Luke新シェフによる新しいメニューが誕生、The Kitchen at Bacchanalia

公開日 : 2017年01月21日
最終更新 :

ミシュラン一ツ星のモダンヨーロピアンレストラン、The Kitchen at Bacchanalia が、オーストラリア・パース出身の29歳、Luke Armstrongヘッドシェフを迎え、新しく生まれ変わりました。

Lukeシェフはパース出身。

ロンドンのミシュラン一ツ星のPied a Terre、同じくロンドンの二つ星The Ledbury、そして、Lukeシェフがメンターと仰ぐ、Sergio Herman オーナーシェフが率いるオランダの三ツ星レストラン、Oud Sluis などでキャリアを重ねたのち、ロンドンのGordon Ramsayが率いるレストランの一つ、Maze のヘッドシェフを経たのち、シンガポールにやって来ました。

Sergioシェフを、「一緒にいるとエネルギーをもらえるような存在」と語るLukeシェフ自身も、パワフルに料理に向き合っています。

「自分が学んできたのはクラッシックなテクニックを使ったコンテンポラリーフレンチ。見た目はもちろんだけれども、一番大切なのは、味。様々な味わいが口の中で花火のように弾ける美味しさで、お客さんに『また来たい』と思ってもらいたい」のだそう。「シンガポールは暑くて湿気が多いこと、そしてヘルシーな料理にするという意味でも、クリームを使わずにヨーグルトを使ったり、日本の出汁や土佐酢などを使っている。」のだとか。中でも興味があるのが、程よい酸味と清々しい香りを与える柑橘類。「暑いシンガポールでは食欲を刺激する酸味があるし、仏手柑や様々な種類のライムがある。マーケットに行ってそういったものを探したりもするよ」とのこと。

12月に、Lukeシェフの初日にお邪魔した際には、「これまで、席数の多いレストランばかりだったので、全てのお客さんに目が届くこのサイズ感、そしてオープンキッチンはとても新鮮。既に20以上のアイデアがある、早く披露したくてたまらないよ」と言っていたLukeシェフ。

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ディナーテイスティングメニューが完全にオリジナルメニューになったというこのタイミングでお邪魔して来ました。

8コースのディナーテイスティングメニュー(S$188)から、オススメの5品をいただきました。

まずは、"Break Bread"、2人で分けるパン。分け合う、食事を共にするという意味が込められています。これは以前から変わらない品。とっても甘い人参のコクを生かしたバター、岩塩を乗せた無塩の発酵バター。

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Hand-Dived Scallop

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まずは、一つ一つ手で獲ったホタテ貝。「網で一気に獲るホタテ貝とは、甘みと繊細さが全く違う。自分の料理は素材の味を生かした料理。素材には妥協したくない」というLukeシェフこだわりの食材。

生のホタテ貝に、醤油と柚子、そして自家製の天ぷらの衣だけを揚げて細かくしたもの。ほんの少しだけカフィライムを効かせて、南国風のアクセントにしています。パン粉くらいの細かさになった軽い食感の天ぷらの衣が、あっさり、だけでない、油の旨みを加えています。

Hamachi

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日本産の新鮮なハマチをタルタル仕立てにした一皿。「ハマチの旬は9月から2月。今の時期ならではの美味しさを味わって欲しい」とLukeシェフ。「サステイナブル(環境への負荷が少ない)」食材にも関心があるということで、このハマチもその一つだとか。

甘酸っぱい大根ときゅうりは、日本の漬物のような感覚。あっさりした印象になりそうなところに、アボカドクリームと、ワサビとはまた違ったスパイス感のあるハラペーニョクリームを添えることで、コクを加えるアクセント。この辺のバランス感覚は、一つ前の皿、ホタテ貝の味の構成と似ています。

日本の出汁を使ったり、甘酢を使う辺りに、Lukeシェフが修業し、メンターともあおぐSergio Hermanシェフが率いるオランダの三つ星、Oud Sluisの影響を感じます。

