【熊本復興支援イベント】100Gourmet 後編・Lewin Terrace

公開日 : 2016年06月26日
最終更新 :

毎回、海外からミシュラン星付きシェフなどを招いてコラボレーションイベントを行い、特別に作られたメニューが、100シンガポールドル(Citibankカード使用の場合、他社カードの場合は180シンガポールドル)100Gourmet(ワンハンドレッドグルメ)。

今回は、One Fullertonのイタリアン、Folino(フォリーノ)の元エグゼクティブシェフで、現在はイギリス・ロンドンのレストラン、Bella Cosa(ベラ・コサ)の、鳥居健太郎シェフを招いてのイベント。迎えるシンガポールサイドのシェフは、IKYU(いっきゅう)の関琢磨(せき・たくま)シェフと、Lewin Terrace(ルウィンテラス)の松本圭介(まつもと・けいすけ)シェフ。

前回に引き続き、Lewin Terraceでの後編をお届けします!

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今回のコラボレーションのもう一つの目的は、熊本の復興支援。「海外にいても、被災地を支援したい」そんな共通の思いを持つ鳥居シェフと松本シェフが話し合い、熊本の食材をなるべく多く使い、シンガポールの人たちに熊本の食材について知ってもらうだけでなく、収益の一部を義援金として熊本に送ることになっています。

前回のIKYUでは、日本人としての遊び心がテーマでしたが、今回はフレンチの松本シェフとのコラボレーションということで、「王道のイタリアンで思い切り勝負しますよ!」と鳥居シェフ。

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和食とフレンチのフュージョンを打ち出している松本シェフも、遊び心を盛り込んだ新しいメニューで迎えます。

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そんな2人のコラボレーションの最初のメニューは、Lewin Terrace名物の、八寸 "Hassun"- Small Selections of Amuse BoucheいつもLewin Terraceでお客様をお迎えしている、五十嵐貴人ヘッドシェフが「ようこそ、ルウィンテラスへ」というご挨拶と共に、にこやかにサービスします。

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和食の八寸をイメージした、細部まで意匠を凝らした小さなアミューズの盛り合わせです。

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まずは、写真上のグラスに入った、松本シェフの、Kumamoto Shrimp with Provence Herbs。暑い中いらっしゃったお客様に、一番に喉を潤してほしい、そんなおもてなしの心が詰まった小さな冷製スープ。甘い熊本の海老に、トマトの中心の部分のエッセンスで作ったクリアスープ。夏の日にまるかじりする冷やしトマトのような、清涼感あふれる品です。アップルジュースを合わせて、フルーティーに仕上げてありますが、べたついた感じはなくすっきり。オリーブオイルを上にひと垂らししてあるので、口の中で緑の香りが混ざり、飲み進めるごとに生まれる異なったバランスが、フレッシュな印象を演出しています。

そして、鳥居シェフの一皿は、日本の旬のそら豆を使ったエスプーマBroad Beans Espuma & Pecorino Romano。そら豆の緑の香りに、オリーブオイルのパウダーのすっきりとしたコクが深みを与え、エスプーマの滑らかな口当たりに、同じく繊細な口当たりのパウダーに仕立てられたペコリーノ・ロマーノチーズがコクを加えています。上にちょこんと乗っているのは、豆の新芽。あえてハーブなどで強い香りをつけずに、自然なそら豆の味と旨みを最大限引き出していて、日本人シェフならではの引き算的な感性を感じます。

松本シェフによるホワイトアスパラガスのサラダ、White Asparagus Salad & Truffle Marmalade。丁寧に下ごしらえしたホワイトアスパラガスはじゅわっと甘みが広がり、その上には春の土の香りのような、トリュフのママレード。間に挟まれたほのかに味噌を効かせたマヨネーズソースが、まろやかさをプラスしています。

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再び、鳥居シェフの、熊本・天草産のブリのカルパッチョ、Amakusa 'Buri' Yellowtail Carpaccio(写真右)。

脂の乗ったブリに、酸が立ちすぎず柔らかい印象のラズベリービネガー、そして酢漬けにしたアンチョビをほんの一切れだけ添えて。アンチョビの香りをまとったブリの身のとろけるような食感、酢が脂の乗ったブリの旨みを引き立てます。イクラがコクを後押しします。

