
真っ黒な帽子。
真っ黒なシャツ。
真っ黒なネクタイ。
真っ黒なズボン。
そして手に持つワイヤーブラシ。
ブルガリアを含め東欧ではこんな格好をした人を見かけることが稀にあります。
奇妙ないでたちをした彼の正体は、街のえんとつそうじ屋さん。
彼にさわると幸運になれるといわれています。

彼が街を歩くと子供からお年寄りまで、みんなが彼に挨拶をしてそっと彼に触れていきます。

公園で子供たちに芸を見せていたピエロさんも、えんとつそうじ屋さんに触りたがります。

インフラ整備がまだ不十分なブルガリアでは、
地方に行けば未だに煙突は現役で使われているところが多いです。
普通の民家はもちろん、アパートなどの集合住宅にも煙突はたくさんついています。
田舎に住むブルガリアの人々にとって、真冬の寒さをしのぐのはほとんどが薪ストーブ。
薪で暖をとるとススや灰が煙突につまるので定期的に掃除しなければいけません。

その掃除をするのがその道のプロ、えんとつそうじ屋さん。
最近では化学薬品や最先端の技術を使ったハウスクリーナー会社が増えている中、
自分の腕と目で仕事をする職人気質なえんとつそうじ屋さんはほぼ絶滅しています。
写真の彼、フリスト・フリストフ64歳。
通称、バイ・イッツォおじさんはこの道48年の大ベテラン。
同じく煙突掃除を職業としていた父親から受け継いだ仕事を頑なに守り続けています。

煙突掃除の仕事は汚くて危険で収入の低い仕事。
でもバイ・イッツォは、誰もが嫌がるこの汚い仕事に誇りを感じています。
彼は言います。
「掃除をしたその家の火の安全、暖かさ、快適さは保たれるから、みんな喜んでくれる。
報酬が少なくたって、汚くなったって別にいいじゃないか。」
実際に作業を終えたバイ・イッツォが汗だく、さらにはススまみれで町を歩くと
町の人々は満面の笑顔で彼に歩み寄ってきてお礼の言葉をかけてくれる。
バイ・イッツォも満足げな笑みを浮かべる。

しかし新しい技術を使うハウスクリーナー会社や機械などにドンドン仕事は奪われ、
現在では昔なじみのお客さんも数える程度まで減ってしまい収入はかなり少ない。
最近になって彼は40年以上吸っていたタバコをやめた。
仕事が終わった後、屋根の上でおもむろにポケットから1本のタバコを取り出し
鼻腔にあて匂いを嗅いで、そのタバコをまた胸にしまう。
その仕草がなんともいえず、かっこいいなぁと思ってしまいました。

この絵は街に住む高校生が彼を描いたもの。
町中の人々に慕われているのが分かります。

僕自身も彼と話していて、彼の人生観にとても好感を覚え彼が大好きになりました。
たぶんブルガリア人の中で上位5以内に入るくらい好き。
年とったら煙突掃除屋さんになろうかなぁ・・・。
そんな煙突掃除屋さんバイ・イッツォを取り上げた番組、
GLOBAL VISION。オンラインで視聴可能、期間限定なのでお見逃し無く!