No.235フランス北部にしかない伝統スポーツって?

公開日 : 2015年09月22日
最終更新 :
筆者 : 冠 ゆき

フランスの北、トゥルコアンには、複数のBourloire(ブルロワール)と呼ばれる場所が存在します。

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ブルロワール

ブルロワール?と聞いて首をかしげるのは、外国人ばかりではありません。フランス人だって知らない名前です。実際、6万語を解説するフランスの代表的辞典『Le Petit Robert(ル・プティ・ロベール)』にも載っていない単語なのです。

実は、「ブルロワール」は、「Bourle(ブルル)」をする場所のこと。ブルルというのは、ここノール県に残る古いスポーツです。ゲームといった方が近いかもしれません。

いつ頃発祥なのかはわかりませんが、古くは1382年の8月4日に、公道でブルルをすることを禁じる文書が残っていますから、それより前から庶民の間に広まっていたものと考えられます。

ブルルというのは、このゲームの名前ですが、使うのもブルル。

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クルミの木で作ったブルル

形は丸いチーズに似ています。トゥルコアンでは、主にクルミの木の芯を使ってつくったブルルを使います。これを細長い形のブルロワールで転がして、反対側に描かれた円の中心「étaque(エタック)」と呼ばれる場所に一番近いところにブルルを転がしたものが勝ちとなります。

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白い円の中心にエタックがあります

写真では良く見えませんが、転がす力が強すぎると、行き過ぎて、円の向こうの溝に落ちるようになっています。

なんとなく、フランスの南部発祥のペタンクとボーリングを混ぜたような感じですね。

簡単そうに見えますが、実はブルロワールの地面は、平面ではなく、微妙に湾曲していて、それぞれ特徴があります。また、ブルル自体も左右対称な重さではなく、転がす面も均等には作ってありません。ですから、ボーリングのボールのようには、まっすぐ進まず、ふらふらと曲がりくねりながら進むようになっています。

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まっすぐとは進まないブルル

競技は通常4人ずつのチームで対戦し、多くの場合8回戦まで行って、点数を数えて結果を出します。

自分の番が終わったら横で一杯やりながら、他の人のブルルを眺めたりします。上に、「スポーツというよりゲーム」と書いたのはそのためです。

このブルル、面白いことに、ノール県では多く残っているのに、すぐ南のパドカレー県では一か所も見つけられていないそうです。

ところが、南にちょっと間をおいて、フランス西部、Angers(アンジェ)のあたりにも残っているのだそうです。不思議な話です。

また、このあたりと長く歴史をともにしてきたベルギーにももちろん、ブルルの伝統が残っています。

フランス・ノールのブルル協会本部は、トゥルコアンにあります。

そこで見せてもらったブルル。普段使うものの他、非常に重いガイアック(日本語名ユソウボク)と呼ばれる木で作った大きめのブルルもありました。足の上に落とすと大変なことになると会長さんは笑っていましたが、いや、まず持ち上げられないでしょう、という重さ。

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ガイアックのブルルの重いのなんの...

地方によっては、もっぱらこのガイアックのブルルを使うようです。

昔は、カフェの裏や工場の空き地に設置されていたブルロワール。その後屋根もつけられて、屋内になりました。一日の仕事のあとの大人の気晴らしだったのでしょう。

ノール県では今も31のブルル・クラブが活動しています。

No.234に書いたように、トゥルコアンでは、来週週末もヨーロッパ遺産の日のイヴェントが続いています。ブルロワールも5か所で一般見学可能、お試しもさせてもらえます。

1) コンコルド・ブルロワール(住所:2 rue de Seclin, Tourcoing)9/26(土)14時~19時と、9/27(日)9時~13時。

2) エクスポジシオン・ブルロワール(住所:27 rue de Strasbourg, Tourcoing)9/27(日)9時~13時

3) ノートルダム・ド・コンソラシオン・ブルロワール(住所:105 rue du Pont de Neuville, Tourcoing)9/26(土)14時~19時と、9/27(日)9時~13時。

4) ノートルダム・ド・ルルド・ブルロワール(住所:119 rue Ingres, Tourcoing)9/26(土)15時~19時

5) 聖クリストフ・ブルロワール(住所:34 rue du Moulin Fagot, Tourcoing)9/26(土)14時~19時、9/27(日)9時~13時

フランス北部にしかないアクティヴィティ、この機会にぜひ親しんでみてください。

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いろんな地方のいろんなブルル

(冠ゆき)

(9月お題"アクティビティ")

筆者

フランス特派員

冠 ゆき

1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。

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