「Labyrinth」シンガポール人の一日をモダンに再現
伝統的なシンガポール料理の形を変えて、モダンなスタイルで提供することで注目を集めているLabyrinth(ラビリンス)。その魅力は、幅広いラインナップで、いろいろな種類を一気に楽しむことがなかなか難しいシンガポール料理を、「シンガポール人の24時間」をテーマにしたコース仕立ての一度の食事で楽しめること。この度、新しいメニューをスタートしたという事でお邪魔してきました。
LG Hanオーナーシェフ手作りの、日記帳のようなシンガポール料理の本が添えられていて、もともとの料理の姿をイメージしたり、比較しながら食べることができます。
シンガポールで定番の飲み物、ライムジュース。それを上品にアレンジして仕上げた、サトウキビとライムのグラニテからスタート。甘過ぎずすっきりとしたグラニテは、爽快感があります。
朝8:00
TINGKAT "radish cake, rojak, nasi lemak"
アミューズもシンガポールらしさあふれるもの。TINGKATと呼ばれる、伝統的なお弁当箱のような、食べ物を運ぶ箱に入っているのが、シンガポールで朝食に食べられている定番の品々。
まずは、帆立貝の旨味の詰まったキャロットケーキ(大根餅)。
カリッとしたスナックのようなロジャックは、表面にピーナッツからめてあり、中のロジャックソースはちゃんとブラチャン(エビ)の風味が効いています。
ココナッツクリームで炊いたご飯、ナシレマを、チークエ(朝食で食べられる餅のようなもの)の形に仕立て、ナシレマに付き物の自家製のサンバルチリを添えて。
HOKKAIDO SCALLOP "bak chor mee"
やはり朝食に食べられることの多い甘酸っぱいスープの麺、バクチョーミーは、サフランに浸したイカの麺、上には、タピオカとイカンビリス(シンガポールで食べられている小魚)の粉を加えてあり、中が半生の刺身のようなクオリティの帆立の貝柱が添えられています。炭水化物が多いシンガポールの伝統メニュー、全部そのまま食べると、すぐお腹がいっぱいになってしまいますが、麺をイカに置き換えることで、旨味とコシが生まれ、ワンランク上の味わいになっています。
これで朝食は終了。続いては、昼食です。
12pm
LARDO "chicken rice ball"
「米も鶏肉もないチキンライスですよ」とHanシェフが持ってきたのが、ウズラの卵ほどの小さな丸いもの。形は、マラッカなどで食べられているご飯をボール状にしたチキンライスの形から。そして、チキンライスの味の根本にあるのは、丁寧に取った鶏肉の出汁。それを強調するため、鶏肉の出汁とその脂でボールを作ったのだとか。チキンライスに欠かせないジンジャーソースとチリソースは、Hanシェフのお祖母さんのレシピから。ゼリーのようにプチンとはじける外側、そして中からは出汁の旨味。上に飾られたネギとキュウリは、チキンライスの付け合わせに欠かせないもの。チキンライスの味のエッセンスだけを取り出した一皿です。
SMOKED BONE MARROW "beef rendang"
まるで枯れ木のようなオブジェ!と思ったら、こちらはスモークしたボーンマローにレンダンソースを混ぜたクリームを、昆布に挟んだ和牛、昆布、そしてポテトのチップにつけて食べるスナック。
和牛はややしっとりとしたチップで、昆布の旨味がたっぷりしみ込んでいます。昆布は海藻ならではの軽い口当たりで、意外にもボーンマローのクリーム感と合いました。ビーフレンダンに欠かせないカフィライムの葉もプラスされています。
HAMACHI "sheng yu & cantonese pork porridge"
シンガポールでは、中華風のお粥に生の魚の刺身「魚生」を合わせて食べるのが定番。それを新しい形で表現したのが、このメニュー。
お粥は実際にそのままお粥を作ってからエスプーマにかけて、滑らかでふわふわした食感に。そして、日本の豚骨ラーメンのスープをイメージしたという味付けに。昆布や鰹節の出汁も隠し味になっています。そして、上には日本から空輸した刺身のハマチとホタテ、そしてウニで作った卵黄が添えられています。見た目は魚生の乗った中華粥ですが、全部を混ぜながら食べると、新しい味わいが生まれます。
3pm
SPICES "OCK curry puff"
シンガポールにどこにでもある大手のカレーパフのお店の頭文字を取ったOCK。カレーパフとは、カレー味のジャガイモや鶏肉、ゆで卵が入った揚げ物ですが、それを、同じ材料を使って再構築、森の中で遊ぶ鶏をイメージしたのだとか。サイドにはコリアンダーのスポンジ、上には鶏肉をムース状にしたものが入った「卵」、その下にはふわふわ、サクサクの軽い食感の衣をまとったコロッケのようなカレーパフが。具は鶏肉とジャガイモ、カレーリーフも添えられていて、まさにシンガポールらしいカレーパフの味が再現されています。
7pm
FOIE GRAS "peking duck"
キャンディーのような見た目が面白い、フォワグラで作った北京ダックは、中がフォワグラのムース、その外側には北京ダックのソースがかけられ、北京ダックの皮が一片さしてあります。一口でいただくと、濃厚なフォワグラのムースの中に入っていたキュウリが鮮烈な食感と香り。フォワグラも鴨、というところからの面白い着想で、ぜいたくな一品に仕上がっています。
SOFT SHELL CRAB "chilli crab"
