シンガポールと日本を乾杯でつなぐ!10月1日は「日本酒の日」

公開日 : 2015年10月03日
最終更新 :

10月1日は日本酒の日。この日を世界で「KANPAI(乾杯)」する日として祝いたいと、

シンガポールと日本で「乾杯」イベントが行われました。

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和食店に限らず、イタリアンやスペイン料理など、意外な店でも日本酒を見かけることも多いシンガポール。アジアでの日本酒ブームの拠点になるのではないかと注目を集めています。

去年はシンガポールと佐賀で行われたこのイベントですが、今年は日本で初めて、全国一斉乾杯が行われることとなり、東京会場の明治記念館には約500人の日本酒愛好家が集結。

シンガポール側では、50軒の参加レストランで振る舞い酒が提供され、のべ1374人が参加。シンガポール時間午後7時30分(日本時間午後8時30分)カウントダウンとともに、日星同時に乾杯を行うというものです。

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今回の乾杯イベントのシンガポールサイドのメイン会場となった、日仏のフュージョン料理レストラン、ルウィンテラス(Lewin Terrace)には、国籍も様々な日本酒ファン70人あまりが参加。スカイプを使ってスクリーンに映し出された東京の日本酒愛好家とともに、いっせいに「KANPAI」の声があがりました。

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このルウィンテラスでは、80シンガポールドルを支払って「パスポート」と呼ばれる、それぞれの日本酒について説明されたリーフレットを受け取り、レストラン内の4つのブースを自由に回って、合計8種類の日本酒と、それにあわせて作られたフィンガーフードを楽しむ仕組み。

シンガポールで2回目となるこのイベントには、とっておきの日本酒とともに、新潟の市島酒造と大分の萱島酒造が参加しました。

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市島酒造からは、七代目で社長の、市島健二さんが現在10カ国で展開しているという、

日本酒のしずくをイメージしたラベルの海外版の商品を紹介。意外なことに、こちらの商品は海外展開が先で、この10月から逆輸入で日本での展開が始まるという、面白い日本酒です。

市島社長はアメリカの大学を卒業、堪能な英語を武器に、一年に何度も海外に飛び、日本酒の普及に努めているのだとか。

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特にアメリカで大ブレイクした日本酒が、写真で市島さんが手に持っている「シルクデラックス」。

発酵が進みすぎない、特別な酵母を使い、また通常の日本酒が単糖なのに対して、粒子の大きいオリゴ糖が含まれているため、シルクのように滑らかな舌触りと、甘いのにキレのいい後味を実現しているのだそう。

豚肉のクリームシチューとのペアリングでしたが、クリームのコクに負けず、豚肉に優しい甘みを加えていました。市島さんによると、アメリカでは照り焼きのような甘辛い味付けとのペアリングも好まれているということでした。甘くても後味がすっと消えるので、べたつきは皆無。水の味を楽しむような、上品な出汁の懐石、たとえば竹の子の煮付けなどに合わせても美味しくいただける気がしました。

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純米大吟醸には、白身魚のカルパッチョが。純米酒ではありますが、きりりと辛く、しゃんとした居ずまいの日本酒。「あまり手を加えていない魚とあわせたい日本酒です。特に、新潟でよく水揚げされる白身魚との相性が良いですよ」と市島さん。日本の昆布締めに近い印象のカルパッチョは、上に載ったコリアンダーリーフがアクセント。コリアンダーの香りに負けない、どこか潔さを感じる日本酒でした。

「魚どころの新潟の酒は、水のようにさらりとした飲み口が特徴で、魚介類との相性も抜群」と言うことで、本醸造の日本酒には、アサリの出汁の効いたシーフードトマトソースのペンネが。こちらは大吟醸よりも旨味が強く、米のまるみを感じます。どんな料理にも合わせやすそうなバランスの良さでした。

