No.324 今夏のフランス北部、お薦め展覧会その二

公開日 : 2016年07月17日
最終更新 :
筆者 : 冠 ゆき

フランスでは、6月10日から7月10日は、サッカーEuro2016の話題で持ちきりでした。2015年からテロ事件が続発している中の開催とあり、警備を強化し、一ヶ月無事に乗り切ってほっとしたのもつかの間、みなさんご存知の通り7月14日の革命記念日にニースで再びひどい事件が起きました。

現在フランスは三日間(7/16-18)の喪に服しています。

この事件を受けて、フランス各地では、予定されていた行事が中止されるところも出ていますが、決行するところも少なくなく、その場合は開会前に黙祷を捧げています。そんな中、南部のアヴィニヨン祭では、黙祷の代わりに「生きる力」を象徴する「拍手」を捧げました。

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さて、今日は前回に続いて、今夏フランス北部でお薦めの展覧会の紹介です。

今日は、ル・カトー・カンブレジ(Le Cateau Cambrésis)のマティス美術館で開催中のヴァンサン・バレ(Vincent Barré)展についてです。

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マティス美術館と中庭に立つバレ氏の彫像二点

開催が始まった頃こちら「頭が凝り固まってきたら、現代アートでブレイクスルー」 にも書きましたが、会期は2016年9月18日まで。

ル・カトー・カンブレジは、小さな町ながら、カンブレ大司教の邸宅や僧院のビール醸造所など、歴史ある建築物も残り、なかなか趣のあるところです。そのあたりは、こちらの記事「No.253マティスの生まれた町ル・カトー・カンブレジで見るマティスの版画展」 や、「マティスの生まれたフランス北部小さな町の大きな夢」 、「フランスの北の端と南の端に美術館を持つマティスの魅力」に書いたことがあるので、興味のある方はご一読ください。

その名の通り、常設展にはマティスの作品が多く並ぶマティス美術館ですが、年に2度開く特設展では、マティスにゆかりのあるテーマやアーティストを取り上げています。

今回の主役は、建築から彫刻、また映像撮影へと移行してきたヴァンサン・バレ氏の彫刻とデッサン。元建築家だけあって、展示法や間取りなどもほぼバレ氏がデザインしたそうで、非常に心落ち着く空間となっていました。

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ヴァンサン・バレ展より

詳しい感想などは、上述の記事に書いたので、読んでいただけたらと思いますが、スペースの関係上、書けなかったことで、ひとつ印象的だったのが、Ex-voto(エックス・ヴォト)のシリーズです。

Ex-votoというのは、言ってみれば「祈願」または「祈願達成の謝意」をあらわしたもので、ヨーロッパの教会であれば、石碑などの形で置かれているのをよく目にします。

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ヴァンサン・バレ氏

バレ氏自身の案内で廻ったのですが、非常に謙虚な人物で、ひとつひとつ丁寧に説明してくれました。このEx-votoについては、「例えば、手が痛い時、その手のことしか考えられなくなります。そうすると、手のことばかり考えて、自分が「手」になってしまう」と語っていました。そんなとき、手(の彫刻)を作ることで、手のことだけ考え、それに神経を集中し、痛みを彫像に込め、それによって自分が癒される。それがもともと原始からの「祈願」なのではないかという話でした。

そう聞いてEx-votoの彫像群の前に立つと、気のせいでしょうか、祈りの立ち込める気配を感じるような思いがしました。

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バレ氏によるEx-voto彫像群

物騒な事件の続く今こそ、訪れたくなる静かな空間を味わえる展覧会です。

なお、ル・カトー・カンブレジまで行ったらぜひ寄りたいのが、元僧院ビール醸造所の経営するレストラン。「No.163フランス北部ル・カトー・カンブレジ元僧院のビール:VIVAT(ヴィヴァ)」に書きましたが、ぜひこちらで美味しいビールと郷土料理を味わっていらしてください。

ル・カトー・カンブレジまでの行き方:

パリのノール駅から、Le Cateau Cambrésis またはBusigny行き。Busignyからはタクシーで約15分。便数が少ないので、前もって調べることをお勧めします。

また、パリとモーブージュ(Maubeuge)を結ぶ路線も、土日祝日はLe Cateau Cambrésis に停まります。こちらも便数が少ないので、前もってお調べください。

(冠ゆき)

フランス在住者、旅行者の役に立ちそうな情報は、twitterでも流しています。よろしければ、そちらもご覧ください。

筆者

フランス特派員

冠 ゆき

1994年より海外生活。これでに訪れた国は約40ヵ国。フランスと世界のあれこれを切り取り日本に紹介しています。

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