今月は日本人シェフの競演、$100 Gourmet 前編「IKYU」
毎回、海外からミシュラン星付きシェフなどを招いてコラボレーションイベントを行い、特別に作られたメニューが、100シンガポールドル(Citibankカード使用の場合、他社カードの場合は180シンガポールドル)100Gourmet(ワンハンドレッドグルメ)。
今回は、One Fullertonのイタリアン、Folino(フォリーノ)の元エグゼクティブシェフで、現在はイギリス・ロンドンのレストラン、Bella Cosa(ベラ・コサ)の、鳥居健太郎シェフを招いてのイベント。迎えるシンガポールサイドのシェフは、IKYU(いっきゅう)の関琢磨(せき・たくま)シェフと、Lewin Terrace(ルウィンテラス)の松本圭介(まつもと・けいすけ)シェフ。
今回は、まずはIKYUのコラボレーションにお邪魔してきました!関シェフは、自らのレストラン、IKYUをオープンするまでは、マリーナベイサンズにある和食のファインダイニング、Hide Yamamoto(ヒデ・ヤマモト)の総料理長として働くなどのキャリアを。
和食のIKYUとのコラボレーションに際して鳥居シェフは、「ロンドンと違って日本の食材が手に入りやすいシンガポール。イタリアンではありますが、日本人としての側面を出していきます」と語ります。
まず、スタートは 関シェフのChilled Oyster。三重県の牡蠣を表面だけ軽く湯通しして、旨みを閉じ込め、紅大根と海藻、キヌアを加えて胡麻のソースで和えてあります。胡麻の食感とリンクするプチプチした食感のキヌアがアクセントで、日本の牡蠣ならではの繊細な旨みが楽しめます。どこか緑の香りのするみずみずしい牡蠣に、スイカを思わせるような、フレッシュなぶどうのみずみずしさを残した新潟のスパークリングワインSparkling wine Delawareがマッチします。阿部宗毅さん率いる、L'Escargot(レスカルゴ、フランス語でカタツムリという意味)ワイナリーが新潟市南区白根のデラウエアを100%使い、赤ワインと同じ製法で作ったというロゼスパークリングワインです。カタツムリがのんびりと過ごすようなブドウ畑を作り、自然と共生するワインづくりを目指しているそう。
続いては、鳥居シェフの、Beetroot Textures, Caramelized Foie Gras, Cacao Nibs, Balsamic Vinegar。
「ビートルートの甘さと、大地の力強さを感じる味が好き」だという鳥居シェフ。土のミネラル感を感じる甘い香りのカカオニブ、そしてその食感と甘みに、表面をブリュレのような砂糖の層で表面をキャラメリゼさせたフォワグラが重なります。フォアグラは、ロンドンではグラッパとコニャックでトーション仕立てにするところを、今回は特別にアジアを意識して、コニャックを日本酒に置き換えたのだとか。カカオのコクに、バルサミコが加わり、奥行きを与えています。クリームを加えたビートルートのフォームが軽やかに全体をつなぎます。あくまでも個人的な印象ですが、甘い香りの重ね方など、素材の組み合わせなどに、シンガポールにいらした時よりも、更にヨーロッパ的なエレガントさが加わった気がします。
そして、コラボレーションメニューのHirame。ヒラメのカルパッチョに塩昆布、柚子ポン酢、日本の桃太郎トマト、そしてグリーンピースとブッラータチーズがあしらわれています。前のビートルートの皿で酸味があまり使われていない分、ここでの酸味が引き立ちます。昆布締めを再構築したかのような塩昆布との合わせ方、柚子ポン酢はしょうゆの香りが立ちすぎないバランスになっていて、トマトの酸味、ブッラータチーズのコク、そしてグリーンピースの春の香りとほろ苦さともいい相性になっています。
魚のメインディッシュは鳥居シェフ、Pan Fried Black Cod。パルマハムを巻いて、フライパンで焼き上げた鱈ですが、この鱈がまるで甲殻類のように香り豊か。まるで上質なカニの身を食べているかのような印象です。そして、下にはサフランライスのリゾット、上からは干しシイタケの出汁。今回、IKYUでのコラボレーションでは、日本人として楽しんでメニューを作りたい、と言っていた鳥居シェフ、「焼きおにぎりのお茶漬けをイメージしたんですよ」とにっこり。横に添えられた軽やかなチップスは、サフランライスをピュレ状にしてからチップにして脱水し、からりと揚げたという手間のかかった品。今回、ロンドンから運んできたそうです。
