や鉄道といった交通の発達の中で、水運についてはすっかり姿を消してしまったのです。
それから長い時間、人が入ることから閉ざされてきた「びわ湖疏水」…。(僕も疏水に人が入れるなんて考えたことなかった…)
なんと70年ぶりに一般の方でも「疏水船」に乗って、未知なる疏水の中への旅を体験できるようになりました!
今回「疎水船」の一般予約スタートと同時に、Funazushi-maruも早速予約して行ってきましたよ。
大津閘門 撮影:Funazushi-maru
京阪石山本線の「三井寺」駅で下車。すぐに琵琶湖から水を疏水へ引き込む「大津閘門(おおつこうもん)」へたどり着きます。
大津閘門は開け閉めすることで、運河のように疏水の水位を調節しています。
予約していた時間の20分前に集合し、乗船の際の注意事項など説明を受けます。
普段は入れない疏水の路 撮影:Funazushi-maru
その後、疏水船の場所まで徒歩で移動。ここからは普段は一般の人間が入れない特別なエリアなのです。
大津閘門の真上を通って、通常は真上にある道路から見下ろしていた疏水脇の道を歩きます。
観光化に向けて新たに造られた疏水船 撮影:Funazushi-maru
さあ、いよいよ乗船。
予約順に1人ずつ名前を呼ばれて席に乗り込みます。屋根付きの小さな船なので、頭をぶつけないように…
席には腰巻タイプのライフジャケットとブランケット一式が設置されており、席に着いたらライフジャケットを取り付けます。
いよいよ出船! トンネルの中は… 撮影:Funazushi-maru
一緒に乗り込んだガイドのお姉さんの案内で、未知の世界への探検ハジマリハジマリ!
第1トンネルの琵琶湖側入り口 撮影:Funazushi-maru
疏水の各トンネルの洞門には明治の本格的な洋風建築による重厚なデザインが施されています。
疏水最大の難工事であった第1トンネル洞門東口には初代総理大臣 伊藤博文が揮毫した「扁額」が刻まれています。刻まれるのは「気象萬千(きしょうばんせん)」と言う言葉…意味:様々に変化する風光は素晴らしい。
第1トンネルは長さ約2.4㎞。当時の日本としては初めての「竪抗方式」によって、かつ外国人に頼らず、日本人の技術力だけで作られた国の土木史上大変重要なもの。
トンネルの中には今も当時の距離を示す金属製プレートや、京都方面から折り返すためのロープ、また疏水建設の大きな立役者であった第三代京都府知事「北垣国道」の揮毫した扁額(「寶祚無窮 ほうそむきゅう」…意味:皇位は永遠である)を見ることができます。
こういった歴史的な遺産も70年ぶりに見ることができるようになったのです。
トンネルの中については今回は写真は載せていませんので、是非皆さんの目で見て体験してくださいね!
船は暗闇を脱し… 撮影:Funazushi-maru
そして暗闇の向こうに見えていた小さな光が徐々に大きくなっていきます。まるで過去へと旅していたタイムマシンが現代へ帰還してきたみたい…
桜が散った後の新緑が出迎えてくれました 撮影:Funazushi-maru
トンネルを抜けるとそこはもう京都。船から見上げると新緑の木々がキラキラを輝いています。
疏水中間地点の四ノ宮舟溜 撮影:Funazushi-maru
僕の過去へのタイムスリップツアーはここまで。
四ノ宮舟溜は第2トンネル前に池のような広い場所が設けられており、以前は荷物の揚げ降ろしや船頭さんの休憩場所となっていました。
わずかな時間の旅でしたが、時空間を移動したかのような不思議な感覚が残りました。
第1トンネル西口の洞門 撮影:Funazushi-maru
帰りは徒歩で大津へ戻ります。ちょうど疏水の真上を通る旧道をテクテクと約3㎞のハイキング。
さっき疏水船で出てきた第1トンネル西口洞門が見えました。
扁額の揮毫者は「山県有朋」(第三代・九代内閣総理大臣)です。明治の元勲たちの名前がこの疏水がいかに重要な事業であったのかを今に伝えます。
小関越えの道 撮影:Funazushi-maru