松本シェフの、沖縄のアグー豚のリエット、Agu Okinawa Pork Rillettes & Onion Tartineは、豚のリエットに、じっくりといためた飴色玉ねぎが甘みをプラス。豚の脂身のナッツの印象を強める松の実、タルト生地自体も、旨みがあり、お酒にもぴったり。

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そして、鳥居シェフの、モッツアレラのパンナコッタ、Mozzarella Panna Cotta & Tomato。モッツアレラチーズがムース状になったパンナコッタに、甘い2種類のトマト、そして黒オリーブのクランブル。繊細な食感ですが、小さく刻んだパルマハムが、コクとまたもっちりとした食感をプラスして、しっかりとした旨みで印象に残る一皿になっています。

そして、この八寸に合わせてペアリングで提供されるのが、今回特別協賛の、Kenzo Estate(ケンゾー・エステート)のロゼワイン、YUI Rose 2014。

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イチゴなどの赤いベリー類のようなふくよかな香りがありながら、きりりとした味わいのワインです。

そして、松本シェフのシグネチャー、Foie Gras & Corn Veloute。

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フォワグラのフランの上に砂糖を焦がしたごく薄い層を作り、北海道のスイートコーンだけで作った自然な甘さの冷製スープをかけたもの。ローストした醤油味の蕎麦の実を添えて。今回は、その上に更にコーンの新芽が添えられています。これが、甘草かと思うほどの独特の甘みがあり、生の葉ならではの新鮮さで、まったく新しい一皿に仕上がっています。

続いては、鳥居シェフのタリオリーニ、Tagliolini。

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熊本からやってきたヒオウギ貝に、ムール貝を合わせ、サフランのソースでパスタに仕上げています。ホタテを更に繊細にした印象のヒオウギ貝は、貝柱と肝の部分を分けてあり、貝柱の甘み、そして肝の濃厚なコクと、違った味が楽しめます。ヒオウギ貝の、日本の貝ならではのまろやかな味わいに、しっかりした海水の香りと塩分を感じるムール貝の対比が楽しい一皿です。ほのかなクリーム感のサフランのソースは、華やかな甘い香りを、そしてイタリアのからすみ、ボッタルガがコクをプラスしています。仕上げにかける、パセリとルッコラのパン粉は、かまどでパンをカリカリに焼いてパスタにかけていた、南イタリアの伝統的な風習へのオマージュ。仕上げのレモンの香りが、全体をすっきりとまとめています。もちろん、もっちりとしたパスタの火入れも完璧でした。

魚料理は、松本シェフの、天草の鯛を使った一皿、Amakusa Sea Bream。

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カルダモンを効かせた、甘い人参のピュレ、はちみつのような甘さのトマトは、上の紫蘇のすっきりとした味と素晴らしいマリアージュ。鯛は、コラトゥーラ(イタリアのアンチョビで作った魚醤の一種)で下味をつけ、イタリアンの鳥居シェフの料理とも、すんなりなじむ流れになっています。そして驚いたのは、白きくらげを使っていること。南フランスのピメントエスペレット、マイルドな唐辛子で下味をつけ、食感のアクセントに。鯛は皮なしで提供されたのですが、白きくらげはまるで、臭みのない魚の皮のゼラチン質の部分を食べているような印象でした。地中海の甘いスパイス、そして力強い野菜の旨み。全体的に、太陽の恵みをいっぱいに受けた、イタリアにも近い南フランスを思わせる味わいに仕上がっています。フレンチらしい、甲殻類のクリームソースが添えられていますが、紫蘇と合わさっているので、すっきりと重すぎない仕上がりになっています。料理は視覚のイメージから作るという松本シェフ、ピンク色のドットもとてもかわいらしい盛り付け。こちらはちなみに、赤紫蘇のソースでした。

鳥居シェフが肉料理、'Steak & Chips'。

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イギリス料理と言えば、シンプルに焼いたステーキや、フィッシュアンドチップス。そのイメージを逆手にとって、シンプルな料理を再解釈して作った遊び心あふれる一皿。フライドポテト、いわゆる「チップス」を、3種類のスタイルに仕上げたジャガイモで表現。一度ゆでてから揚げた「フライドポテト」はカリッ、さっくりとした食感が楽しいスナック風に、滑らかなピュレ、そして中にポテトとゴルゴンゾーラを詰めたパスタ仕立て。程よいミディアムレアに仕上げた鹿児島産の和牛のサーロインは、しっかりと脂がのっていて、サイドの赤カブと赤玉ねぎのピクルスの酸味が味のポイントに。大地の力強さを感じるキノコのクランブルは、穀物や草を食べて育つ牛も、同じく大地の恵みなのだな、と実感させてくれます。