Monkfish

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一番最初にLukeシェフがBacchanaliaで披露したメニューで、私も初日にいただきました。通常は、アンコウを使っていますが、「今日は思っていたようなクオリティのアンコウが入ってこなかった」という理由で、鯵に変更。調理法のアレンジも少し変えています。全ての食材は自身の舌で確かめ、満足のいかない食材が入ってきたら、送り返して別のものを使う、というLukeシェフ。「メニューに載っているから、という理由だけで、基準以下の食材を提供することなどできない」と話します。アンコウはもっちりとした、白身肉を思わせる食感が特徴だけれども、鯵の魅力は、脂が乗っていて、炭焼きにすると、脂が焦げてとてもいい香りになること。その特徴を生かすために、片面をフライパンで焼いた後に、反対側を炭火で焼いて、香ばしい香りをつけています。その下には、フランス・ブルターニュ産の濃厚な甘みと旨みの牡蠣が一粒(前回はムール貝)。

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さらにその下には、小さな粒状のパスタにカツオの出汁を合わせた付け合わせ、そして最後にサフランヨーグルトのソースをかけています。ミートラディッシュと呼ばれる外側が白く内側がピンク色のラディッシュと、水菜とサワークリームを合わせたソース。水菜とクリームを合わせたものをいただくのは覚えている限りではLukeシェフの料理が初めてでしたが、ほのかなほろ苦さと酸味があり、こんなハーブのような使い方ができるなんて意外!サラダや鍋物といった、水菜の意外な魅力を発見した気分でした。

Grass-fed Tenderloin (+S$30)

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牧草を食べて育った牛肉は、緑の香りに合わせてタイムの香りをまとい、ボーンマローで脂の濃厚さをプラスしています。こんがりと焼き上げたナスと、焼き上げたナスの内側を細かく刻んだものが添えられています。そして、ソースは、マッシュルームとニンニクをソテーしてから乳液状にした、とても手間のかかったもの。ほんのりと醤油を隠し味に入れることで、奥行きのある味わいに仕上げています。そして、西洋の旨みとして欠かせないパルメザンチーズのソースが。とはいえ、軽やかな仕上がりで、重たさのないスープに近いソース。そして、さらに上にはラディッシュとオキザリスの葉と花が、酸味をプラスしています。Lukeシェフは、柑橘類が大好きだということですが、こうして要所要所で様々なタイプの酸味を使うことで、コクがあってもすっきりと食べられる仕上がりになっています。

砂糖と脂肪分を控えめにする分、例えばバターならボルディエを使うなど、良質なものを使うようにしているのだそう。

Chocolate

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「食事はやっぱりチョコレートで締めたいでしょう?だけれども、お腹いっぱいになりすぎないようにしたかった」というデザートは、土台に薄いチョコレートの間にチョコレートムースを挟み、上にはカカオソルベ、コクのあるヘーゼルナッツのプラチネを使った板を飾っています。サイドにはヨーグルトクリーム、ミントのソルベ、すだちとシンガポールのライム、カラマンシーのジェルを添えてすっきりと仕上げています。

日本の出汁の使い方や、甘酢に漬けた大根の「漬物」など、Oud Sluisでよく使われていた和の要素を感じますが、そう言ったイノベーティブな味の構成と、ゴードン・ラムゼイなどで見られる、モダンな中にもクラッシックさがあるフレンチがうまく融合している印象。酸味と油分のコクのバランスの取り方は、個人的にとても好みでした。

まだまだ店で出したいアイデアがたくさんあるんだ、と語るLukeシェフ。クラッシックな土台を軽やかにアレンジした、モダンヨーロピアン料理のお店です。

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■ The Kitchen at Bacchanalia (ザ・キッチン・アット・バカナリア)

営業時間:ランチ 12:00~14:30(火曜~金曜)、ディナー 18:00~22:30(月曜~土曜)、日曜休

住所:39 Hong Kong Street, Singapore 059678

電話: +65 9179 4552

アクセス:MRTクラークキー駅から徒歩2分ほど

筆者

シンガポール特派員

仲山今日子

趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。

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