No.43フランス最北端『シュティの地へようこそ(Bienvenue chez les Ch'tis)』!

公開日 : 2014年11月27日
最終更新 :
筆者 : 冠 ゆき

 ラテンの血を引いているせいもあるのか、フランス人は太陽が大好きです。夏のヴァカンスともなると、国民がみな南下するため、南行きの高速道路や鉄道は、毎年大混雑となります。

 そんなフランスでの北の端の存在感は、控え目に言っても、"薄目"。ノール(北)地方出身の人でさえ、老後は温暖な南で過ごしたいと計画を練る人は少なくありません。

 かと言って、評判が悪いわけではなく、ノールの人は、人情に厚いというのは、昔からの定説でした。今から20年前、当時パリ近郊にいた私のノール行きが決まった時も、「気候は今一つだろうけど、人は親切だよ」という言葉を餞にくれた人が何人もいました。

「ノールに来たものは、二度泣くんだよ。

一度目は、ノールに着いたとき。

二度目は、ノールを離れるとき。」

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 そんなことわざも、そのころ初めて耳にしたように思います。

 No.8 でも触れた『シュティの地へようこそ(Bienvenue chez les Ch'tis)』(2008年公開)は、そんなノールの人情の厚さを上手に描いた映画です。シュティというのは、ノール地方出身の人を指す言葉です。この映画の中でも上のことわざが引用されています。

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 ローカルな風土、しかもフランスではマイナーな舞台であるにも拘わらず、この映画が全国的に大ヒットしたのも頷ける内容でした。

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映画の舞台となった町ベルグ

 一年前、縁あってまたこの土地へ舞い戻ってきましたが、引越し荷物を家に運び入れてもらっていたときの驚きは忘れられません。

 まずは、通りかかった近隣の住人が、みな寄ってきて、挨拶をしてくれたこと。15年で、十箇所、住居を変わりましたが、こんな風に「ようこそ、ようこそ」と声を掛けられたのは初めてでした。

 そうして、極めつけは、公道の掃除やごみ収集をする軽トラックが通りかかった時。引越し会社のトラックの横を過ぎる際、作業員が皆一斉にこちらを向いて「シュティの土地へようこそ!Bienvenue chez les Ch'tis!」と箒を振り回しながら叫んだのです。

 あっけにとられた後、「ありがとう!Merci!」と叫び、続いて大笑いになりました。

 ああ、ここが次の我が家になるんだなぁと、改めて実感した瞬間でもあります。

 さて、いつかノールを離れるときは、ことわざ通りに泣いてしまうでしょうか。

(11月お題"あったかエピソード")

筆者

フランス特派員

冠 ゆき

1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。

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