デザートは、松本シェフの出身地、宮城県のミガキイチゴを使ったデザート、Miyagi Strawberry Two Ways。

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鳥居シェフは白バルサミコビネガーとパッションフルーツでイタリア風に、松本シェフはプラリネとフランスのラム酒を使ったババでフランス風にアプローチ。まるでイチゴから出た枝のような盛り付けは、2人で話しているうちに自然に生まれたのだとか。鳥居シェフのイチゴの酸味を後押しするパッションフルーツとバルサミコは、イチゴの甘みを引き立てる組み合わせ、松本シェフは、伝統的にフランスでイチゴと合わせるプラリネや、練乳のコクのある味わいで、イチゴのみずみずしい甘酸っぱさを引き立てます。ババの横に添えてある白いソースが、自家製の練乳。焦がさないようにじっくりと時間をかけて煮詰めた「練乳」は、少しつけただけでたっぷりと使った上質なバニラビーンズの香りが押し寄せる、なんとも贅沢な味わい。

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このデザートに合わせて提供されていたのが、熊本復興支援のコンセプトに合わせて提供されている、熊本ワインの巨峰のしずく。巨峰の果実を氷点下に凍結してから、果実だけを絞って作り上げた甘口のデザートワインです。完熟のぶどうの濃厚な味わいは、酸味のあるパッションフルーツなどと合わせると、口当たりのよい優しい味わいが際立ちます。

鳥居シェフのイタリアンと松本シェフのフレンチ、アプローチは違っても、コースとしての流れ、完成度の高い構成になっていました。

また、今回の収益の一部は、熊本への復興支援金として送られます。

毎月新しいコラボレーションが生まれる$100 Gourmet。来月の開催は7月21日~25日、オーストラリアで2つのハット(星のような格付け)を持つ、Bentley Restaurant & BarのBrent Savageシェフが登場。迎えるのは、オーストラリア人、Andrew Nocenteシェフが率いる、Salted and Hung。 チケットは売り切れることも多いので、興味のある方は早めに購入されることをお勧めします!次回は7月の開催、詳しくは公式ウェブサイトをチェックしてくださいね!

そして、Lewin Terraceでは、ソムリエの小澤洋さんの発案で、毎月満月の日に「Full Moon Party」と銘打って、ビオワインのイベントが行われています。

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オーガニックワインとビオワイン、どうしても一緒に考えられがち。でも、そこには大きな違いがあるのだとか。「オーガニックとは、ぶどうを作るまでのところですが、ビオワインというのはワインづくりまでが含まれているのです。満月の日は、土の中の栄養がワインの木に一番送られる時期と言われていて、ビオワインの造り手はこの時期にブドウを収穫します。そして、新月の日にはエネルギーが下に下がるといわれていて、実際にワインのおりが下がるのです。ですから、フィルターをかける代わりに、おりが下がるこのタイミングで丁寧に上澄みの部分を移し替えるのです」と小澤さん。そんな小澤さんが造り手の思いや物語を聞き、選び抜いたビオワイン10種類が毎回提供されます。(提供されるワインは毎回変わります)

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参加方法は、S$50のチケットを購入する形で、ワインは一杯S$10~15、フードは一口サイズのポンテケージョが4つでS$5~、2人分のチキングリルがS$20とお手頃価格。もちろん、Lewin Terraceのキッチンで作られますから、味は折り紙付きです。

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最もパワーが上がる時期と言われている満月の日、自然に囲まれた屋外席でワインを囲むと、近くの席の人といつの間にか仲良くなったり、人との距離が近づく印象。おいしいワインと料理を、気軽に楽しみたい。そんな時にぴったりですよ!

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営業時間:ランチ 12:00~15:00、ディナー 18:30~23:00 (無休)

住所:21 Lewin Terrace Singapore, Singapore 179290(Coleman Street の消防署とプラナカン博物館の間から入ります)

電話: +65 6333 9905

アクセス:MRTシティーホール駅から徒歩10分ほど

http://100gourmet.sg/

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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