はし田寿司4周年記念、希少な在来種蕎麦食べ比べ、手打ち蕎麦たがたとのコラボディナー
4月24日で4周年を迎えたはし田寿司シンガポール。それを記念して、様々なイベントが行われていますが、その中でも、注目の蕎麦のコラボレーションディナーにお邪魔したので、ご紹介します。
メニュー表は、アーティストでもある、橋田さんらしいもの。自らのポートレートに書いた「Why Not!」という文字に込められた意味は、自身の原点。シンガポールに出店しないか、という話をもらった際に、橋田さんが答えた言葉なのだそう。初めての自分の店、そして、シンガポールという土地。「他のシェフとアイデアを練ったり、スタッフと泣き笑いして自分のスタイルを作り上げて来た年月は宝物。改めて自らの原点である気持ちを、忘れてはいけないと思った」からなのだとか。
そんな想いのこもったひと時を共に過ごす、日本・静岡からやってきたゲストシェフは、「田形さんの蕎麦は、まるで蕎麦のエネルギーをそのままいただいているような気がする」と橋田さんが惚れ込む、そば職人の田形治さん。もともとサラリーマンをしていましたが、蕎麦好きが高じて、ついには静岡県に自らの蕎麦屋「手打ち蕎麦 たがた」をオープン。美味しい蕎麦を求めた結果、日本に残る数少ない在来品種に行き着き、50以上の産地を回って、在来品種の味を確かめて来たのだとか。その中でも、最も美味しいと感じたのが、静岡在来種、そして万人受けする美味しさを持っていると評価する、大野在来種、それに加えて今回は、個人的に思い入れがあるという、狭山在来種の三種類を持って来たのだそう。
蕎麦の味わい方の説明の中で、田形さんが強調するのは、香りのバランス。「香りには三種類ある。そのまま鼻からかいだ香り、噛んだ時の香り、そして喉を通り過ぎた後の香り。そのバランスが良いものが、美味しいのです」思わず納得。
お料理に合わせて、まずは、橋田さんオススメの日本酒、白菊をいただきました。香りも良く、米の旨味と酸味のバランスも取れていて、丸みのあるお酒です。
最初に一品は、すっきりとした自然な甘みのクリーミーな生湯葉。
その上にはグリーンアスパラのピュレ、イクラ、ホワイトアスパラ。軸の部分はしゃっきりと、穂先の部分は甘く柔らかく仕上げてあります。
続いては、出汁で柔らかく煮た蕎麦の実。
品種は狭山在来種で、小粒で大地の香りがするのが特徴とか。少し粘りがあるのを利用して、あっさりとしたお粥のように仕立てました。上には水菜と、硬めのシラス干し。出汁には、金八商店の出汁を使っています。
そして、大野在来種のチップ。
蕎麦を打った時に、端の部分をとっておいてあげたもの。塩だけですが、固く仕上げてあるので、口の中で空気を含み、噛んだ後に香りが感じられるようになっています。旨味が強い品種なので、こうして油で揚げても、揚げ油に負けません。
たっぷりの出汁に、とても甘いほうれん草としめじ、そして蕎麦がきを揚げたもの。
表面はカリッと、中はねっちりと仕上がっています。
そして、ここで橋田さんのお寿司。蕎麦とのコラボレーションなので、酢飯は少しいつもより小さめです。滑らかなイカは、炒った米麹と米を粉にして線状に置き、中央にほんの少し塩を重ねたもの。ゆずの皮の香りをまとって。
白身の優しい味わいの鯛。酸の穏やかなはし田の酢飯と、穏やかに寄り添います。
次は、脂のボリュームの加わったカンパチ。
さらに、クリームのような旨味のある脂ののった金目鯛。背中の部分だそうですが、独特のコクのある脂を満喫できました。
そして、この日出色だったのが、マグロの赤身の漬け。歯を入れると、まとわりついてくるような、いつまでも噛んでいたくなる食感。噛んでも噛んでもキメの最後にたどりつかない感じ。今回特に美味しかったのでお聞きすると、「最近仕入れ先を変えたので、そのせいかな?」なんて橋田さんは言っていましたが、一番実は手をかけているのが漬けなんだとか。こちらもほのかに柚子の香りを効かせて。
