ベッカムも惚れ込んだ味 ガーデンバイザベイ温室内「POLLEN」
マリーナベイサンズから徒歩圏内にある巨大な植物園、ガーデンバイザベイ。その温室内に、緑あふれるヨーロピアンキュイジーヌの名店、「POLLEN」があります。
広い植物園内にあるという事で、ガーデンバイザベイの入り口のタクシースタンドからお店に電話すれば、バギー(ゴルフカートのようなもの)で迎えに来てくれます。
植物園内をすいすいと進むバギーも、この植物園全体を目でも楽しんで欲しいというサービスの一つ。ここから既に、レストラン体験は始まっています。
到着したのは、白を基調とした、シンプルでスタイリッシュなエントランス。
ガラス張りのドアを開けると、温室の中ならでは、緑豊かな世界が広がり、窓の向こうにはシンガポールフライヤーを望めます。
室内に植えられている緑に背を向けて座る人にも、この環境を楽しんで欲しいと、壁には大きな鏡が使われ、室内全体が緑に包まれ、穏やかなくつろぎ感に満ちています。
「POLLEN」は、「花粉」という意味。ロンドンのミシュラン一つ星のレストラン「Pollen Street Social」の、Jason Atherton(ジェイソン・アサートン)シェフがプロデュースしています。
エグゼクティブシェフとして腕をふるうのは、Colin Buchan(コリン・バカン)シェフ。スコットランド出身のコリンシェフは、アサートンシェフと同じく、ゴードン・ラムゼイでキャリアを重ねた後、デビッド・ベッカムがその味に魅了され、アメリカで数年間、ベッカム夫妻の専属シェフを務めていたと言うほどの腕前の持ち主。
そんなコリンシェフのお料理に期待が高まります。
まず登場したのが、小さなボトルに入ったスイカのジュース、涼しげな瑪瑙のような石の上に乗ったライスクラッカーなど、斬新なプレゼンテーションのアミューズ(写真は2人前)。
まず、ライスペーパーから作ったと言う、クリスピーなクラッカー。上には胡麻と、タヒニという練り胡麻のようなものを使いクミンシードで香りを付けた、アラブのフムスを思わせる、エスニックな香りのペーストが乗っていて、食欲をそそります。
そして、もう一つは、同じライスクラッカーでも、より軽やかでふんわりとした口溶けのもの。シンガポールではライムの代わりに使われる、カラマンシーという柑橘類のジュレが乗っていて、その下にはなんと、日本の昆布を取り寄せて作ったと言う粉末が。甘酸っぱいカラマンシーの味に、昆布のコクが意外なほどよく合います。
中華系の多いシンガポールらしく、点心からインスピレーションを得たと言う、小さな可愛らしい蒸し籠に入った中華風のパン。中にはセップ茸の粉末とチーズ、上にはトリュフのスライスが乗っています。
一口食べると、大地の栄養をたっぷり吸収した茸の野趣あふれる土の香りと、チーズのコクが広がります。緑に囲まれた温室で食べるにぴったりのアミューズです。
そして、「テクスチャーの違いを特に意識している」というコリンシェフのこだわりが特に感じられたのが、グリーンピースのムース。
上にかけられた、ほのかに甘いミントの冷たいグラニテとの温度の対比、
敢えて半生に火入れされたびっくりするほど甘いグリーンピースの歯応え、更に、ごく薄い、クリスピーなクルトンとクリーミーなムースの対比
ディルオイルの香りがグリーンピースの緑の香りを引き立て、全体をふんわりと包み込んでいます。
土と緑の味わいをそのまま表現したようなアミューズは、温室内という環境にも、ぴったりマッチしたものでした。このアミューズは、定期的に新しいものに変わるそうです。
続く前菜は、アラカルトのメニューからフォアグラ(Aerated fois gras、36シンガポールドル)をいただきました。
もちろん、ただのフォアグラではなく、ムース状になったフォアグラを、凍らせた物。一口噛むと、ほろほろと崩れ、舌の上ですっと溶けていく、軽やかな味わいです。
日本産の苺の甘み、紫蘇の葉のすっきりとした香りがアクセントに、そして下に敷かれたピスタチオの歯応えとコク、添えられたカベルネソービニョンのソースの酸味が相まって、五感を刺激する一皿に仕上がっています。
暑いシンガポールでは、ヘビーに感じられがちなフォアグラを食べ易くアレンジしたのだとか。
メインは、降り注ぐ南国の太陽の恵みを一皿に凝縮したような、スペイン風のイベリコ豚(Iberico pork collar, octopus, piquillo peppers, patatas bravas、68シンガポールドル)。
ふんわりと漂うトマトの香りに包まれたイベリコ豚とタコは、とても柔らか、添えられているのは、オーブンでローストされた、びっくりするほど甘い小タマネギと、スペインの赤ピーマン。
