三ツ星の「おばあちゃんの味」?Maggie Joan's

公開日 : 2015年09月25日
最終更新 :

CNNのシンガポールのベストニューレストランとしても選ばれた、注目の地中海料理店、Maggie Joan'sは、三ツ星の味をおばあちゃんの家のようなくつろいだ雰囲気で楽しめると人気のお店。

イギリス出身のOliver Hydeヘッドシェフは、ミシュラン三ツ星の、Waterside InnやGordon Ramsayでキャリアを積み、ガーデンズバイザベイの温室内にあるレストラン、POLLENのスーシェフを経て、ESQUINAで腕を振るったAndrew Walshの新店、Cureの立ち上げに協力した後、このMaggie Joan'sにやって来た腕利きのシェフ。三ツ星レストランの技を使って、洗練された地中海料理を生み出します。

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一方、Maggie Joansの名前は、共同経営者のDaniel Ballisの二人の祖母、MaggieとJoanの名前から。

今シンガポールで流行している食事が美味しいダイニングバーのコンセプトを、「おばあちゃんの家」という切り口で提供しているのです。

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なんといっても、普通の「おばあちゃんの家」がコンセプトなので、見つけるのには、少しコツがいります。もともとこの場所は、台湾風のお粥を提供するお店だったのですが、裏口に向いた半分のみを借りて改装。あえて裏通り側を選ぶことで、隠れ家的な場所にしたのだとDanielさんは言います。

気をつけないと通り過ぎてしまいそうな裏通り。ここが本当にレストラン?とちゅうちょしてしまいそうな、無機質な印象の扉を開くと、温かい色合いの照明と、カントリー調のクッションが飾られた、どこか懐かしさを感じる空間が広がります。

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うなぎの寝床のように奥行きがあり、落ちつける雰囲気。

Maggie Joan

「おばあちゃんの家では、いろいろなものが手作りでしょ?だから、発酵食品やピクルスなど、

様々な保存食を今作っているところなんだ」と、Oliverシェフ。まだオープン(8月31日)したばかりだったため、保存食の多くは出来上がっていませんでしたが、これから徐々に、メニューに加わるとか。

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「古きよき時代」がコンセプトなだけに、提供されるワインは、昔からワイン作りをしていたヨーロッパのワインのみ。ニューワールドワインは置いていません。料理に合わせて選び抜かれたワインは、グラスで18シンガポールドル~。

料理は、Danielさんのルーツでもある、地中海料理。

中東や北アフリカの影響を受けた地中海料理は、スパイス使いがアクセント。

Home made garlic and rosemary bread, hummus (5シンガポールドル)

手作りの中東風ヒヨコ豆のペースト、「フムス」は、オリーブオイルとクミンの香りが食欲を刺激します。滑らかな食感は、家庭料理とは一線を画すクオリティ。

Egg, dukkah & saffron mayo (6シンガポールドル)

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地中海に面する国は意外に多いもの。そんな国のひとつ、エジプトの調味料も使われています。ゴマなどのナッツとコリアンダー、クミンなどのスパイスを砕いて作るエジプトのソース、「デュカ」に、ヘーゼルナッツとパン粉を加えてアレンジ。ポーチドエッグにまぶして揚げています。

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ナイフを入れると、とろ~りと黄身があふれ、一口ごとに香りがはじけるナッツとの食感の対比が楽しめます。絶妙の火入れ加減は、さすがプロの技。

Roast Jerusalem artichoke and manchego (8シンガポールドル)

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もちろん、「おばあちゃんの味」も忘れてはいません。昔から食べられていたものの、忘れ去られていた味、エルサレム・アーティーチョークを時間をかけてローストした一皿。

ホースラディッシュのような外見ですが、辛味はなく、優しい甘みの芋のような印象。

半世紀以上前にはよく食卓に登っていたという、素朴な見た目の野菜ですが、イヌリンという食物繊維が多く、甘いのに血糖値があまりあがらないことから、ヘルシーな食材として再注目されているそうですよ。スペインの羊乳のチーズ、マンチェゴチーズとディジョンマスタードのクリームで、素朴な中にもコクと香ばしさをプラス。

Heirloom tomatoes, peach & burrata (21シンガポールドル)

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伝統品種として大切に受け継がれてきた「エアルーム(家宝)」トマトと、桃、ブッラータチーズをあわせて。このトマトが、太陽の光をぎゅっと詰め込んだような、とても甘いトマトなので、桃との相性が抜群。表面を軽くあぶって、更に甘みが濃縮しています。青臭くてトマトが嫌い、という人も、このトマトなら好きになりそう。ブッラータチーズがクリームのようにからまり、ちょっと蜂蜜でもかければデザートになりそうな味わい。シンプルだけれども美味しいのは、絶妙なバランスを構築しているから。添えられた、オリーブが香るタプナードが、前菜に引き戻してくれる役割を果たしています。