そして、デザートのペアリングも。さっぱりした梅酒は苺のティラミスと合わせて。梅酒と苺に共通する酸味が、梅と苺のタイプの異なる香りをまとめ、チーズのこくが優しく包む組み合わせでした。

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一方の萱島酒造の萱島徳取締役は、「九州の酒蔵ということで、甘い九州醤油を使った料理に負けない、米の味わいと酸味の生きた、しっかりとしたボディのある日本酒作りが特徴」と語ります。

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萱島さんが持っているのは、シンガポールで初めてお披露目されるという、「大吟醸秘蔵酒」。フォワグラと合わせて提供されていましたが、甘い吟醸香が口の中でフォワグラのソースのような役目を果たし、ふくらみとまるみのある味わいは、フォワグラの濃厚なコクに負けません。

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そして、ほのかな甘みと酸味のあるにごり酒「花にごり」とはシメジや竹の子など、野菜の煮つけを合わせて。口の中で、粕漬けのような香りが生まれます。ふきのとうなど、春の訪れを感じる時期の野菜の個性も、しっかりと受け止めでくれそうな感じのお酒でした。

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個人的な感想も書いてみましたが、酒蔵の方たちのお話を聞きながら飲むと、本当にイメージがふくらみます。ひとりで想像をふくらませるのも楽しいですが、やはりプロの解説を聞きながら味わうお酒は格別なもの。

今回の主催者のひとりである、利き酒師歴20年の日本酒のプロ、清永真理子さんは、定期的にシンガポールで日本酒のイベントを開いています。

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イベントでは、清永さんの解説付きで日本酒を知ることができますよ。興味のある方は清永さんのFacebookをご覧ください。

また、取材したルウィンテラスでは、参加者の7割が外国人。地元シンガポールのメディアや食通、そしてソムリエなど、世界の食のプロが集まっていました。

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Lewin Terraceのフランス人ソムリエ、アクセルさんは「ワインのぶどうの品種と同じように、日本酒は米の品種を選ぶし、テロワールのように土地ごとの特性があり、醸造の際に水を使う分、ワインより更に複雑といえる、とても深い酒」とその魅力を語ります。お店では日本酒のペアリングも提案しているそうですが、最近は日本酒を選ぶ人の割合が増えてきているのだとか。

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また、レストランの新規オープンのため、1ヶ月前にシンガポールに来たばかりだと言う、オーストラリア人ソムリエの女性は、「自分のレストランは和食ではないのだけれど、今シンガポールでは日本酒が注目されているので、うちでも扱う予定。きょうは日本酒について勉強しに来た」と話していました。

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全体的に、甘いお酒が好きな傾向のあるシンガポールの人たちですが、お話を聞いた方は意外に辛口志向。ひとりで訪れたという、中華系シンガポール人の女性は「辛口の日本酒を冷酒で飲むのが好き」、また同じく中華系シンガポール人の男性は「深みと個性がありつつも、すっきり飲めるクリーンな味の日本酒が好き」など、シンガポールの中でも一部で「辛口派」も増えているような印象を持ちました。

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もともと、新米を収穫し、日本酒を作り始める時期と言うことで決まった10月1日の日本酒の日。

清永さんは「日本酒の日」を「ボジョレーの解禁日」のような、世界的な記念日にしていきたいと意気込みます。

関連イベントが行われている15日までの期間中は、モハメド・スルタンエリアを中心とする協賛の飲食店10店で、「ハシゴ」という合言葉を伝えるとアルコール1杯とつまみのセットが10シンガポールドルで楽しめる「はしご酒」イベントが行われている他、スタンプラリー形式で三つの加盟店で日本酒をオーダーすると、先着300名に日本酒にまつわるグッズをプレゼントするなど、日本酒文化を広める取り組みが行われています。

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意外に知らなかった日本酒の魅力を、シンガポールで発見できるチャンスかも。

詳しくは、日本酒de乾杯 in Singaporeのフェイスブックをチェックしてみてください!

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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