4xFOURスペインからアンダルシア料理のPaco Moralesシェフが登場!
先日ご紹介した、世界中からやってきたミシュラン星付き店の4人のシェフが、週替わりで1ヶ月間ポップアップレストランをオープンするというイベント、4xFOUR(フォーバイフォー)が、10月28日からいよいよスタートしました。
最初のシェフ、Paco Morales(パコ・モラレス)シェフは、スペインのアンダルシア出身。
自身の名前を冠した、Restaurant Paco Morales(レストラン パコ・モラレス)でスペインのミシュランで一つ星を獲得しています。(現在はRestaurant Noorを経営)
エル・ブジや、今世界のベストレストランで4位のムガリッツで修行したシェフはちょっとクールなイメージがあったのですが、とても柔和な雰囲気。でも、料理について話し始めると、スペイン訛の英語で、止まらない情熱があふれ出てくる、そんな印象でした。
7世紀以上に渡るイスラム支配を経て、独自の食文化を持つアンダルシア料理は、実は今はすたれてしまっていたのだそう。それを、Pacoシェフは現代的な手法でアレンジして、今に生き生きとよみがえらせています。特に、ローズウォーターやアルガンオイル、ハーブやスパイスなどを使い、香味豊かな料理、というのがアンダルシア料理の特徴だとか。
会場は、緑豊かなデンプシーエリアにある、教会を改装した美しいレストラン、White Rabbit。
パンはさっくりとした固めのものでミルクの香りがして、バターは発酵した無塩バター。
一皿目は、
Puerta del Perdon(赦しの扉)と、Aubergine Fritter。
深い意味がありそうなこの名前は、スペインにあるモスクの扉を表しているのだとか。美しい唐草模様を思い起こさせる丸い形のカリカリのパンは、ぽつぽつと穴が空いていて、鮮やかな緑のワカメの粉で彩られ、所々にチャイブマヨネーズで点が描かれています。
エスニックな香りのハーブは、Indian Borage(インディアン・ボリジ)という、ミントのような香りの葉と、Courgetteと呼ばれる、ズッキーニの葉。スペインの南の端、目の前はモロッコというアンダルシア。そんな場所柄もあり、Pacoシェフは中東やアフリカ、そしてインドなどのエスニックなハーブをメインに使っているそうです。香ばしいパンと、ハーブの香り、そしてチャイブマヨネーズの穏やかなコクがバランスの良い味わいです。
もう一つは、ナスのピュレの入ったブリオッシュをジャガイモの葉で包み、上には蜂蜜のゼリーが乗せられています。ゼリーの上のスパイスは、クミンやミントのような、中東の香り。「一口で食べてくださいね」と言われて、一口噛むと、ふんわりとしたブリオッシュの食感、そしてシナモンの香りがパーッと口の中に広がります。
二皿目は、Turmeric&Sea Bream
ターメリック(ウコン)とカブのプリンに、揚げ出し豆腐のようなふわふわの口どけの衣で揚げた鯛、その上から食べる直前にみりんとしょうゆ、レモンで作ったソースをかけていただきます。
コースの中では一番インパクトのあった味。まず、とても濃く、苦みを感じるターメリックの味と、大根に近いカブの味、そしてしょうゆとみりん...で、イメージされたのはおでん。なぜだろう?と思ったら、ターメリックは和辛子にも使われているので、そんなイメージになったようです。
さらに、しょうゆとみりんのソースも相まって、揚げ出し豆腐を思わせるサクサクで軽い衣をまとった鯛、歯ごたえを残した枝豆がまさに新しい解釈の日本食、といった感じがしました。
三皿目は、Vegetabe Stew
季節の野菜を、異なった方法で調理して、牛肉の出汁と、ゴマペーストのようなタヒニソース、サフランをあしらったもの。ジャガイモ、ブロッコリー、アスパラガス、かぼちゃ、芽キャベツなどを、生、グリル、ゆでる、蒸すという4種類の方法で調理。特にアスパラガスが、生の部分はとても小さい穂先のやわらかい部分で、アスパラガスのグリーンの香りを楽しみ、蒸したもので甘みを楽しみ、グリルしたもので表面がキャラメリゼされた香ばしさを楽しみ...と、甘みの出方がそれぞれ違い、味わいわけができて楽しめました。