東海道の逢坂の関が有名ですが、大津の三井寺と京都を繋ぐ巡礼の道として「小関越え」と呼ばれる古の道が存在します。
この細道を歩いていくと…。
疏水の第一竪抗 撮影:Funazushi-maru
こんなところにありました。疏水工事のために掘られた「第一竪抗」。ここから約47mも下に疏水のトンネルがあるのです。
よくまあこんな山の上から掘るなんて考えたもんだ‥。(直径は5mもあります)
小関越えハイキングコース 撮影:Funazushi-maru
真っ直ぐ降りてもいいですが、ちょっと寄り道して小関越えのハイキングコースへ。ここは途中の展望台を経て三井寺の境内を通って戻ることができます。(三井寺拝観料が必要です。大人:600円)
三井寺の展望台から大津の街を望む 撮影:Funazushi-maru
自分の脚で京都から大津までを山を越えて歩くことで、いかに疏水の工事が大変な場所で行われたのか思い巡らせることができますよ。
昔の京都の人々もここから見える琵琶湖の景色をみて、都と琵琶湖を繋ぐことを夢見たのではないでしょうか…
疏水船は様々な季節で楽しめる新たな観光スポットに 撮影:Funazushi-maru
春の桜、夏の涼、秋の紅葉…と様々な季節の風光を愛でながら、過去へのタイムスリップ体験ができる「びわ湖疎水船」。
京都と滋賀を繋ぐ新たなスポットとして人気になること必至ですね。
【びわ湖疎水船】
問い合わせ:びわ湖疏水船受付事務局(JTB西日本京都支店内)
TEL.075-365-7768 FAX.075-365-7757(※お電話での予約は承っておりません)
アクセス:大津 乗下船場…京阪・三井寺駅から徒歩約2分
※各乗下船場には駐車場がありませんので、公共の交通機関をご利用ください。
新旭浜園地 撮影:Funazushi-maru
今回立ち寄ったのは「新旭浜園地」。
こちらは数台止められる駐車場とトイレや水鳥の観察小屋、遊歩道が整備された公園となっています。
水鳥の観察小屋 撮影:Funazushi-maru
観察小屋に寄ってみました。
水鳥が寄ってきた 撮影:Funazushi-maru
水鳥の観察小屋って、初めて入ってみましたが、こちらに気づくことなく水鳥が近づいてきましたよ。
さて、ノウルシの群生のある場所に向かいます。
群生地までの遊歩道 撮影:Funazushi-maru
群生地までは木製の遊歩道が整備されています。ところどころ痛んでいますので足元に気を付けて…
ノウルシは湖岸や河川敷など湿地を好む植物。しかしノウルシは準絶滅危惧種に指定されており、その群生が見られる場所は大変少なくなってるそうです。
目の前に鮮やかな黄色が広がり始め…
ノウルシの絨毯が広がる 撮影:Funazushi-maru
一面の蛍光イエローの絨毯が。こんな景色が湖岸に展開されていたとは…。実は僕も最近まで知りませんでした。
枯れ木が不思議な雰囲気を演出 撮影:Funazushi-maru
ノウルシの名前の由来はウィキペディアによると、茎葉に傷をつけると漆に似た白い液がでることからきているのだとか。
4月頭から5月にかけてが丁度見頃ということで、GWあたりまでは琵琶湖の沿岸を華やかに彩ってくれているでしょう。
菜の花に間違えそうですが、よく見ると違いますよ 撮影:Funazushi-maru
これからの季節、自転車で琵琶湖を巡る「ビワイチ」にチャレンジする方も多いと思います。新旭あたりにたどり着いたら、是非湖岸のノウルシを見ながら一休みしてみてはいかがでしょうか。
ノウルシ群生地
アクセス:JR新旭駅より乗合タクシーで約35分「針江・大久保」下車、徒歩約10分
問い合わせ先:(公社)びわ湖高島観光協会 TEL:0740-33-7101
海津大崎の桜は琵琶湖八景や日本のさくら100選にも選ばれるくらいの有名お花見スポットだけに、シーズンとなると沢山の観光客で賑わいます。しかも琵琶湖だけに湖の上までも・・・
ということで僕は今回、(記事中の写真にも自ら触発されて)人の少ない早朝に自転車で海津大崎周辺の桜を見に行くことにしました!
