【特集】ラグビーワールドカップ2003 激闘の末、ワラビーズ敗れる

公開日 : 2003年11月23日
最終更新 :

準決勝が行われた先週11月15日から、決勝までの1週間は、イングランドの「勝つための退屈なラグビー」への批判や罵倒、そしてそれに対する少なからぬ反論がオーストラリアのメディアをにぎわせた。きっかけは、イングランドが準々決勝、準決勝であげた合計52点のうち、47点をジョニー・ウィルキンソン1人の「足」で稼ぎ出したこと。「展開ラグビー」を期待した人々は、その内容に大きな失望感を抱いたのだ。さらに、「勝つために給料をもらっているんだ。その気になれば、うんと退屈なラグビーをやることだってできる」というイングランドのウッドワード監督の挑戦的な発言も、イングランド批判に火をつけた。オーストラリアでスポーツ、中でも特にラグビーが人気なのは、自慢の「マイト精神」と無関係ではないと思う。彼らが好きなラグビーは、スーパースターが大活躍する展開とは対極のところにある。準決勝でニュージーランドを破って意気揚々のオージーたちは、お得意の辛辣なジョークでイギリス人を槍玉にあげた。イングランド・チームがベースにしていたマンリーのホテルの周りを取り巻いたのは、"Boring! Boring! Boring"というシュプレヒコール。決戦2日前には、「ワラビーズの選手たちにまかせておかずに、自分でジョニー・ウイルキンソンをやっつけちまおう!」と読者を煽る"Stop Jonny voodoo doll"が新聞を飾った。そういうちょっぴり大人気ない行為に対する反論はもちろんあり、その議論もカンカンガクガクで結構楽しめたのだが、結局のところ、オージーにとって、「ポム(=イギリス人)はからかいの対象になるくらい近い存在」ということになるのだろうと思う。で、昨夜の決勝戦。試合の内容は、まるで、ドラマのような展開だった。開始6分でトゥキリが決めた鮮やかな先制トライに安心したのも束の間、イングランド・ペースで試合は進み、前半は5対14で折り返し。後半はワラビーズが反則なしの固い守りで追加点を許さず、逆にペナルティ・ゴールで得点差を縮める。残り時間1分を切った時点で、フラットリーが同点を狙うキック・ポジションに立つ。このとき、ブルブルと体が震えたのは、降りしきる雨のせいだったのか、場内の緊張感のせいだったのか......。ボールがクロスバーを超えたことを示す旗をタッチジャッジがあげて、14対14となったときには、80分を過ぎていた。かくして、ワラビーズ・ファンが狂喜乱舞する中、今大会初の延長に突入!延長戦で先に得点したのはイングランド。ワラビーズの久々の反則にきっちりとペナルティ・ゴールを決めたのはもちろんウィルキンソンだ。3点差を追うワラビーズは、またもやフラットリーがペナルティ・ゴールを決めて、同点に追いつき、希望をつなぐ。再延長か、と誰もが思いはじめた残り時間1分をきったところで、パスがウィルキンソンに渡った。悲鳴が響き渡る中、ボールは無情にもゴールポストを通過し、間もなく試合は終了した。イングランド・ファンが陣取る会場の一部は大いに盛り上がっていたが、ノーサイドの笛がなった一瞬、会場を包んだのは静けさだったような気がする。呆然......。結果は17対20。イングランドは自国で開催された第2回大会(1991年)の決勝でワラビーズに敗れた雪辱を果たして初の優勝を飾り、オーストラリアはあと一歩のところで大会史上初の二連覇を逃した。第3回大会以降は、「決勝では先に得点したほうが負ける」というジンクスがあるらしい。こうして、オーストラリアのラグビー・ファンがまるで友達のように「ビル」と呼ぶ優勝杯「ウェブ・エリス・カップ」は、「退屈」とはほど遠いエキサイティングな激闘を経て、昨夜初めて北半球勢の手に渡り、約6週間に渡ってオーストラリアを沸かせてきたラグビーの祭典は、幕を下ろした。

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(c) Tokiko Minamida

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