「Waku Ghin」マリーナベイサンズで過ごす極上のひととき

公開日 : 2015年01月01日
最終更新 :
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世界のベストレストランにも何度も選ばれ、予約は半年以上先までいっぱい、あのブッシュ大統領やトム・クルーズも入店を断られたという程の、シドニーの人気レストラン、「Tetsuya's」。

そのオーナーシェフの和久田哲也氏を、マリーナベイサンズのオーナーが口説き落としてオープンした初の支店が、「ワクギン」です。オープンした時には、地元オーストラリアの新聞で「飛行機に乗るだけで、Tetsuya's の予約が少し取り易くなった」と紹介されたほど。

実際、飛行機に乗ってわざわざこのために訪れる常連さんもいるそうで、アジアのベストレストランに何度も選ばれています。

そんなワクギンの料理は、シンプルでありながら、オリジナリティーがあり、何よりも、素材の味を楽しめる料理。

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まず、食事がスタートする前に見せられる食材は新鮮そのもの。世界中から集められた、極上の食材が揃っています。新鮮な食材と言うのは、見た目もキラキラしているのだなあ、と実感します。

「鉄板焼き」と紹介される事が多いですが、基本的に、料理を作る過程を、お客さんにエンターテイメントとして楽しんでもらい、出来立てを提供する、というポリシーが、結果として鉄板を前に料理を仕上げていく、このスタイルを生み出したとか。

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オーダーメイドで作られた大きな鉄板の前に客席は4席のみという、半個室のような雰囲気の部屋が並ぶ、贅沢な作りです。

コースは全品10皿のお任せのみ(400シンガポールドル)ですが、もちろん苦手な食材、アレルギーなどにも対応してもらえます。

その中の、シグネチャーメニューのいくつかをご紹介して行きます。

まずは、大トロのカルパッチョ。

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九州産のマグロの大トロは、とろけるような舌触りに、本マグロならではの香りとほのかな酸味があり、チャイブとエンダイブがかかっています。上には、植物の香りの上質のオリーブオイル。海の恵みに、オリーブオイル独特の濃い緑の植物の香りがよく合います。

大トロには、しょうゆとみりんで下味がついているそうですが、はっきりとしょうゆの味がする訳ではなく、完全に隠し味として使われています。あくまでも素材が主役、というシェフのポリシーが感じられます。

続いては、シグネチャーメニューのボタン海老とウニの一皿。

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北海道産のウニとカナダ産のボタンエビの相性は抜群。とろけるウニと、まったりとしたエビの食感。そして、下には冷凍された卵黄が忍ばせてあり、滑らかなコンビネーションが感じられます。

タスマニアの商業大使もしている和久田シェフが、タスマニアの漁師と掛け合って、脂の乗り具合などを指定したものを特別に仕入れているという、タスマニアトラウトは、テツヤズのシグネチャーメニューでもある料理。

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下にリンゴの千切り、上には細かく刻んだ昆布と、青海苔とゆずのソースには、ほのかにワサビが隠し味になっています。柔らかくとろける舌触りのトラウトに、昆布のコクがからみ、すっきりとしたゆずの柑橘系の味わいが全体を引き締めています。

続いて、手長海老のグリル。

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絶妙の火加減で火入れされたニュージーランド産の手長海老は、まったりとしたとろけるような肉質を存分に味わえます。

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そして、味付けは、ヴァニラビーンズと太白胡麻油のソース。海老の自然な甘みに、ヴァニラの香りをシンプルに際立たせたソースがよく合います。

全10皿が終了した後も、まだお腹がすいている、という人には、リクエスト次第でお好みのメニューを提供するとか。「お客さんが食べたいと言うものなら何でも、例えばピラフだって、仰っていただければ作りますよ」とは和久田シェフの談。

大切にしているのは、お客さんが満足してくれること。

窓際のテーブルに席を移してのデザートは、

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軽やかなブルーベリーのソルベに続いて、ムースショコラ。濃厚なチョコレートの味わいに、コーヒーリキュールが効いています。

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席は夕方5時半からと夜8時からの2回となっていますが、夕方5時半からの回だと、デザートをいただく席の目の前で、マリーナベイサンズの光のショーが楽しめます。