一見野菜ばかりが使われているように見えますが、上にリボンのように添えられているのは、スモークの香りが香ばしい、豚の脂身を紙のように薄く切ったもので、ベーコンなどの脂で野菜を炒めるのが美味しいですが、それをもっと純粋な味わいで表現したような印象でした。中東のゴマペースト、タヒニも野菜中心のメニューにうまみとコクを加えていました。
四皿目は、Perfect-Imparfect Corn
直訳すると、完璧に「完璧じゃない」トウモロコシ、という料理名。どういう意味なんだろう?と思ったら、目の前にやってきたお皿の上にはボールが。そして、その上からソースをかけると、
中がパカッと割れて、中身がのぞきます。スプーンですくってみると、キャビアと、たっぷりのカニの身が登場。
一口食べて最後にかけられたソースは暖かいコーンポタージュで、中のカニとキャビアはひんやり。くす玉割のような演出だけでなく、この温度差を楽しむメニューなのだと納得。
丸いボールの中にはコーンが入っていない、ある意味完璧ではないコーンですが、味わいという意味では完璧。バターの香りが生きた濃厚なコーンポタージュとカニ、という鉄板の組み合わせ。それでも、上には唐辛子をほんのり効かせたスモークベーコンのパウダーがかかっていて、辛みで濃厚さを引き締め、かつエキゾティックなアンダルシアらしさを伝えています。
五皿目は、Roasted Pigeon
鳩のローストは、良い素材でないとできない、鳩の血のソースで。表面は香ばしく、内側はしっとりとした火入れの鳩は、ほのかな赤身の香りと、オレガノやタイムなどのハーブ、そして生のオレガノの葉が優しく包みます。フレンチでも食べられる鳩ですが、地中海を思わせるハーブを使い、さらにコリアンダーのエスニックなアクセントを加えることで、アンダルシアのアイデンティティーが感じられます。
ここからは、デザート。
ここでも、アンダルシアを表現しようというPacoシェフの思いが十分に感じられます。
六皿目の、Orange Blossom & Ginger
オレンジ尽くしの一皿ですが、真ん中はクリームがまろやかな、オレンジアイスクリーム。ソースは、オレンジの花から取ったオレンジフラワーウォーター。アンダルシアでは、ローズウォーターを料理に使うなど、花の香りというのはとてもなじみのあるものなのだとか。確かに、例えばトルコのお菓子、「ターキッシュディライト」はバラの香りがつけられていたり、中東系のお菓子には、花で香りづけしているものがいろいろあるのを思い出しました。さらに、この花の蜜のような繊細な香りのソースを吸い込んだ小さなサイコロ状のオレンジのケーキ、オレンジの実、ふんわりとしたマシュマロは淡雪のような口どけ。そこに、Pacoシェフは、生のバジルの葉と生姜で、きりっとしたアクセントを加えるのを忘れません。
七皿目は、Textures of Carob
まだヨーロッパにカカオが伝来していなかった時代の10世紀ごろ、宝石と同じ価値があるとして取引されていたマメ科の植物、キャロブ。宝石の重さの単位「カラット」は、「キャロブ」から来ているのだとか。地中海原産のキャロブは、チョコレート人気の陰に隠れた存在でしたが、ここのところ、低カロリーであることなどが注目を浴び、再注目されている食材。味は確かに、チョコレートをより植物っぽくしたような、素朴な味。
アイスクリーム、ケーキ、サブレと3種類に変化したキャロブを楽しみますが、アイスクリームには、アンダルシア特産のシェリー酒の中でも、濃厚な味わいで知られる「ペドロ・ヒメネス」をひと垂らししてあり、蜂蜜のようなお花のような香りがあります。そして、サブレは塩サブレのような感じで、カカオバターを使わない、昔ながらの製法のチョコレートに近いような味わい。
ケーキには、ところどころにクミンが!この辺りの、一ひねりあるアクセント、好みは分かれるかもしれませんが、私はかなり好きでした。
Pacoシェフの料理は、デザートを含めて、すべての料理にハーブかスパイスが使われていて、新鮮な感覚を呼び覚ます、これまでにない料理。お聞きすると、遠い昔に消えてしまっているアンダルシア料理を、自分の解釈で新しい料理として世界の人に紹介していきたいということでした。
確かに、スペインの中でも独立した文化を持つアンダルシア、私もアンダルシア料理を食べたのは初めてかもしれません!
