11月のお題「あったかエピソード」 そもそもなぜチロルに?

公開日 : 2014年11月20日
最終更新 :
筆者 : Obi

ゼアブス!

特派員に課される「今月のお題」、11月はあったかエピソードとのことで、私が全く興味も無く好きでもなかったチロルをなぜ好きになったかというお話をしたいと思います。

まず私がチロルを知り、来ることになったきっかけは当時付き合っていた主人が住んでいた町だったからで、初めて来た時は旅行気分もあり当然楽しい事ばかりで将来はここに住めたらいいなと軽く考えていました。

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その軽い気持ちのままここならやっていけそうといざ約半年の長期滞在に挑んだ年、この最初に長期滞在をした年はオーストリアに住む上で私にとっては一番辛い時期でした。

異国で暮らすからにはそれなりの覚悟はしていたものの、慣れないドイツ語、異文化、価値観の違いからぎくしゃくしていた主人との関係、時には日本人ということをからかわれたりもして生活する中でだんだんとストレスが溜まりオーストリアにも嫌気が差していて今回の滞在が終わったらもう来るのはやめよう、住もうとするからこんなに苦労するのであってただの旅行だったらここまで嫌な思いも苦労もしないと思っていました。

住むために仕事を探すのにも私は日本では何年か働いていたとはいえ、持っている資格も社会人経験もオーストリアでは特に役に立たないものばかりでドイツ語もまともに話せない状態。履歴書を送るも何度も「初級レベルのドイツ語じゃ話にならない。英語だけ話せても無駄」、「○○ならあなたじゃなくても誰にだって出来る仕事。ここに住みたいなら特別な技術でも身につけてまた来なさい」、「日本ではあなたの資格は使えたかもしれないけどここでは意味がない」などと言われこれまで築き上げてきた全てを否定されたような気がして、正直いって住もうと決意してからの2年間はオーストリアに関しては良い思い出がありません。

そんな状況が続いていた時に少し気持ちに変化を与えてくれたのが一番初めに通った地元の語学学校の先生がコースの最後に言ってくれた「今は辛いと思うけど1年か2年頑張れば楽になる。あなたがチロルをこのまま好きでいてくれて早く住めますように」という言葉。この言葉で単純ですが少なくともあと1年はとにかく勉強してこの国にも慣れようと前向きに考えることが出来ました。この先生は主人の小学校の頃の先生だったこともあって今でも会うと気に掛けてくれます。

次に気持ちを切り替えるきっかけになったのが書類に使うための写真撮影をしに行ったお店で働いていたお兄さん。この時私は数日後に日本に帰国しなければならず、ちょうどまたオーストリアに戻ってくるか否かと考えていた時でした。お兄さんは私がオーストリアに住むために仕事を探したり語学学校に通っていると知ると、「チロルには日本人は少ないし何をするにも君はとても大変だと思う。でもまた戻ってくるだろ?オーストリアは移住するには大変な国だけど君は絶対ここに住めるよ!だから早く帰っておいで」と言ってくれ思わず泣きそうになるほどこのお兄さんの言葉には救われました。

そして何より私がチロルを好きになり滞在中に支えとなってくれたのが主人の家族や近所の方々。特にお義母さんは私が最も気持ちに余裕が無かった時に「日本と違って大変だと思うけどオーストリアやチロルを嫌いにならないで欲しい」と帰る時は毎回泣いて見送ってくれました。また、ご両親との友人でもあり近所に住んでいるご家族は早くオーストリアに馴染めるようにとオーストリア料理の本をくれたり、イベント毎に家を訪れてきて気を遣ってくれ良いお付き合いを続けています。

その時に頂いたKnödelの本は今でもよく使っています。

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以前ブログに書いた結婚式の時に玄関に飾り付けをしてくれたり、Nordketteの食事をプレゼントしてくれたのもこのご近所さんです。

ここで挙げたエピソードの他にもチロルで暮らしていく中で嫌な事も多く体験してきましたが、それと同時にたくさんの人達に助けられてきました。移住してからは「オーストリアへようこそ!君もこれで僕達の仲間だよ!」という言葉も頂き今ではチロルを知り、この町に住んで良かったと感じています。

数年前は元々人見知りだったこともあり、どこに行くにも主人がいなければ何も出来ず、人と話すのも嫌で仕方がなかったのに今ではお店やバスなどの列ではオーストリア人に負けじと割って入り(※日本のようにきちんと並ぶ人は少ないので待っていたらどんどん抜かされます・笑)、理不尽な目にあったらオーストリア人と言い合いをし(※私のドイツ語では相手に上手く伝わってはいないと思いますが・笑)、1人であちこち出歩いたり、とにかく目的を持って自分から行動するようになり、こうしてみると当たり前のことばかりですがオーストリアで過ごしていくうちに良くも悪くも自分に変化がありました。後に分かったことですが、主人はチロルで初めて長期滞在をしていた頃の私がいつまでも彼に依存して与えられるのを待つばかりだったところにもやもやしていたそうで、私が自分の甘えに気が付くまで主人との関係も最悪でした。

友人の中にはオーストリアに住んでこの国を知るうちにオーストリアを嫌いになってしまった人もいて、彼女はよく「あなたもしばらくしたらオーストリアやオーストリア人の汚いところしか見えなくなる」と話しています。しかし私の場合は初めが最悪のスタートだったからか、日を追うごとに「オーストリアってそこまで悪くないじゃん!」という気持ちの方が強くなっています。友人の言うようにこれから先その気持ちにも変化が出てくるかもしれません。ただ人懐こくて明るいチロルの人達やオーストリアをこの先も嫌いになることはないと思います。

...そう言いつつも友人達と会って話す内容はオーストリアの愚痴が大半なのですが...笑

それでも彼らの多くは「色々あるけど町もきれいで人も優しいしチロルは住むには良い場所だよね」とやはり心から嫌いにはなれない様子。

チロルは他の都市からしたら地味で田舎ではありますが、私のように眼前に広がる自然、暮らしている人達の素朴さや温かさに触れてこの場所を好きになってくれる方が増えたら嬉しいです。オーストリアへ来る機会がありましたら是非チロルにも足を運んでみてくださいね!

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(11月お題"あったかエピソード")

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