Yellow tail sashimi, carrots, & brandade (23シンガポールドル)

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「ちょうどピクルスが出来たところなんだ」と、Olivierシェフが持ってきてくれたのは、ブリの刺身に自家製の野菜のピクルス、更に干し鱈をピュレにした、プロヴァンスの郷土料理、ブランダードをあわせた一皿。滑らかなブランダードはとても上品で、刺身のしっとりとした食感によく合います。刺身にはオレンジの絞り汁がかけられていてほんのり甘く、南国の太陽を感じるアレンジ、ピクルスの酸味との相性も良いです。

Scallop carpaccio, peas & ham (21シンガポールドル)

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お店のシグネチャーディッシュでもある、美しい一皿。北海道産の刺身用のホタテをシェリー酒とオリーブオイルで作ったドレッシングとあわせ、ミントとグリーンピースのピュレ、グリーンピース、豆苗をあしらっています。豆の緑の香りと甘みが、ホタテの甘みとマッチ、イベリコハムのチップスが旨味と食感、程よい塩気を与えます。海の幸と山の幸の絶妙なコンビネーションは、新鮮な印象です。

Roast bass, pesto & marinated tomatoes (28シンガポールドル)

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皮目をカリリと焼き上げたスズキに、蜂蜜とバニラビーンズで甘く漬け込んだトマト、そしてバルサミコ酢で漬け込んだトマト、バジルソースを添えて。二種類に味付けされたトマトの異なる味わいが口の中ではじけ、ソースのような役割を果たしていました。皿の上で混ざってしまうソースと違い、トマトを漬け込むことで、それぞれの味わいを独立して保つことができ、印象深かったです。

Slow braised lamb, harisssa & pecorino (29シンガポールドル)

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個人的に特に気に入ったのがこの一皿。ラム肉をハリッサ(モロッコなどで使われている唐辛子を使った調味料)に漬け込み、1日半かけてじっくりと蒸し煮にしてから表面をあぶっています。カリカリの表面と、トロトロに煮込まれた中身の対比。炭火で皮をパリッと焼き上げた甘くてコクのあるラッテポテトとともに。コリアンダーがアクセントの青唐辛子のハリッサマヨネーズとの相性も抜群。軽くあぶったレタス、ペコリーノチーズを薄くスライスしたものがかかっています。

Roast apricots, basket ricotta & almonds (10シンガポールドル)

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素朴な見た目ながら、絶品だったのがこちら。ローズマリーの蜂蜜を使い、低温でじっくり煮込んだあんずを自家製のリコッタチーズ、飴がけのアーモンドと合わせています。ほのかな酸味を残したあんず、リコッタチーズのクリーミーさ、アーモンドの香ばしさがあいまって、絶妙な味を生み出しています。デザートにハーブを使うことで、甘すぎずきりっとした印象になり、かつ地中海らしい雰囲気になりますが、こういったハーブの使い方は、Olivierシェフが働いていたPOLLENの影響も感じられます。

White Chocolate, spiced crumble & passion fruit (10シンガポールドル)

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ホワイトチョコレートのデザートですが、インド産の希少で薫り高い、テリチェリー(tellicherry)ペッパーという胡椒を使って、辛味のアクセント。パッションフルーツはスモークして、野趣あふれる香りに。マイルドなホワイトチョコに、パッションフルーツの南国らしさをあわせるだけでなく、辛味やスモーク香をあわせることで、ひねりの利いたデザートに。

Orange cake, yoghurt & pistachio (10シンガポールドル)

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オレンジのケーキは、オレンジシロップがかけられていて、しっとりとした食感。ソースはすっきりとしたギリシア風ヨーグルトで重過ぎない組み合わせ。カルダモンの香りが中東から地中海に広がるエリアの雰囲気をかもし出しています。

全体として、大胆なテクスチャーの変化のつけ方、思い切ったスパイス使いが魅力。

POLLENに更にエッジを利かせたような印象です。

おばあちゃんの名前を冠した一見素朴なお店ですが、その裏にある料理のテクニックとこだわりは三ツ星レストランで磨きぬかれた一級品。

あえて田舎っぽさを打ち出すことで、料理の繊細さとのギャップが際立ちます。

まだオープンしたばかりですが、手作りの保存食などが徐々に出来上がってくるとか。

これからますます期待したい新店です。

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営業時間:ランチ 12:00~14:30(平日)、

     ディナー 18:00〜23:00、日曜休

住所:110 Amoy Street, #01-01,Singapore 068579(入り口は Gemmill Laneに面していますので、ご注意ください)

電話: +65 6221 5564

アクセス:MRTテロック・アヤ駅から徒歩3分

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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