日本には一度だけ来たことがあり、刺身とラーメンが最高だった!というPacoシェフ、近々2回目の訪日を予定しているそう。
ふるさとアンダルシアの味を現代に、そして後世に伝える伝道師。Pacoシェフの料理は、11月1日まで食べられます!
そして、このダイニングイベント4xFourはこの後も、個性あふれるシェフたちが登場します!
■クロード・ボシ(Claude Bosi) 11月3~8日
ハイビスカス=Hibiscus (イギリス、ミシュラン2ツ星)
美食の街・リヨン出身、アラン・パッサールの「アルページュ」のスーシェフとしてミシュラン三ツ星を獲得、同じく三ツ星のアラン・デュカス率いる「プラザ・アテネ」を経て、自らのレストラン「ハイビスカス」をオープン。
「Chef's Chef of the year」賞を受賞し、BBCの料理番組にレギュラー出演するなどでも知られていて、高度な技術を使って素材の味を引き出した料理は、多くの人に好まれそう。
■ダビデ・スキャビン(Davide Scabin) 11月10~14日
コンバル・ゼロ=combal.zero(イタリア、ミシュラン2ツ星)
イタリア出身のシェフは、別名「マジシャン」ということからも分かるとおり、変幻自在で実験的な料理を生み出しています。現代美術館の中にある自身のレストラン「コンバル・ゼロ」は、シェフの「R&D(研究開発)」の拠点でもあります。
「実験的」というのは決して比喩ではなく、ヨーロッパ各国が共同で設立した宇宙開発の拠点、欧州宇宙機関の依頼を受けて、宇宙食の研究もしています。冒険心をくすぐる、ここにしかない料理が楽しめるはず。
■オリー・ダボス(Ollie Dabbous) 11月16~20日
ダボス=Dabbous(イギリス、ミシュラン1ツ星)
2週目に登場するクロード・ボシシェフの「ハイビスカス」でスーシェフを経た後、ファット・ダック、ピエール・ガニエール、アストランス、ノーマなど、名だたるレストランでキャリアを積んだ注目の若手シェフ。ロンドンに自らの名前を冠してオープンしたレストランは、席を取るのに1年待ちの人気店。名店で磨かれた技で「手作りの温かみのある、旬の食材にこだわった料理」を提供するのがコンセプト。
素材の味を引き出したナチュラルな味わいが持ち味だけに、シンガポールの食材がどのような形に生まれ変わるのかも楽しみ。
ブランチは4皿からなるコースメニュー、ディナーは8皿からなるコース。公式ウェブサイトwww.4xfour.sg. からチケットを買うシステムです。
VISAカードでの支払いの場合、割引価格で購入できます!
<DATA>
■4XFOUR
http://www.4xfour.sg/
会場:39 Harding Road, Singapore 249541(レストランWhite Rabbit)
【4コースブランチ:12:00~】
Visa 148シンガポールドル
その他 168シンガポールドル
【8コースディナー:19:00~】
Visa 248シンガポールドル
その他 288シンガポールドル
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筆者
シンガポール特派員
仲山今日子
趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。
【記載内容について】
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