椎茸の出汁を一口いただくと、塩気を究極までそぎ落とした味、そしてその分濃厚な椎茸の旨みを感じます。ベイリーフや玉ねぎ、生ハムなどで、洋風に仕上げたコンソメのような印象です。そこに、表面をオリーブオイルでカリッと焼いたリゾット。カリカリのおこげの部分の香ばしさの奥に、サフランの華やかな香りが立ち、パルメザンチーズが旨みをプラス。ライスクリスプの香ばしさも、また違ったお米の魅力を感じさせます。出汁に浸ることで味が変わっていく、その変化も楽しめる一皿になっています。
肉のメインディッシュは関シェフ。Robata Iberico Pork Shio Koji。炉端焼き風に炭焼きしたイベリコ豚は、塩麹の旨みと相まって、脂の旨みがとてもまろやかに、厚みとまるみを感じられます。ステーキ&フリットのような感覚で、野菜の天ぷらが添えられています。みりんやしょうゆ、生姜、そして少しコンソメのような肉の香りもする関シェフ特製のソースと共にいただきます。
デザートは、Ricotta Cheese Tart、リコッタチーズのタルト。タルト生地にもたっぷりとリコッタチーズを使ったという、鳥居シェフ特製のリッチな香りのチーズタルトに、関シェフ作の味噌ジェラートと、程よい塩気が心地いい味噌クランブルが合わさり、まるでキャラメルのような香ばしさ。ほのかな苦みの生きた抹茶のフォームとチップス、カボスの酸味が、全体を軽やかに仕上げている印象でした。キャメロンハイランドで作られているという、Chitose Strawberryを添えて。日本のイチゴの甘さと、程よいバランスの酸味を堪能しました。
2人の優れた日本人シェフのコラボレーション、そこにさらに、日本のワインメーカーや苺生産者の思いが重なるディナー。日本人でよかった、としみじみ感じられる時間でした。
(新潟のワイン醸造家、阿部宗毅さん)
この100Gourmet、IKYUとのコラボレーションは今日(22日)まで、Lewin Terraceとのコラボレーションが24日~26日の日程で行われます。Lewin Terraceについてはこちらもご覧ください!
そして、来月の100Gourmetは7月21日~25日、オーストラリアで2つのハット(星のような格付け)を持つ、Bentley Restaurant & BarのBrent Savageシェフが登場。迎えるのは、オーストラリア人、Andrew Nocenteシェフが率いる、Salted and Hung。 チケットは売り切れることも多いので、早めに公式ウェブサイトをチェックされることをお勧めします!
<DATA>
■IKYU(いっきゅう)
営業時間:ランチ 11:30~14:30、ディナー 18:00~22:30 (月曜休)
住所:5 yong siak street, singapore 168643
電話: +65 6223 2003
アクセス:MRTチョンバル駅から徒歩8分ほど
■ Lewin Terrace (ルウィンテラス)
営業時間:ランチ 12:00~15:00、ディナー 18:30~23:00 (無休)
住所:21 Lewin Terrace Singapore, Singapore 179290(Coleman Street の消防署とプラナカン博物館の間から入ります)
電話: +65 6333 9905
アクセス:MRTシティーホール駅から徒歩10分ほど
■$100Gourmet公式ウェブサイト
http://100gourmet.sg/
筆者
シンガポール特派員
仲山今日子
趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。
【記載内容について】
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