「Stellar at 1-Altitude」星空で食事をしているみたい!極上の美食体験

公開日 : 2016年03月05日
最終更新 :

前回ご紹介したワールド・グルメ・サミットでも、メイン会場となるレストラン、Stellar at 1-Altitude(ステラ・アット・ワン・アルティチュード)。

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「星、輝かしいもの」を意味するStellarという名前通り、ラッフルズプレイスの高層ビルの最上階、最も星空に近い62階にあります。夜は、眼下に広がる夜景の中に入り込んで、星空の中で食事しているような気分になる、ロマンティックなダイニングです。(ちなみに、屋上は美しい夜景と共にカクテルなどを楽しめるバーで、遅い時間からはDJが入ってにぎわいますが、1階下のレストランは、遅くなっても静かな落ち着いた雰囲気。接待などでの使用も可能です。)

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マリーナベイサンズも眼下に眺めるような、高層階ならではの美しい景色と共に、味はもちろん、盛り付けやプレゼンテーションにもこだわり、「総合的な体験」を表現したいと話すのは、オーストラリア・メルボルン出身のChristopher Miller(クリストファー・ミラー)、通称、Chris(クリス)エグゼクティブシェフ。プレステージシャンパン、Krug(クリュッグ)のオフィシャルアンバサダーになるなど、その実力は折り紙付き。今年、日本で話題のレストラン「Sugalabo」で、ジョエル・ロブションの愛弟子として知られる、須賀洋介シェフとも、コラボレーションディナーを予定しているのだとか。

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世界的にも高い評価を得ているChrisシェフですが、なぜこの道を選んだのか、とお聞きすると、「アクシデントで」という、意外な返事が。実は、メルボルンの大学でマーケティングを学んでいたChrisシェフは、卒業旅行の途中、さらなる旅費を稼ぐために、ロンドンの著名なレストラン "190 Queens Gate in South Kensington"で働き始め、TV出演でも知られるイギリスの有名シェフ、Antony Worrall Thompson(アントニー・ウォラル・トンプソン)シェフの下で働きます。「メンター」でもあるAntonyシェフの影響で料理の楽しさに目覚め、「気づいたら6年も経っていた」というChrisシェフは、マーケティングではなく、料理の世界で生きていくことを決めます。

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Antonyシェフからは、「将来を考えて動くことや、自由であること、そして他人と自分を比較せず、自分らしいスタイルで仕事をしていくことを学んだ」と言います。料理にまつわる蔵書がぎっしりと埋め尽くされた、Antonyシェフの巨大な書庫からも、多くの学びを得たそうです。

そんなChrisシェフの料理のポリシーは、「好奇心」だとか。ヒマラヤに登るなど、世界を旅するのが大好きだというChrisシェフの口から出ると、納得です。「面白い食材を探すことや、一皿ごとのストーリーを考えるのに、しっかり時間をかけている。来た人にいつも驚いてほしいから、シグネチャーディッシュはいらないと思っている」と話します。

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とはいえ、食べるのを戸惑ってしまうような奇抜な料理が出てくるわけではなく、料理のスタイルはあくまでもシンプルで軽やか、素材の味を生かしたオーストラリア料理。

「広大な自然に囲まれたオーストラリアの食材は本当に美味しい。そして、ヨーロッパのように伝統に縛られ過ぎることなく、自由で開かれているのがオーストラリア料理なんだ。アジアの影響も受けている」のだそう。

実際、Chrisシェフも、タマリンドウォーターなど、アジアの食材を使うこともあるそうですが、作るのはフュージョン料理ではなく、あくまでもヨーロッパのバックボーンのあるオーストラリア料理。

「フュージョン料理をとても上手に作るシェフもいるけれど、僕はフュージョンは作らない。アジア料理の中では、素材の味を感じられて、シンプルな日本料理のメンタリティーが好き。味を重ねていく西洋料理に比べて、日本料理は引き算。皿の上に存在する全てのものに、ちゃんと理由があって、素晴らしい構成とバランス感覚が保たれている。実は、普段から日本料理が大好きで、刺身にちょっとだけ岩塩とレモンをかけたものと、サラダが理想の食事。毎日でも食べられるよ」と語ります。

そんなChrisシェフのおすすめの、Constellations(コンステレーションズ、星座)コース(6皿120シンガポールドル、8皿190シンガポールドル)のメニューから、テイスティングサイズでコースを構成していただきました。