きっと早朝なら神秘的な桜と琵琶湖のコラボした景色を独り占めできるはず!
朝の5時、まだ日の出前に海津大崎のある高島市マキノへ到着。
淡い光に包まれた海津の石積風景 撮影:Funazushi-maru
さすがにまだ人もまばら・・・。しんと静まり返った他所行きではない普段の海津の空気が流れています。
海津大崎の桜並木への入り口 撮影:Funazushi-maru
しかし僕の他にも朝の厳かな光に包まれた桜を捕らえようと、カメラマン達がそこかしこに・・・。
日の出は5時30分。太陽が顔を出す前後、空が桜色を帯びた神秘的な雰囲気になります。その中に浮かぶ「竹生島」。ニュース&レポートにあった1枚の写真に憧れて思わずここまでやってきました。果たして撮れたのか・・・
桜色の世界に浮かぶ竹生島 撮影:Funazushi-maru
たぶんシチュエーションは天候も含めてバッチリ。ただ僕の腕が無いもので思ったようには行きませんでしたが、それでも思い描いた瞬間に立ち会うことはできました。
ずっと眺めていたい幻想的な景色… 撮影:Funazushi-maru
桜もちょうど満開。もう少ししたら有名花見スポットの喧騒に包まれるでしょう…。それまではこの景色を思う存分楽しめます。
荒々しい景色と桜の調和 撮影:Funazushi-maru
岩礁地帯である海津大崎は、他の琵琶湖の湖岸とは違って岩場の荒々しい景色が続きます。それが桜と合わさることでコントラストのある風景を生み出しています。ただ海とは違い、湖面は大変穏やか・・・古の時代から人々が琵琶湖に多く魅せられたのも何となく理解できます。
海津大崎の景色に魅せられながら自転車で桜のトンネルを通りぬけていくと、やがて「大浦」にたどり着きます。
大浦から海津大崎を眺める 撮影:Funazushi-maru
大浦の港も多くの桜が満開で、ちょうど桜祭りの準備中。通り雨が降ってきて、しばらく雨宿り。
雨が止んだら、青空が広がり始めました。
その隙を見てさらに「塩津」へと向かいます。
枝垂桜の濃いピンクが眩しい 撮影:Funazushi-maru
大浦からつづらお崎の半島をパスして、塩津へ抜けるトンネルの前の坂道にに立派な枝垂桜が出迎えてくれました。
トンネルを抜け塩津へ。琵琶湖の一番北にある湾、桜の景色を求め気の向くままに向かうと、そこはもう行き交う人もほとんどいない静かな琵琶湖が広がっていました。
鏡のような湖面が広がる塩津の浦 撮影:Funazushi-maru
人の気配や車の通りも無く、また人工的に植えられた桜並木もなくなり、自然のままの風景の中を走ります。
山桜にはソメイヨシノとは違った良さがある 撮影:Funazushi-maru
誰かに見られるために植えられたものでなく自然のままにひっそりと咲いている山桜が、鏡のように静かな湖面や水鳥の遊ぶ風景と合わさり、自然体の琵琶湖を見せてくれます。
雄大な琵琶湖を望む一本桜 撮影:Funazushi-maru
少し坂をあがり、浦の全体が望める場所に一本の大きな桜の木がありました…。
思わず自転車を止めてパチリ。
道の先の小さな漁港 撮影:Funazushi-maru
道を先には小さな漁港があり、そこにも満開の桜が咲き誇ってました。
ここで道は行き止まり…
今回は満開の海津の桜+αを、ガイドブックなどに乗っている有名な風景とは違った角度で探してみました。
早朝に行くのは大変かもしれませんが、マキノや塩津あたりの宿泊施設を利用して、ちょっと早起きしてみるのもいいですよ。
【海津大崎の桜】
問い合わせ:公社)びわ湖高島観光協会
電話:0740-33-7101
ホームページ:http://www.takashima-kanko.jp/sakura/