炙ったカマスは、皮目の焦げた香ばしさと、ふんわりとした身の対比が楽しめます。
そして、こちらも炙りの、のどぐろは、さらに脂が乗っていて、滑らかなテクスチャー。味のボリューム感がアップします。
そして、蕎麦は冷製の静岡在来の蕎麦。田形さんしか手に入れられないという非常に貴重な品種で、もっちり感はそれまでではないのですがナッツのような香りが強く、後味がとても甘いのです。まずは、そのまま。そして、ほんの少しの天然塩をつけてと、蕎麦つゆに3分の1だけつけて、と言われます。何もつけずにそのまま食べて、十分に楽しめるお蕎麦でした。
そして、今度は福井の大野在来種。出汁とアオサ、そして静岡産の海苔をかけた冷製蕎麦。
静岡産の海苔がとても旨味が強くてびっくり。それでも、大野在来種には、小豆のような香りと旨味があるので、この海苔の旨味に負けていませんでした。
そして、今度は温製の大野在来種。
温かい蕎麦にすることで、ナッツのような印象が強調され、加熱しても、もちもちとした食感が保たれていました。出汁は、「温度で華が開くような印象があるので、3種類の醤油をブレンドして、醤油の印象があまり強すぎないように、薄口醤油を使い、蕎麦本来の持ち味が出るように工夫しました」と田形さん。
そして、ここで、甘い海老とアスパラガスの天ぷら。
まるで天ぷら蕎麦のような流れ。
そして、ここで再度寿司の流れに。
海老つながりで、甘く濃厚な旨味の立派なボタンエビが。
そして、ウニイクラの小さな丼は、いつもに増して、ウニもイクラがたっぷり。
「ウニといくらで酢飯をいただく」という贅沢。
そして、はし田名物の大トロは、脂のバランスを取りながら薄く削いで重ね、羽衣のようにふんわりと酢飯をカバーする一品。
ちょっと濃いめのみりんと醤油が塗られていて、人肌に近い温度に調整された大トロは、口に運ぶとクリームのようにとろけます。
そして、先ほどの旨味の強い静岡産の海苔を使った巻物は、ネギトロ。旨味に負けない、しっかりとした具材を選んで、印象に残る締めくくりに。
デザートは、柚子餡入りのよもぎの麩まんじゅうと、橋田さんが作った、桜のマカロン。
間に桜の葉をちりばめた白あんを挟んであり、生地自体も少し上新粉が入っている、和の味わいでした。
この後は、3夜連続のイベント、28日(金)にはクリュッグペアリングディナー(S$600)、29日(土)には、スペイン料理のOla Cocina del Mar のDaniel Chavezシェフ、そして30日(日)には、モダンシンガポール料理のWild Rocket のWillin Lowシェフとのコラボレーション(各S$450)と続きます。
寿司という形の決まったものでありながら、普段から和食だけに捉われない、起伏のあるコース作りをしているだけに、異なった種類の料理とのコラボレーションもスムーズに行えそう。
4年目を迎え、新しい挑戦を続ける橋田さん、こういった新しい料理とのコラボレーションを経て、その進化を形がどうなっていくのか、とても楽しみです。
<DATA>
■Hashida Sushi Singapore(はし田寿司シンガポール)
営業時間:ランチ 12:00~15:00、ディナー 19:00~22:00(月曜休み)
住所:333A Orchard Road, #04-16 Mandarin Gallery, Singapore 238897
電話:+65 6733 2114
アクセス:MRTサマセット駅徒歩5分
筆者
シンガポール特派員
仲山今日子
趣味は海外秘境旅行、現在約50カ国更新中。
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