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最初のアミューズは、遊び心あふれるもの。軽い炭のクラッカーに、白アスパラガスのソース。土から顔を出す白アスパラガスの姿を模したような一口。軽やかな春の訪れが感じられます。続いては、バジルソースを添えた、ジャガイモの「チュロス」。どこかスナック菓子のような見た目ですが、表面がさっくり、内側はしっとりしたジャガイモの自然な味わいです。

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その次のアミューズは、壺のような形の、密封できるガラス瓶。春が旬のグリーンピースのスープに、アップルウッドの煙を閉じ込めたのだとか。開けてみると、ふんわりとした、どこか野原を思わせるような煙が広がります。煙は火から生まれるもの。味のイメージは熱いのに、ひんやり冷たいグリーンピースのスープという、意外性ある対比が見事です。サクサクとしたフライドシャロットの香ばしさがアクセントになっていました。

「シンガポールはいつも暑いけれど、食で季節感を感じてもらいたい」とのことでした。

ここからは、前菜。

Live Jade Abalone, Foie Gras, Morel

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オーストラリア・ヴィクトリア州から冷水タンクに入って活きたまま届けられるアワビは、その日入荷した新鮮なものだけしか使わず、表面だけをごく軽く焼いて、フォアグラとモリーユ茸のソースで合わせます。薄く切られたアワビは、程よい塩加減で、とても柔らかく、半分刺身のようなフレッシュな味わい。

ソースのような感覚で添えられたフォアグラも、表面がカリッと、そして中はクリーミーに仕上げられています。日本では肝のソースと共に食べられるアワビですが、考えてみたらフォアグラも「肝」。形は固形ですが、とろけるような内側は、まるでソースのような存在感。バターの香りのモリーユ茸のソースも、香りとコクを後押しします。

続いては、「カルボナーラ」、Gamberi Prawn 'Carbonara'

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カルボナーラを再構築した一皿。左から、フランスから届いたという、Gamberiと呼ばれる特産のエビ、真ん中はスモークオイルとベーコンの灰で香りづけした卵黄、右にはパルメザンチーズのクリームに、ミルクのたんぱく質で作ったカリカリの湯葉のようなチップスが載っています。

まずこのエビがとっても甘い!エビ味噌もとても甘く美味しくて、これだけでとても幸せな気分になるのですが、真ん中の卵黄を割って濃厚なソースにつけ、横に添えられたパルメザンチーズのクリームと共にいただくと、確かにとっても上品なカルボナーラの味に。本来使われるベーコンの脂の甘みや濃厚さを、上質なエビの味に置き換えて昇華させたような一皿。

続いて、そんな濃厚さをいったんリセットするような、野菜のメニュー、Wood Fired Cauliflower。

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シンプルに木の直火でグリルしたカリフラワーと、その下にはカリフラワーのピュレが。

高温でグリルしたカリフラワーは、薪で焼いただけあってとても香ばしく、野菜の甘みが引き出されています。タヒニと呼ばれる中東のゴマソースに、ペルシャ風のフェタチーズ、ピスタチオ、ザクロなど、中東名産の大地の恵みが添えられています。

ザクロのフレッシュな食感と甘み、フェタチーズの塩気、ピスタチオのコクと香ばしさが融合し、刻まれたミントの葉がアクセントになっています。使われているのは野菜とチーズだけなのに、しっかり存在感のある一皿。「たとえ、『つつましい』と思われるような素朴な食材であっても、最高の素材を選び、適切に調理をすれば、十分ファインダイニングで出すのに値する一皿に仕上がるんだ。」とChrisシェフ。

続いては、干し草の香りをまとわせて丸ごと焼き上げた鶏、French Organic 'Poulet Noir' Chicken

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切り分けてサーブされたフランス産のオーガニックの黒鶏に、ポルチーニ茸を入れた、Pearaと呼ばれる素朴なソースをその場でかけてもらい、いただきます。「ヨーロッパの伝統的で素朴な料理だよ」とChrisシェフ。

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一口食べると、鶏肉の甘いこと!こんなに濃厚な味の鶏肉はなかなかないかも知れません。噛むと、複雑で豊かな香りが口の中に広がります。

