澄んだ眼で見続けた素顔のラオス

公開日 : 2013年11月07日
最終更新 :
サバイディーラオスの本.JPG

ラオスで暮らした人が本を出しました。ラオスのことが分かりやすく書かれているので、ご紹介します。

  著者の小澤賢二さんは1966年大分市生まれ。東京での学生生活ののち郷里に戻って地元企業に就職。仕事のかたわら市民ランナーとして活躍し、日本選手権50km競歩で9位に付けたほどのアスリートです。JICA国際協力機構ボランティアの陸上競技の指導者としてラオスを訪れたのは著者が44歳になったばかりのときでした。

本書は2011年12月から1年間にわたって西日本新聞の月曜日付朝刊に連載されたおよそ50編のコラム「サバイディー九州」をまとめたものです。B6版でしかも全部で114ページだからあっという間に読み切れそうな小編です。本に巻かれている帯の目次に少しくこころを動かされました。

「ラオスってこんな国!」 ○国民が最も熱狂するボートレースって? ○仏教寺院と西欧建築が融合する世界遺産の都市・ルアンパバーン ○雨乞いに打ち上げるのは手製のロケット ○生まれたときのあだ名がずっと続く? ○植民地時代の名残の意外な食べ物 ○我慢、我慢の乗り合いバス ○初めての理髪店で値切る ○ラオスの不発弾

○象の保護を呼び掛ける祭り ○麺類が大好きなラオス人 ○ラオスのミクロ経済事情

 どのテーマも気になりました。ゾウのイラストに吹き出しのタイトルがついた小さな本の表紙を開いて、読み始めて小一時間。メコン川のほとりのカフェで読み終わり、ソーダ水を飲みほしたとき、心地よいそよ風が最後のページを揺らして流れました。この小編が与えてくれた爽やかな読了感はどこから来たのだろうと考えました。

 指導相手である陸上競技選手たちへの眼、ラオスの風景を観察する眼、食べ物への好奇心、習慣や行事に寄せる興味など、著者の感受性の豊かさに、そしてそれを語るきちんとした日本語に驚きました。

  不安いっぱいで到着した著者は、その暑さや言葉の壁に苦闘しながらも、ラオスのアスリートたちの指導に汗を流します。やがてラオスに「居心地の良さを感じるようになり」、「帰国の際は後ろ髪を引かれる思い」になっていきます。その思いは高じ、帰国後にラオスから選手たちを日本に呼び寄せるほどの熱の入れようとなりました。

 本書ではそうしたラオスへの接近のストーリーが特別な秩序もなく、それゆえに押しつけがましさもなく展開して行きます。だからでしょう、その気ままさが読者をゆるやかな気分に導いてくれます。読む者に心地よさを、そしてちょっぴり涙も与えてくれます。

巻末に突然の訃報告が載せられています。

本書を編み上げた直後、印刷製本された本書を手にすることなく、享年46歳にして著者は急逝しました。

「サバイディー ラオス!」 小澤賢二著 西日本新聞社 2013年4月刊 1,000円

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