ソフトシェルクラブを使ったチリクラブは、Labyrinthを代表する定番のメニュー。
からりと揚がったソフトシェルクラブに、チリクラブソースのアイスクリーム、チリクラブに欠かせない揚げパン、そして海ブドウが添えられています。
SEASONAL OYSTER "orh luak"
サラダ仕立ての珍しい品は、コースの後半に入って、口の中をリフレッシュする意味もあるのだとか。
オイスターリーフと呼ばれる、牡蠣のような香りの葉、フレンチオイスターのグリルの上にはスフレオムレツのようなふわふわの卵、そして、その下にはジャガイモのでんぷんで作ったもっちりとしたパンケーキ。伝統的には、アッサムソースと呼ばれるソースが使われていたという事で、そのアッサムソースで酸味をプラスしています。上にはイクラが乗っています。
COD "XO fish noodle soup"
XOブランデーや中華の食材でもあるオイスターソースを加えた滑らかな魚出汁のソース、ブルーテの上には、表面はカリッと、中はしっとりと仕上げられたタラ。臭みもなく、程よい火加減で調理されています。その表面のカリカリ感を強調するのは、トマトで作ったペーパー。クリーム感をプラスする、エバミルクの麺という組み合わせで、シンガポールらしい味わいにアレンジされています。シンガポールで人気のフィッシュヌードルスープ店の中には、魚の出汁のスープにエバミルクを入れている店があり、人気を博しています。その味を思い出しました。
A4 OHMI BEEF "moonlight hor fun"
上に乗ったA4の近江和牛は、半生のとても上質な仕上がりで、醤油とみりんを思わせる、甘辛いホーファンのたれに漬け込んだ卵黄と合わせると、まるでユッケのような印象。そこを、上にかけられた細かく刻んだ中国ソーセージ、蝋腸(ラプチョン)が、中華風の味にしてくれます。また、下のホーフン部分も、本物のホーフンの麺と、キャトルフィッシュ(甲イカ)で作った麺があって、どっちが本物?と食べながら味覚で探すのも楽しいです。実際はホーフンのソースで煮込んだ牛肉を乗せた庶民的な米の麺ですが、とても上質な味わいに仕上がっていました。
10pm, ここでデザート、LYCHEE, CORN, STRAWBERRIES "ice kachang"
シンガポールを代表するハーブの一つ、菖蒲のような葉でバニラのような甘い香りのあるパンダンと、苺のメレンゲを細かく砕いたものに、香り高いライチソルベを合わせています。シンガポールの伝統的なかき氷、アイス・カチャンにつきものの、角切りのグラスジェリーがすっきりとした印象を、エバミルクパウダーが濃厚さをプラスしています。様々な種類があるアイス・カチャンですが、日本と同じように、苺のシロップとコンデンスミルクをかけたものが人気です。
7am MERINGUE "teh tarik"
朝食の定番、カヤトーストのトーストに見えるものは、メレンゲで作ったさっくりした「パン」。間に、シンガポールでよく飲まれている、テタリ(コンデンスミルクを入れた甘い紅茶)味のアイスクリームをはさんであります。アイスクリームをパンにはさんだものは、道端で売っているシンガポール庶民のおやつで、どこかそれと重なるイメージもあります。外見はカヤトーストイメージさせる雰囲気ですが、味はテタリ、というところに、面白さがあります。
そこに、砂糖でできた卵の殻に入った何かが登場。SOFT BOILED EGGS "mango sticky rice"
それを割ると、中から「卵」が登場!
「見た目は斬新に見えるかもしれないけれど、味の基本的な部分は本物の味をそのまま伝えられるように工夫しているよ」とHanシェフ。
卵白はアーモンドのパンナコッタ、卵黄はマンゴーピュレ。醤油の代わりに、黒ゴマのソースをかけていただきます。
前回は上からかけるのはバルサミコでしたが、同じに見えるメニューも、こうして少しずつバージョンアップしているのだとか。
最後の小菓子は、塩気の効いたクッキーの上に、キャビアを乗せたもの。
グラメラカと呼ばれるパームシュガーで優しい甘味をつけた、カヤトーストに使われるカヤジャムをイメージしたムース、その上になんとキャビアを乗せて、塩味でバランスを取る形になっています。
Hanシェフの独創的なアイデアが生きた「シンガポール料理」。時間のない旅行者の方、シンガポールでおしゃれにシンガポール料理を食べたいという方、そして、シンガポール在住で、シンガポール料理の味を知っている方にも、ぜひ試していただきたいレストランです。
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営業時間:ランチ 12:00~14:30(火~金曜、祝日はなし)、
プレ・シアターメニュー 18:00~19:00(木~土曜)
ディナー 18:30~23:00(火~金曜)、18:00~(土・日曜)
バー 18:00~深夜(月~土曜)
住所:Esplanade Mall 8 Raffles Avenue #02-23 Singapore 039802
電話: +65 6223 4098
アクセス:MRTエスプラネード駅から徒歩10分ほど
筆者
シンガポール特派員
仲山今日子
趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。
【記載内容について】
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