更には、スペイン風のポテトフライpatatas bravasをアレンジした優しい味わいのポテトという組み合わせ。鮮やかな色合いのソースは、トマトとタマネギ、グリーンピースという組み合わせ。
滑らかなサフランの板状のゼリーと、カリカリのライスパフがまた違った食感を与えてくれます。
そして、この「POLLEN」の楽しさは、デザートにもあります。ペストリーシェフが目の前で作ってくれる様子を楽しめる、デザートバーに移動していただきます。
ペストリーシェフは、Alexander McKinstry(アレクサンダー・マッキンストリー)シェフ。
実は、アレクサンダーシェフは、13歳から7年間、厚木に住んでいたとか。「その頃に日本のスイーツを食べ歩いた経験が、僕にペストリーシェフへの道を歩ませたんだ」と、懐かしそうに話してくれました。デザートでも紫蘇の花を使ったりと、日本の食材を使う事も多いそう。NYの有名レストラン「ダニエル」を経て、香港のヨーロピアンレストラン「The Principal」を一つ星に導いたメンバーでもあるアレクサンダーシェフ。シグネチャーメニューだと言う、Black Forest(20シンガポールドル) を頂きました。ブラックフォレストと言えば、チョコレートがたっぷり使われた、上にチェリーが乗ったドイツの古典的なケーキ。
見ていると、目の前でアレクサンダーシェフは、白いしめじを炒め始めます。デザートに茸?と不思議に思いながら見ていると、小さな切り株の上に、ピンセットを駆使して、みるみるうちに小さなジオラマのような「深い森」の世界が作り上げられて行きます。
完成したのがこちら。
下には75%のダークチョコレートで出来た土、東洋のバニラと呼ばれ、シンガポールで好まれるパンダンリーフを使ったシフォンケーキで出来た草、チェリーのソルベと表面だけキャラメリゼさせた「チェリー」トマト、そして、土に生えているシメジ! 先ほど炒めていた塩味でプリプリのシメジに対して、メレンゲで出来た「甘くてカリカリ」なシメジも混ざっていて、食べてびっくりの小さなサプライズにまでこだわっています。
食べてみると、パンダンリーフの甘い香りに、添えられているコリアンダーの若葉が更にエスニックな香りをプラス。さわやかなトマトと相まって、すっきりとした印象です。
「シンガポールらしいアレンジをと、草のような香りのあるパンダンで草のような見た目のケーキを作ってみたんだ」との事。
アレクサンダーシェフによると、作るデザートは、全てかくし味に塩を入れているのだとか。塩を入れる事で味が引き締まり、暑いシンガポールに向いた味付けになるんだとか。
ちなみに、不思議な気分で食べてみたしめじは、意外にチョコレートとベストマッチ! 甘さ控えめのチョコレートと、茸って合うんですね。
最後は、2階のハーブガーデンで育てているフレッシュハーブから好みの味をチョイスして淹れていただくハーブティーで締めくくり。
育てているハーブは料理にも使われているそうです。
シンガポールのローカル食材からもインスピレーションを得、見た目も味も、独創性とストーリー性のあふれる様々な料理を繰り出して来る「POLLEN」。
ちなみに、2階はマリーナベイサンズを望むカフェになっていて、アレクサンダーシェフの作るケーキを始め、アフタヌーンティーセット、更には軽くカクテルを一杯、という使い方もできて便利です。
また、POLLENで食事をすると、通常28シンガポールドルする温室への入場が無料になります。
帰りは行きと同じく、バギーで送ってもらう事もできますが、ぶらりと温室を散策して植物園内を見ながら帰る方も多いとか。
お洒落なレストランですが、子連れ歓迎で、ベビーチェアもあるのが嬉しい所。階段を上がればすぐ植物園なので、お子さんがぐずってもすっと温室に出て散歩が出来たりと便利です。
ちなみに、暑いシンガポール、こちらの「温室」は、常に20度以下に管理されたクーラーの効いた「涼しい場所」。冷え性の方は上着をお忘れなく!
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■POLLEN(ポーレン)
営業時間:ランチ 12:00~14:30、ディナー 19:00~22:00(月曜休)
テラス席 12:00〜21:00(無休、アフタヌーンティーの提供は15:00〜17:00)
住所:18 Marina Gardens Drive #01-09 Singapore 018953
TEL:+65 6604 9988
Mail:info@pollen.com.sg
アクセス:MRTベイフロント駅からタクシーで5分ほど
筆者
シンガポール特派員
仲山今日子
趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。
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