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和久田シェフは、常に新しい料理を創る、と言うよりも、今ある料理をいかに更に美味しくするか、に力を注いでいるそう。「絶対的な美味しさ」を追及しているという和久田シェフの料理は、より質のよい食材は何か、より良いバランスは何かを考え、ひとつひとつのメニューの完成度を高めることで、内側に内側に昇華させていくようなイメージと言えるかもしれません。

確かに、田舎の両親に親孝行をしたい、というシチュエーションでも、世界中の美味しいものを食べ歩いて来た上得意のクライアントを接待するときでも、安心して来られるお店です。

洋をベースに、和のエッセンスを取り入れたテツヤズに対して、和をベースに洋のエッセンスを取り入れたワクギン。

シンガポールのリ・シェンロン(リ・クアンユー初代首相の長男)現首相のファミリーも訪れるそう。

世界の頂点を極めた人たちとも深い交流を持つ和久田シェフですが、その経歴は異色そのもの。

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22歳で大学を中退し、英語を学びたいと、単身オーストラリアへ。英会話学校よりも、働きながら学べば良い、という家主の勧めで働き始めたレストランで、持ち前の器用さと視野の広さを買われて、料理人の道を歩むことになります。やがて、家や家財道具一切を手放して、自らのレストランを開業。全てを手放した為、寝る場所もなく、しばらくはレストランの階段の下で寝泊りをしていたそう。「でも、皆が帰った後、新しい料理を考えたりできたし、なかなか便利でしたよ」と、笑います。寝る間を惜しんで働く、という姿勢は今も変わらず、平均睡眠時間は一日2〜3時間とか。このインタビューの後も、某超高級シャンパンの造り手から、話があるから会いたい、と言われているんだ、とフランスへ、そして仲のよいシェフ仲間の集まりの為にニューヨークへ飛ぶ予定だとか。

料理人として、32年のキャリアを海外で過ごして来た和久田シェフですが、そのもてなしは、やはり日本の心を感じさせるます。

「お客様の口にふれるものだから」特にこだわったと言う箸は、日本でも数少なくなった正統派懐石と同じように濡れ箸。しかも、ヒノキを使った手作りのものを選び抜いて使っています。

キッチンスタッフは全て、出入りの際には背中を向けず、後ずさりしながら退出し、また鉄板は一皿調理する毎に、即座に真っ白い布巾でピカピカに磨き上げられ、顔が映るのではないかというくらいの美しさです。全てにおいて無駄がなく、隙のない折り目正しさとスタッフ一人一人の端正な所作には驚くばかり。とは言え、無駄な緊張感が漂う場所ではありません。日本だと、料理の写真の撮影は禁止、という高級店もよくありますが、ワクギンでは、携帯を取り出すと、「どうぞ」と撮り易いように近くに食材の箱を持って来てくれる等、和やかな雰囲気です。

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「全ては、お客様に心地よく過ごしてもらう為に」という意識が統一されていて、無用なピリピリ感や、緊張のあまり、何を食べたか覚えていない、なんて事もありません。

オーストラリア政府から、料理人として、また日本人として初めて、メダルオブザオーダーMedal of the Order (OAM)という非常に名誉ある褒章を受けたと言う和久田シェフ。

日本の農水省からも、日本の食文化を世界に発信していく、料理マスターズに認定され、色々な生産者の方と交流を図り、日本についてもっと知って行きたいし、日本の食材を世界に紹介する活動を続けて行くそう。

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世界に誇れる一流の日本の味と心を、和久田シェフ流のもてなしとして体現した、独自の料理観を体感できる数時間。

ただ美味しいものを食べる、だけでなく、全てにおいて最高の時間を過ごしたい。そんな方にお勧めです。

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■ Waku Ghin(ワクギン)

営業時間:ディナー 17:30〜又は、 20:00〜スタート、無休

住所: L2-01, Atrium 2 The Shoppes at Marina Bay Sands

TEL:+65 6688 8507

URL: http://jp.marinabaysands.com/restaurants/waku-ghin-jp.html

アクセス:MRTベイフロント駅直結

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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