また、こういった素朴な料理は、どうしても塩気が強めなものが多いイメージがあったのですが、Chrisシェフはどの皿も、素材の味を引き立てる、ぎりぎりの程よい塩加減で仕上げてあり、塩気をうまみととらえさせるタイプの料理とは全く違う、良い素材を生かす仕上がり。素材の良さを最大に引き出すための引き算ができる、このバランス感覚がとっても好みでした。カリカリの鶏の皮にはナッツのような香ばしさがあり、添えられたチェリートマトはあくまでも甘く、最高級のオリーブオイルメーカーとしても知られる、フランスのChateau d'Estoublon(シャトー・デストゥブロン)社の緑のオリーブを使ったピュレは、フレッシュな緑の豊かな香りがあります。素朴な鶏の丸焼きも、洗練された、でも料理が本来持っている温かみと満足感は失われない一皿に仕上がっていました。

そして、Chrisシェフが大好きな食材で、「舌の上で踊る天使」と表現する、薪オーブンで焼き上げたA5の飛騨和牛Japanese Hida Wagyu Rib Eye A5が。

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天使??と思いましたが、食べて納得。表面は薄くカリッと、中はとても柔らかくジューシー。なめらかで柔らかい肉質と、噛む度にはじける脂は、「天使が踊る」という表現がぴったりでした。

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横に添えられているのは、左から、伝統品種の人参、エルサレムアーティーチョークという、ヨーロッパで一時期消えかけていた伝統的な根野菜のピュレ、そして人参と黒ニンニクのピュレ。左から右にいくにつれて、うまみが濃くなっていく印象です。

伝統品種の人参は、茹でて、ほんのりとバターの香りをきかせただけ。それでも、人参本来の香りと甘みがあり、濃厚な味わいの飛騨和牛とのバランスも抜群。エルサレムアーティーチョークは、ゴボウを思わせるような大地の香り。人参と黒ニンニクのピュレは、野菜のうまみを表現しています。薪で焼いた香ばしさと大地の香りの中でいただく極上のステーキ。

美しい夜景に、どこかオーストラリアの大地の息吹を感じる、ほっとする味わい。「料理を作る際には、コントラストを大切にしている」というChrisシェフ。こんな意味でのコントラストも、楽しめるお店です。

そして、このコースの締めくくりのデザートは、プレゼンテーションも含めて楽しむ「Dessert Art」。お店のチーフペストリーシェフJasmin Chew(ジャスミン・チュー) さんが目の前で見事な一皿を仕上げてくれました。まるで夜空のような漆黒の大きなお皿に、食用の金粉で、美しい流れ星のような模様がみるみるうちに描かれていきます。コース名通り、お皿の上に表現されるConstellations(星座)。

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メレンゲで絞られた星は、バーナーでこんがりと表面を焦がし、アイスクリームと美味しそうなケーキ、チョコレートでできた丸いボールが次々とレイアウトされていきます。Jasminシェフ、おもむろに小さなレードルに入れたラム酒を丸いボールにかけていきます。すると、美しい青色の炎が立ち上り、溶けたチョコレートの中からは美しく盛り付けられた、フレッシュな苺が登場!

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全体の夜空を思わせるプレゼンテーションも相まって、まるで宇宙の新星誕生の瞬間を見ているような、そんな錯覚を覚えるほど。ちなみに、こちらのデザートの名前は、Valrohona Chocolate Praline Fire Ball(ヴァローナ・チョコレート・プラリネ・ファイヤー・ボール)。目にも鮮やかなデザートで、とってもおすすめです。味も、ヴァローナ社の香りのよいチョコレートに、ほのかな酸味のある苺やベリー類がベストマッチ。ラム酒のしみこんだスポンジも絶品でした。

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もう一つは、Vanilla Blancmange(バニラ・ブラマンジェ)。ふるふるした食感のブラマンジェに、パッションフルーツのソースが添えられ、すっきりとした印象に。アーモンドのクロッカン(チュイルのようなお菓子)がサクサクしたアクセントとナッツのコクを加えています。

味も、景色も、演出も。すべてにおいて、特別な体験を楽しめる王道レストラン。

思い出に残る特別な日を過ごしたいという方に、とてもおすすめです。

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■Stellar at 1-Altitude(ステラ・アット・ワン・アルティチュード)

営業時間:ランチ 11:30~13:45(平日のみ)、ディナー 17:30~21:30、(いずれもL.O.)無休

住所:1 Raffles Place, Level 62, Singapore, 048616

電話:+65 6438 0410

アクセス:MRTラッフルズプレイス駅徒歩1分

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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